2024年03月19日

パスワード

購読会員記事

2020年夏 中元特集 第1回ネット販売、コロナ禍で利用に拍車

外出自粛中も豊かな生活を――。百貨店業界の各社は今年の中元商戦で、新型コロナウイルスへの感染を防ぐため、外出を避けて自宅で過ごす「巣ごもり」を続ける人々に向け、その時間を豊かに、快適にする食品や衛生用品などを拡充した。インターネット通販の品揃えや特典、サービス、機能も強化。コロナ禍で利用者の増加に拍車がかかったネット通販の商機を最大化する。店舗のギフトセンターでは、入口にアルコール消毒液を置いたり、客と販売員の間にビニールシートを張ったり、客と客の間に仕切りを設けたり、衛生面への配慮を徹底。安心して買い物を楽しめる環境を提供する。新型コロナウイルスの影響で、中元商戦も例年と異なる様相を呈するが、安全・安心を追求する百貨店の姿勢は変わらない。

 

コロナ禍受け「巣ごもり」に焦点

百貨店業界の各社は近年、中元・歳暮商戦に向けた品揃えで「上質」や「特別」、「限定」などの切り口を深耕してきた。中元や歳暮に限らず、贈答市場はパーソナル化が進み、親族や友人、あるいは自分に、付加価値が高いモノを贈りたいというニーズが多いからだ。老舗や名店、生産者、学生らとの協業も活発化させ、品揃えの独自性を競ってきた。

しかし、今年は新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、各社は中元商戦への〝布陣〟を変更。中元・歳暮商戦で展開する商品は準備に半年~1年を要するため、その大幅な入れ替えは不可能だが、打ち出し方を再考して「巣ごもり」に焦点を当てた。

例えば、そごう・西武は「すごもり応援」をテーマに設定。自宅で全国の美味が楽しめる「イエナカ旅気分」、保存が可能で美味しい「とっておきストック」、電子レンジで温めるだけで食べられる「かんたんスグごはん」、ハンドソープなど「毎日のキレイ用品」を提案する。

 

ネットへの誘導、利便性を強化

各社は巣ごもりの〝受け皿〟も整備する。ネット通販だ。京王百貨店はネット通販限定として「おうちカフェ アイスドリンク特集」、「防災備蓄品特集」を実施。防災備蓄品は5月20日~31日の売上げが前年の約1.5倍と好調だ。

大丸松坂屋百貨店は催事の中止などで発生するフードロスを抑制するため、ネット通販限定で「全国各地のおいしいものを食べて応援!がんばる日本の美味特集」を5月19日~8月7日に掲載する。ネット通販での中元の売上げは、5月末時点で前年の約2倍と盛況だ。

近鉄百貨店はネット通販の特典や機能を充実させた。特典では、約750点を送料無料(5月8日~6月18日、1回の会計で1万円以上、6月下旬の配達)にするとともに、3000円以上の購入で次回のネット通販でのショッピングに使える300円分のクーポンを配布。新規・既存を問わず、ネット通販の会員には500円のクーポンを渡した。5000円以上の購入で利用できる。

機能では、アドレス帳への登録などの操作を学べるマニュアルを作成したほか、「お買い物を続けますか?」、「はい/いいえ」など2択で買い物を進められる「ポップアップ表示」を導入。デジタルカタログから商品を直接購入できる仕組みも採り入れた。

 

店頭も安全確保の体制を準備

店舗のギフトセンターも、コロナ対策に余念がない。各社は会場やカウンターなどの距離を広げ、試飲や試食、周辺での催事を中止。販売員はマスクを身に付け、カウンターには飛沫を防止するアクリル製の板も立てた。三越伊勢丹、そごう・西武は、整理券のQRコードをスマートフォンなどで読み込むと自分の順番が分かるシステムを採用。「3密」に陥りやすい会場の外で待てるようにした。

