高島屋、歴史や文化、技術を次の100年に繋ぐ中小企業を支援 マーキュリアと協業で
経営企画部金融戦略室室長の本多修氏(左)とマーキュリア アドバイザリー代表取締役の深井聡明氏
高島屋は4日、マーキュリアホールディングスの子会社であるマーキュリアインベストメントとマーキュリアアドバイザリーと協業で、歴史と伝統、技術を有する国内の中小企業を支援する「百年のれん」プロジェクトを発足したと発表した。髙島屋の取引先を重点的な対象とし、販路拡大や事業継続といった支援、買収ではなく経営権を維持したまま資金調達を行うなど、次の100年に繋がる長期的な視点に立った経営者の伴走者としての役割を担う。今後2年間で年商5~10億円の企業を対象に、年間10社ほど、数億円規模の投資を行う。
高島屋は2031年の創業200周年に向けた事業計画の中で、百貨店事業を基盤としつつ、商業開発や金融事業を強化し、非百貨店事業の利益比率を約47%まで高める方針を打ち出している。中でも金融事業は3つの事業を柱としており、クレジットカード事業、ライフパートナー事業、投融資その他事業を掲げている。今回のプロジェクトは3つ目の事業の一環で、国内中小企業を守るESG(環境、社会、企業統括)の視点に立ち、百貨店事業の強化にもつながるサプライチェーンの強靭化と、安定的なストック収益の確保を狙いとしている。
経営企画部金融戦略室室長の本多修氏は「当社の取引先には100年を超える老舗も多い。百貨店事業の持続性の観点からも非常に危惧している状況だ。のれんは一度失えば二度と戻ることのない無形資産。100年といえば3世代に亘る。後世に残す仕組みの構築を目指し『100年のれん』という考え方に至った」と語る。

経営企画部金融戦略室室長の本多修氏
協業先にマーキュリアインベストメントとマーキュリアアドバイザリーを選んだ最大の理由として、原則マイノリティ出資で事業譲渡や上場にこだわらず、伝統や技術、文化、歴史といった「のれん」的価値の保全や事業継承問題を支援するサービス提供に主眼を置いていることを挙げる。
「多くのファンドは事業譲渡や上場などを行い、事業を守りながら次世代に渡す選択肢や仕組みがない。事業継承を考える創業者や経営者の方々に対する支援や仕組みが、十分整っていないという問題意識から協業に至った」(同)。マーキュリアサイドも「百貨店×プライベートエクイティ(PE)」の新たな協業モデルの創出に意義を見出している。
対象企業にとっては、経営権を維持したまま資金が調達でき、将来の世代交代に向けた準備も可能であり、信頼性の高い企業による長期に亘る伴走支援が得られる。「同社、協業先、対象企業それぞれにメリットがある『三方良し』を実現」(同)した。
百貨店において取引先とのコミュニケーションは、バイヤーを通じて行われることがほとんどだという。取引先が抱えている資金的なニーズや後継者問題などの経営面は、普段なかなかアクセスできない領域である。今回のプロジェクトでは同社の取引先をメインに想定しており、これまで踏み込めなかった課題の解決に結び付けたい考えだ。対象が協業先からの紹介企業であったとしても、今後、同店に登場する可能性もあり、金融事業と百貨店事業のシナジー効果に期待も高まる。
(北野智子)