2021年12月05日

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2021年 百貨店首脳 年頭所感・参

<掲載企業>

■大丸松坂屋百貨店

■東急百貨店

■東武百貨店

■東武宇都宮百貨店

■名鉄百貨店

■金沢名鉄丸越百貨店

■津松菱


ブランディング通じ、使命感を新たに顧客体験を最大化

大丸松坂屋百貨店 社長 澤田 太郎

昨年は未曾有の試練に立ち向かう年でありましたが、新年に際し、百貨店を再び成長軌道に乗せたいと強く念じております。

コロナ禍中の外出自粛生活で、デジタルテクノロジーの恩恵を誰もが享受するようになりました。Eコマースでいつでも買い物でき、テレワークでどこでも働けるようになるなど、「時間」と「空間」という縛り、制約が一気に取り払われました。これまで限られた場所と時間の中で商売してきた百貨店は、この制約をいかに克服するかという本質的な課題に直面しています。

課題解決にはDX(デジタルトランスフォーメーション)が不可欠であり、当社ではDXを成長戦略の中心に据え、既存事業の革新と新規事業の創出を推進いたします。具体的には、昨年「デジタル事業開発部」を立ち上げ、OMO(オンラインとオフラインの融合)化したショッピングの開発と店舗外での新たなオンラインビジネスの開発に、スピードを上げて取り組みます。

コロナと共存する世の中には、これまで以上に「快適な空間で快適な時間を過ごしたい」という欲求が生まれています。そうした「気持ちを豊かにしたい」、「生活に彩りが欲しい」といったお客様のニーズに対して、心躍る品揃えや心地良い空間、販売スタッフとのコミュニケーションなど、様々な要素をもって応えられるのが百貨店です。コロナ禍によって、私共は百貨店の社会的な役割を再認識することができました。

本年は、使命感を新たに顧客体験の最大化を追求してまいります。そのためにDXを進めていく上でも、リアル店舗のブラッシュアップが重要だと捉えています。言い換えれば、当社のブランディングの推進です。そのブランディングを通じて新しい事業機会をつくり、将来はそこでも収益を上げていく……本年度からスタートする中期経営計画では、その道筋を示したいと考えております。

当社グループにとって、百貨店とパルコのシナジー創出も重要な成長戦略です。昨年11月に大丸心斎橋店の旧北館に心斎橋パルコが開業し、4万平米の百貨店と4万平米のパルコがワンプレートで繋がる新しい商業施設が誕生いたしました。

幅広い層のお客様が回遊し、さらに新しいお客様を呼び込む連鎖が生まれることを期待しております。心斎橋で成功パターンをつくり、当社の店舗とパルコが近接する他のエリアにも広げていくことで、地域の活性化に貢献したいと考えております。また、昨年からスタートした、地域の課題を考え応援する社会貢献活動「Think LOCAL」をよりいっそう推進してまいります。

企業と社会の持続的成長は、持続可能な社会の実現の上に成り立ちます。コロナ禍にあってもサスティナビリティ経営の手を緩めることなく、社会課題に向けて弛まぬ努力を重ねてまいる所存です。


事業構成の多様化図る「融合型リテーラー」の推進に注力

東急百貨店 社長 大石 次則

2020年は当社にとって東横店上層階が営業終了した大きな節目の年であり、コロナ禍の厳しい状況の中で中期経営計画の最終年度として「融合型リテーラー」の実現を推進した年でもありました。

4月に組織改正を行い、戦略地区である渋谷各店を総括し効率的に運営するための「渋谷戦略事業部」、地域のニーズに合わせた専門店の出店から運営までを一貫して担当する「専門店事業部」、マーケティングに基づいた戦略策定、新規事業の開発、デジタルシフトへの取り組みを担当する部署として「事業戦略室」を新設しました。

新しい組織の下、コロナ禍の逆風の中でも渋谷地区で「東横のれん街」の移設オープンや「渋谷東急フードショー」のリニューアル第1弾を実現し、五反田に「+Q(プラスク)スタイル」、自由が丘に初の路面店「自由が丘東急フードショースライス」を出すことができました。

同時に、コロナ禍によって大きく変化した生活様式や価値観に対応する新しい試みも実施しました。デパ地下のデリバリー、ライブコマース、越境EC、LINEでの情報発信強化など様々な施策を行いました。また東急グループと楽天との連携の中で、楽天ポイントの利用受け入れを本格的にスタートさせたことも重要な取り組みでした。

緊急事態宣言を受けての4~5月の休業は大きなダメージでしたが、その後は想定よりも良い売上げで推移しています。

本年は20年に起きた変化がさらにスピードをもって進んでいくと考えています。東京オリンピック・パラリンピックの開催動向に注意を払うことはもちろん、テレワークやイエナカ、アウトドア需要や地元密着型ライフスタイル、SDGsへの注目度の高まりなど、新しい生活様式の中で生まれた消費傾向もさらに強まっていくと想定しています。