特殊な状況下で商戦は見通しづらいが、各社はギフトセンターとネット通販の両方で〝コロナ対策〟を講じ、前年実績の確保を目指す。

 


メリーチョコレートカムパニー

焼菓子で中元商戦に攻勢


にんべん にんべん

320年で培っただしの魅力を全面に


「巣ごもり」に照準、ネット通販を強化

百貨店業界の各社が、今年の中元商戦で力を入れるのがインターネット通販だ。コロナ禍で増加する、いわゆる「巣ごもり消費」に着目。ネット通販の品揃えや特典、サービス、機能などを拡充するとともに、「全国各地のおいしいものを食べて応援!がんばる日本の美味特集」(大丸松坂屋百貨店)、「すごもり応援」(そごう・西武)、「#楽チン!美味しい!おうちごはん」(東急百貨店)、「おうちカフェ アイスドリンク特集」(京王百貨店)といったキャッチフレーズを掲げて購買意欲を喚起する。各社は5月から順次、ネット通販で中元の取り扱いを始めてきたが、総じて売上げは好調だ。

小田急百貨店は5月20日~7月30日、ネット通販で約1400点を展開。1週間の売上げは前年の約1.8倍で、「例年に比べてカタログの巻頭で特集した商品の動きが良く、今年ならではの傾向としてはハンドソープが伸びている」という。

京王百貨店は5月20日~7月29日、ネット通販で約1350点を展開。巣ごもり消費を意識し、ネット通販限定で「おうちカフェ アイスドリンク特集」や「防災備蓄品」を訴求した。特に防災備蓄品は、5月20日~5月31日の売上げが前年の約1.5倍を記録。関心の強さを窺わせる。「昨年に引き続きネット通販で取り扱う約1350点の大半を送料無料、送料込みとして、利用を促進したい」という。送料無料、送料込みの商品は、店舗のギフトセンターの2倍以上にのぼる。

そごう・西武は5月14日~8月5日、ネット通販で約1950点を展開。「前年の中元の購入者に送るカタログにネット通販の案内を同封し、店舗のギフトセンターでも『1件につき3000円以上の購入で、送料をそごう・西武が負担する』などネット通販の利点を掲出する」といった宣伝が奏功し、5月14日~31日の売上げは前年の約1.4倍と好スタートを切った。

大丸松坂屋百貨店は5月8日~8月7日、ネット通販で約2320点を展開。催事の中止などで多くの在庫を抱える取引先の販路を増やし、「フードロス」を削減するため、5月19日には「全国各地のおいしいものを食べて応援!がんばる日本の美味特集」を立ち上げた。5月8日~5月31日の売上げは前年の約2倍で、「最終的には前年の約1.4倍を目指す」。

東急百貨店は5月15日~7月31日、ネット通販で約1500点を展開。いずれも配送料無料、配送料込みだ。6月中旬には、テーマごとに編集する「So Delicious」で巣ごもりにフォーカス。「#楽チン!美味しい!おうちごはん」や「#たまにはゆったり大人時間~お酒&おつまみセレクト」、「#ネットでぶらり!旅グルメ」などで商品をピックアップする。利便性を向上させるため、客のパソコンの画面を確認しながら操作をサポートできる「画面共有サービス」の導入にも踏み切った。

東武百貨店は5月27日~7月20日、ネット通販で約1777点を展開。「全国送料無料、東武カードの利用で0.5%の付与、外商顧客へのアナウンス」などで拡販に繋げる。売上げは6月2日時点で前年の約1.3倍だ。

三越伊勢丹は5月12日~8月17日(伊勢丹は5月15日~)、ネット通販で約2400点を展開。うち100点がネット通販限定、1000点が送料無料だ。「新型コロナウイルスの影響で、ネット通販の利用を積極的に告知」しており、カタログには「新型コロナウイルス感染拡大による影響のお知らせ」と記した媒体を封入。粗品の種類を増やしたり、ポイントキャンペーンを延長したりするなども交え、ネット通販の利用を促す。