そのような変化に対応するためにも、当社は新しい中期3カ年経営計画の初年度として「融合型リテーラー」のさらなる推進に取り組んでまいります。

起点となる百貨店においては、構造改革を進め、店舗運営の効率化を図り、お客様の新しいニーズに対応したMDの構築に取り組んでまいります。渋谷戦略としては、初夏にはデパ地下ブームの先駆けとなった東急フードショー渋谷地下街エリアのリニューアルを完成させ、戦略地区である渋谷において存在感を高めていきます。

専門店事業では地元での生活時間拡大に対応し、地域のお客様のニーズに寄り添った、より利便性の高い店舗運営を行います。EC・通販サイトの拡充をはじめ、20年に立ち上げた様々なオンライン販売の発展や導入した楽天ポイントの効果的運用など、デジタルを活用した施策も重要な取り組みです。

また、関連会社の人材派遣サービス事業においては、百貨店で蓄積したリソースを生かし、グループ内はもとより、外部企業へアプローチを増強してまいります。

当社が百貨店事業で培った編集力、目利き力を生かして事業構成の多様化を図る「融合型リテーラー」を推進し、あらゆる場面でお客様との接点の拡大を図ることで、新しい生活様式の様々なシーンにおいて「生活サービス提案企業」として、より豊かな生活の実現に貢献してまいります。


豊かな暮らし手伝う地域・沿線顧客の「マイストア」へ

東武百貨店 社長 國津 則彦

令和の幕開けやラグビーワールドカップに沸いた2019年と打って変わり、昨年は体験したことのない事態が続く中で多くの企業や国民が判断力、行動力を試された年でした。

東武百貨店では感染拡大防止の観点から、当初よりお客様と従業員の安心・安全を第一に対策を行いました。3月からの営業時間短縮や土日の臨時休業を経て、政府の緊急事態宣言発令後は食品フロアの一部を除き49日間の臨時休業を行いました。この臨時休業中も地域のお客様のために社員が一丸となって努力したことは誇りに思っております。

当社は中期経営計画の中で「地域、沿線顧客の『マイストア』としての地位の確立」を目標としてまいりましたが、昨年を通じ改めて池袋本店、船橋店の近隣のお客様のありがたさを感じています。休業中も食品フロアは多くのお客様にご利用いただきました。徒歩圏内に住むお客様に対し、コロナ禍の日常生活の中で「マイストア」の役割を果たせたことは、従業員にとっても大きな励みとなりました。

営業再開後はさらに「お客様の日常に必要な品揃え、サービスとは何か」を考え、これまで扱いのないオリジナルのマスクやマイバッグの企画・販売、衛生・防災用品の展開に力を入れました。

「イエナカ需要」では新しいカテゴリーも注目されました。百貨店らしい上質なキッチン・リビング用品や家具・インテリア、健康とヒーリングなどは、催事も含めて拡大しました。また従来の百貨店の概念にとらわれないMDとして、池袋本店紳士フロアでは折りたたみ自転車売場や盆栽教室の導入でリモート生活でのライフスタイル、趣味の提案もしています。

池袋本店、船橋店に現代の新しい供養スタイルを提案する「はせがわ」も導入しました。船橋店では地元プロスポーツクラブとのコラボや生産者応援で地域の盛り上げにも積極的に貢献しています。

20年はCSRの取り組みも強化しました。レジ袋有料化に向け3月から「地球を大切に」をコンセプトに全社で「マイバッグキャンペーン」を実施しました。紙袋も有料化しましたが、キャンペーンがお客様に浸透していたことで、スムーズに移行することができました。

また「従業員の生活の質の向上」を目的に、取引先販売員を含む働き方改革にも着手しました。初売りを皮切りに段階的に池袋本店、船橋店で営業時間を短縮し、この年末年始はさらに短縮しました。生活様式の変化もあり、お客様には想定以上に理解をいただいています。

今後はさらに業務改善、構造改革を進め、短い時間でも満足していただけるレベルの高い接客を目指すとともに、従業員にとっても魅力のある企業にしてまいりたいと思います。

21年は益々地域、沿線顧客の「マイストア」としての真価が問われます。百貨店らしい質の高いおもてなしと環境、新しい生活に寄り添った品揃えに加え、安心・安全の取り組みで期待以上のリアルな買い物体験の提供はもちろん、来店しなくても満足していただけるECの構築や新規外商事業など、買い物チャネルの拡充に取り組みます。

変化するお客様のニーズにきめ細かく応える催事場も増やし、豊かな暮らしのお手伝いを進めることで、真の「マイストア」を目指します。


新たな生活実現に貢献し「安心・安全で信頼される店」へ

東武宇都宮百貨店 社長 守 徹

2020年は、誰もが予期せぬ新型コロナウイルスの出現、感染拡大が社会、経済全体に未曾有の負の影響をおよぼし、私達の生活、日常が大きく変わってしまいました。

当社の3店舗(宇都宮、大田原、栃木)においても、臨時休業や営業時間の短縮、売場やブランドの退店および休止、予定をしていた催事やイベントの中止などで、お客様に多大な迷惑をかけました。

そして、21年がスタートしました。新型コロナの感染拡大は、すぐには収まる気配がなく、私達は、これからもこのウイルスと共存していかねばならないでしょう。人々の生活は変化し、時代が求める新たなニーズや価値観が生まれ、私達は、この変化に対応、適応していくことが求められています。

「ウィズ・コロナ」の社会の中で、当社はお客様の安心・安全を最優先に考えた運営と地域の皆様から信頼される店舗であることを目指して、次の2つのことを実行していきます。

1つ目は、このような状況下で、お客様に安心して店頭に来ていただくために、今まで以上に魅力、価値を高め、新しい売り方、新しい接客、新しいサービスの提供など、新しい百貨店の日常、新しい百貨店のスタイルを確立していきたいと思います。

また、店頭に来なくても買い物ができるように、遅ればせながらオンラインショッピングをスタートさせます。

2つ目は、お客様の新たなニーズ、潜在的な需要に応えるべく、全館の商品展開の再編に着手していきます。これからのお客様の興味、関心は「美・食・住・遊・学」にあり、次世代顧客の獲得、成長領域の拡大、お客様の利便性、買い回り性なども考慮し、新規のテナントの導入、売場の統合、編集を実行していきます。

これからも私達は、安心・安全で信頼される店を目指して、地域の皆様の新たな生活実現に貢献していきたいと思っています。


「暮らしを見直す新しい私スタイル」提案できる百貨店に

名鉄百貨店 社長 柴田 浩

昨年は、世界中が想像だにしないコロナ禍に見舞われる中、結果としてテレワークなどの新しい生活様式が定着し、消費者の購買意識にも大きな変化をもたらしました。

当社では「モノからコトへ、コトからヒトへ」をキーワードに「ヒト」をクローズアップし、従業員から選抜された講師(ナナちゃんマスター)がお客様の悩みをお聞きしながら、商品の使い方やメンテナンス方法などを分かりやすく伝えるセミナー「めいてつナナちゃん講座」を開きました。

また「自分も楽しめて社会にとっても良いこと」をテーマに、環境に配慮したエコギフトやフェアトレード商品、チャリティグッズなどのサスティナビリティなギフトを提案するなど、当社の特徴、強みを生かした企画にも取り組みました。

「ウィズ・コロナ」、「アフター・コロナ」の社会では、eコマースの拡大とともに店舗型小売業の多様化が進み、これからの百貨店においても「ネットとリアルの融合」は欠かせないテーマです。

ただし、購買活動の全てがネットで完結するとも思われず、お客様が実際の商品を見て、触れて、納得のいく商品を選ぶ、そのような「買い物に出かけること自体が楽しみな場所」、「新しい体験やワクワクする体験ができる場所」の提供が百貨店の役割だと考えています。

お客様の「暮らし」の中の新たな選択肢を彩るため、私達が「できる」ことを増やしていく努力、機会創出が求められています。全従業員の知恵を結集して、日々の生活に寄り添った「より自分らしい暮らしを見直す、新しい私スタイル」を提案し、リアル店舗として地域から求められる百貨店、お客様から必要とされる百貨店を目指してまいります。

また地方都市にある一宮店の頑張りを見ますと、私共の店が地域の方々から力強く支えられ、同時に多くの人の生活を支えていることを、コロナ禍は再認識する機会となりました。引き続き、地元市町村や企業、個人事業主の皆様との共創の場として、「地元の笑顔とありがとう。深発見に出逢えるお店」で在り続けたいと考えています。

新型コロナ感染防止のため、全従業員がマスクを着用しておりますが、1人1人が名札に取り付けたシールによって「マスクの下は笑顔です」と宣言し、満面の笑顔の接客に努めてまいります。


人と人の交流で「安心」や「新しい出会い」が生まれる店に

金沢名鉄丸越百貨店 社長 石川 仁志

「めいてつ・エムザは新しい出会いを大切にします」というアナウンスが、金沢市内を走るバスが当店の最寄りのバス停に近付くと流れます。2020年は、この「新しい出会い」の機会が制限されました。買い物はできるだけ少人数で出かけ、短時間で済ませるよう呼びかけられました。残念ですが、意図して来店客数を減らし、人の接触を減らすことで、新型コロナウイルス感染症の拡大を抑止しようと皆が協力して取り組みました。しかし、「感染拡大防止のため、めいてつ・エムザはしばらくの間、新しい出会いは大切にしません」とは言えません。