近鉄百貨店は5月8日~8月4日、ネット通販で約2000点を展開。うち約600点がネット通販限定で、その約40点は近鉄百貨店限定だ。ネット通販限定は前年より100点ほど多い。品揃えを増やすだけでなく、特典やサービス、機能も強化。特典では、約750点を送料無料(5月8日~6月18日、1回の会計で1万円以上、6月下旬の配達)にするとともに、3000円以上の購入で次回のネット通販でのショッピングに使える300円分のクーポンを配布。新規・既存を問わず、ネット通販の会員には500円のクーポンを渡した。5000円以上の購入で利用できる。

機能では、アドレス帳への登録などの操作を学べるマニュアルを作成したほか、「お買い物を続けますか?」、「はい/いいえ」など2択で買い物を進められる「ポップアップ表示」を導入。デジタルカタログから商品を直接購入できる仕組みも採り入れた。

5月8日~31日の売上げは、前年の約3倍。滑り出しは上々だ。

京阪百貨店は5月14日~8月5日、ネット通販で約1400点を展開。うち約700点は期間中、10%~15%オフで販売する。売上げは「前年比で2桁増」を見込む。

2020年夏 中元特集 第3回

ギフトセンターは「密」回避へ

2020年夏 中元特集 第2回

家ナカ時間の充実や、生産者応援で訴求

 

■東京・大阪の主要百貨店が講じるオンラインの施策一覧■

高島屋

5月8日(金)~8月7日(金)

取扱いは約5500点。期間中、約3000点が送料無料または送料込みとなる。今年は特にネットの利用を促すため、オンラインストアでの購入特典を4つ用意した。税込1万円以上購入すると、抽選で2000名にカタログギフトを進呈。さらに配送先住所を登録すると、また抽選で2000名でカタログギフトが当たる。

中元商品をタカシマヤのクレジットカードで税込1万円以上買うと必ず1000ポイントが貰え、カタログギフト「ユアチョイスギフト」を税込2万5000円以上購入すると、抽選でユアチョイスギフトの「YAコース」(税込5500円)がプレゼントされる。

三越伊勢丹

〈三越〉5月12日(火)~8月17日(月)

〈伊勢丹〉5月15日(金)~8月17日(月)

オンライン掲載は約2400点で、うち送料無料が約1000点。その他は全国一律で通常便が330円、特殊配送便が550円(どちらも税込)とする。オンライン限定は約100点を用意。オンライン利用の特典では、早期注文によるポイントキャンペーンを前年より1週間延ばし、6月30日までに注文すると抽選で貰えるプレゼントも2種類に増やした。カタログにもペラを封入し、オンラインでの買い物や客数の多い時以外の買い物を勧める。5月29日と6月16日、生中継動画の配信でお勧め商品を紹介する「ライブコマース」を実施する。
大丸松坂屋百貨店

5月8日(土)~8月7日(金)

オンラインストアには約2320点を掲載し、うち1270点を15%オフ(一部20%オフ)とする。送料は全国統一律で税込495円。イベント自粛などにより在庫過多になってしまった取引先への販路の確保とフードロス削減を試みた支援販売をインターネット限定で開催し、5月19日に受注を開始した。また、今年の中元のメインビジュアルを手掛けたイラストレーター・またよしさんのイラストを8月20日まで無料で配布する。江戸時代に疫病流行を鎮めたとされる精霊「アマビエ」を元にしたイラストと、カタログのメインビジュアルを使った壁紙の2種を用意した。
そごう・西武

5月14日(木)~8月5日(水)

オンラインストアには約1950点を掲載。前年利用した客へ送るカタログにオンラインストアの案内ツールを同封し、店頭でも利用促進の案内を掲出するなどしてオンラインストアへ誘導する。5月14日~7月13日、特定の商品が5%~15%割引かれる早期優待を実施。素材や製法にこだわった商品を集めたそごう・西武の「食源探訪」シリーズや銘店の惣菜、和菓子などを対象とする。送料は税抜き3000円以上で無料になる。
松屋