地域に根差した中核商業施設は、お客様に商品を提供するだけでなく、毎日の生活に安心感をもたらすという大切な役割と責任があります。人と人が顔を合わせて笑顔で向き合い言葉をかけ、お互い健康に感謝し、労わりあうことで安心感は生まれます。

振り返って昨年の年頭所感で、私は「食の安全への関心の高まりや環境問題としてプラスチック廃棄物、食物廃棄の問題など、店とお客様との関係の中で社会変化となるようなテーマが数多くあり、お客様はこうした機会に自身の消費について見詰め直し、同時に利用する店の価値についても考え直す」と書きました。

しかし、この時に私は店の価値として人の交流から得る「安心」ということに思いおよんでいませんでした。

緊急事態宣言で臨時休業が続いた後、営業再開にあたり、お客様からいただいた話に気付かされました。「ありがとう」についてです。「休みの間は辛かった。だって『ありがとうございます』と言ってもらえないから寂しい」ということです。

私共は、お客様から「ありがとう」の言葉をいただきます。人それぞれ色々な「ありがとう」がありますが、心のこもった「ありがとう」は本当に嬉しいものです。これと同様に、逆の立場でお客様は店のスタッフから受ける「ありがとうございます」を求めています。スタッフが発する「ありがとうございます」に心を満たされているのです。中でも、一番心のこもった「ありがとうございます」を言う販売員が好きなのです。

店、私達は必要とされています。新年に取り組むべきヒントが、ここにあります。感謝や思い遣りの言葉の交換は、機械を通してでは効果が出にくいと思います。人と人の交流で「安心」が生まれる店であること。それが「新しい出会い」と言えるかもしれません。良い方向に変化が進む年になることを願います。


地域住民が豊かで文化的な生活を送れる地域社会に貢献

津松菱 社長 谷 政憲

2020年は新型コロナウイルスに始まり新型コロナウイルスに終わった1年でした。当社も全国の緊急事態宣言下の4月下旬から、食品売場を除く約1カ月間の閉店を余儀なくされました。

新型コロナは外出自粛期間中にネットの便利さを知った人達のデジタル化を加速させ、生活様式を変えたと言われます。しかし私にはそれとは反対の、出かけたくてもできない、リアル店舗の重要性を改めて認識した人達も同じくらい多かったように思えます。

全館営業再開前には、「いつから営業するのか」という問い合わせが数多く寄せられ、当初予定より前倒しました。お客様からは「心待ちにしていた」といった温かい声が多く、新型コロナを機に改めて私達は、地域社会から期待されている責任を強く感じた次第です。

この1年を振り返りますと、これまで名古屋に流れていた客層の来店により、対前年売上げでプラスとなる売場がある一方、イベントや旅行などのオケージョン需要の消失、感染を警戒する主要顧客である高齢者の来店客数の減少が響き、全体としては苦戦が続いております。

商品別ではデイリー性の高い食品、化粧品、「巣ごもり需要」を反映したキッチン生活雑貨、百貨店環境の安全・安心を感じた子連れの増加によるベビー子供服などが比較的好調であったものの、主力である婦人アパレルが苦戦しました。

21年は早急なる業績の立て直しと、これからの新たな成長戦略への取り組みを同時に行わなければなりません。店舗政策では、コロナ禍において当初計画していたMDのスクラップ&ビルドが大幅に遅れました。昨年はアパレルメーカーの破綻、リストラによる退店などがあり、21年は現在のライフスタイルに合わせた、これまで取り扱いのない商品群やサービス部門などの導入を計画しております。

MD面だけでなく、お客様から信頼されるプロの販売員の育成も欠かせません。ネット通販において、その商品数は無限であり、全てを自己の責任で選択します。便利であることに違いありませんが、百貨店に来るお客様は信頼できる人の意見を聴きたいのです。消耗品、廉価品なら簡便に済ませられるものの、高額品、大切な方への贈り物、コーディネートを必要とする商品などは、特にこの傾向が強いようです。接客販売を主とする百貨店は、これからも必要とされています。

一方で、私達の次世代戦略として、ネットの活用が不可欠となってきます。私達はまずネットありきでなく、お客様の困り事を解決する手段として取り組んでまいります。地域密着のリアル店舗の利点を生かし、食品などのデイリー商品が主力となってきます。

昨年、ネットで物産展の商品をテイクアウトできる「らくらくお持ち帰りサービス」、宅配の「マッピーデリバリー」といった新サービスを立ち上げました。21年は近隣のレストランを含めた地域全体のフードデリバリーに拡大していきます。

私達のミッションは、地域のお客様に豊かで文化的な生活を送っていただけるよう、地域社会に貢献していくことであり、店舗とネットの双方においてこれを具現化するサービスを提供してまいります。