6月10日(水)~7月13日(月)

取扱い商品は約2000点で、うち送料無料が880点、松屋限定が20点、自宅配送限定が72点。期間中、オンラインストアで税込1万円以上買上げると、1000円分の商品券がプレゼントされる。
小田急百貨店

5月20日(水)~7月30日(木)

オンラインストアの掲載点数は約1400点。オンラインストア限定で全品が全国送料無料となる(一部送料込み)。人気ランキングの掲載や、カテゴリー、価格帯別でアイテムを検索できるなど利便性を高め、ネットでの利用を促進する。
京王百貨店

5月20日(水)~7月29日(水)

取扱いは約1350点で、店舗の2倍以上にあたる大半を送料無料、または送料込みに設定した。オンライン限定商品として、家で過ごす時間が長くなり、SNSなどでも話題になっていることから、家でカフェ気分を楽しめるコーヒーやジュースなどアイスドリンクを集めた「おうちカフェ アイスドリンク」を特集し、乾パンなどの防災備蓄品も限定で取り揃える。
東急百貨店

5月15日(金)~7月31日(金)

オンラインストアでは掲載するギフト用商品約1500点全てを配送無料または送料込みとした。別に自宅用限定のお買い得品も約300点用意する。インターネットでスムーズに買い物ができるよう、客のパソコン画面を確認しながらサポートする「画面共有サービス」を導入する。オンライン買上げ特典として、税込み1万円以上購入すると、先着で5000名にオリジナルのクーラーバッグがプレゼントされる。
東武百貨店

5月27日(水)~7月20日(月)

 

商品数は1777点。送料は全国一律で無料とし、東武カードの使用で一律0.5%のポイントを付与するなど特典を付ける。外商顧客にもネット利用促進のアナウンスを行い誘導する。早期優待として、特定の商品は東武カードで7月1日までに注文すると15%割引かれる。
阪急阪神百貨店
阪急 阪神5月15日(金)~8月3日(月)
 

掲載点数は阪急が約1500点、阪神が約1400点。継続施策として、オンラインの注文によって、ナショナルブランドを中心に約1000点を掲載する「赤いギフトカタログ」(阪急)、「きいろのギフトカタログ」(阪神)は10%オフかつ送料を無料(通常は税込み330円)とし、こだわりギフトを中心に揃えた「青いギフトカタログ」(阪急)、「みどりのギフトカタログ」(阪神)は通常660円の送料を330円にする。阪神ではギフトセンターに中元のEC相談カウンターを設置し、会員登録や操作方法などを伝え、ECでの注文を手助けする。

近鉄百貨店

5月8日(金)~8月4日(火)

 

取扱い商品は約2000点、オンライン限定は約600点を用意。限定特典やサービスを強化する。約750点が早期注文(5月8日~6月18日、税抜き1万円以上の購入)で昨年324円だった送料が無料となる。その後も約750点が全国一律で送料330円(税込)と店頭の送料440円より安く設定した。次回オンラインで利用できる300円クーポンの配布や、対象商品を購入した人へ抽選でカタログギフトのプレゼントも行う。

利便性の向上も図り、アドレス帳への登録方法や複数の届け先へのギフト設定などのガイドページを従来の利用ガイドに追加した。購入操作の補完やキャンペーンのお知らせをポップアップで表示する案内や、デジタルカタログ内から直接商品を選択し、ネットショップ内の掲載ページへ接続できるシステムも始めた。

京阪百貨店

5月14日(木)~8月5日(水)

 

アイテム数は約1400点。ネットで注文すると、半分にあたる約700点が期間中は10%または15%オフとなる。ギフトセンターと共通で、早期購入で割引する商品の中から特にお勧めの57点を「バイヤー推奨ギフト」として紹介する。