2025年05月15日

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関西の百貨店 大阪・関西万博を盛り上げ、地域に貢献【後編】

今後も品揃えの拡充を進め、売上げ拡大を目指す高島屋大阪店

1970年のアジア初開催となった万国博覧会、大阪万博(EXPO’70)から55年。158の国と地域、7つの国際機関が参加する「2025年日本国際博覧会」、通称「大阪・関西万博」が4月13日に開幕した。5月6日には一般の来場者数が200万人を突破。10月13日まで184日間にわたって大阪の夢洲(ゆめしま)で開催される世界的な一大イベントに、大阪を中心とした関西エリアは盛り上がりを見せ、同エリアに構える百貨店もその恩恵を受けている。

前編では会場内でのオフィシャルショップや設備について紹介したが、後編では近鉄百貨店、高島屋、阪急阪神百貨店、大丸松坂屋百貨店ら、各店舗の来場者の取り込みやお祭りムードの醸成に向けた取り組みについて取り上げる。

近鉄百貨店は、オフィシャルストア第1号店でけん引

「2025大阪・関西万博 会場内オフィシャルストア 西ゲート店 KINTETSU」が盛況の近鉄百貨店だが、開幕に先駆け、23年9月6日にオフィシャルストア第1号店をあべのハルカス近鉄本店内にオープンしている。売場面積は42㎡。「ファミリー」をテーマに公式ライセンス商品の販売や情報発信を担ってきた。

開幕1カ月前の25年3月13日には売場面積を2.5倍の約120㎡に拡大し、タワー館からウイング館に移設。販売商品も2倍の約600種類に増やし、展望台「ハルカス300」のキャラクター「あべのべあ」とミャクミャクのコラボ商品も扱っている。会場内のオフィシャルストアとは異なる商品展開が大きな特徴だ。

大きなミャクミャクが出迎える2025大阪・関西万博オフィシャルストア あべのハルカス店

拡大リニューアル後は、フォトスポットを新設した。1/50サイズの大屋根リング模型が展示され、体験型ストアとしての楽しみ方も提案する。「開幕後は今まで以上の来店がある。会場内で使うスタンプラリー用の公式スタンプパスポートもよく売れており、来場前にお越しいただく方が増えているように感じる」と、担当者の声は明るい。

会期中は、参加国の魅力を発信するイベントも予定している。「10月まで会場の内外で盛り上げ、貢献していく」意向だ。

好アクセスと改装で、客数が伸長する高島屋

高島屋は「大阪・関西万博は、将来の店舗価値向上と新たな顧客接点の創出につながる好機」と捉えている。特に高島屋大阪店が立地する「ミナミ・なんば」は、関西国際空港・なんば・夢洲を結ぶ好アクセスの後押しを受け、万博からの立ち寄りが期待されるエリアだ。「なんばの顔としてのプレゼンス向上、ひいては来店・売上向上につなげたい」と、担当者は語る。

実際、同店にあるオフィシャルストアの売上げは右肩上がりに推移しており、従来の土産需要に加え、万博会場での買い漏れ、Tシャツなど会場で身に着けるアイテムの購入が拡大。25年4月の売上げは前年同月比で、約4倍と大きく伸ばした。同ストアは万博開催の1年前、24年4月13日に南海電鉄と大阪メトロの乗り換え通路に面した地下1階西ゾーンにオープンし、顧客接点拡大と来店誘導を図ってきた。

同店は万博開催を視野に24年の秋から25年の春にかけ、売場のリニューアルも進めてきた。コスメやラグジュアリー、雑貨、リビング、食品、催会場を拡大。特に食品売場は約2割をリニューアルし、全国初ブランド、人気ブランドとの共同企画が注目を集めている。出来たて、つくりたてといった新たな価値提案も試みている。売上げは化粧品、スポーツ、子供、リビング、食が堅調で、日本のIPを活用したポップアップも好調に推移した。

開幕以降の4月9~15日の入店客数は前年同時期比10%増と大きく伸長。中国以外のアメリカやフィリピン、チリ、トルコなどの訪日客や国内旅行客と、これまでとは異なる顧客層が増加している。今後は国内旅行客を意識した品揃え、売場企画などを強化していく。

インバウンド向けに4月末にはフェイスブック、インスタグラムで広告を配信しており、店内看板もインバウンド表記を強化。5月には南海電鉄の車内吊り広告を、6月には大阪メトロ本町駅に大型ポスターの掲出を予定している。インバウンドの動向は、中国と中国以外の売上げ構成比をみると、3月は6:4、4月は5:5と変化している。4月25日までの中国を除くインバウンドの免税件数は前年比12.7%増となった。

巨大ディスプレイ、イベント企画で盛り上げる阪急阪神百貨店

エイチ・ツー・オー リテイリングは、「TEAM EXPO 2025」プログラムの共創パートナーとして協賛などを行う一方で、阪急阪神百貨店の店頭では来日客増加を見込んだ様々な対応を進めている。その1つが海外顧客に向けたホームページや店頭サイネージ、POPなどの情報発信といったメディアの多言語表記の強化だ。礼拝室や阪急うめだ本店海外VIP専用カウンター内にウェルカムLEDビジョンを設置し、ハード面も拡充している。

阪急うめだ本店「Omiyage」企画の「47都道府県お菓子巡り」では銘菓や逸品が集合した

4月9日~5月6日には世界各国、日本各地からの集客に向け「HANKYU HANSHIN JAPAN EXPO」も開催した。阪急うめだ本店では、「Neo Classic」「with Local」「Our Culture」「Omiyage」の4つのテーマで日本の魅力を発信。同店前を彩る巨大なディスプレイの「コンコースウインドー」には、7面全てに暖簾を使用し兜や鎧、華道、漆といった日本の伝統や文化を表現した。阪神梅田本店では、「MADE IN JAPAN」「COOL CULTURE」「WITH LOCAL」の3つのテーマをもとに、日本の伝統的な技や物づくりに現代的なセンスを融合させた様々なアイテムを紹介・販売し、大阪・関西を一層盛り上げている。

世界でひとつだけのオリジナルダルマが作れるワークショップなど、「HANKYU HANSHIN こどもカレッジ」では多彩な企画を予定

両店では、親子で遊びながら楽しく学べ、体験できる「HANKYU HANSHIN こどもカレッジ」も毎月開催しており、5月31日は万博会場に出張する。「HANKYU こどもカレッジ ウミガメプロジェクト~ウミガメふれあい体験&トークショー~」と題し、本物のウミガメと触れ合い学ぶ機会を提供する。

日本のポップカルチャーを発信、神戸と東京でも機運を醸成

大丸松坂屋百貨店は万博会場内のオフィシャルストアに加えて、大丸梅田店などで様々な企画を用意した。4月24日には「2025 大阪・関西万博オフィシャルストア 大丸梅田店」を同店5階に移設リニューアル。売場面積は2倍になり、ラングドシャをベースにした生地に大阪産のいちじくのピューレとホワイトチョコベースのクリームをサンドした「いちじくなにわクッキーサンド」など新商品も登場している。大丸梅田店とともに大丸心斎橋店も入店客数が対前年で2桁増となっており、担当者は来店数の増加を実感しているところだ。

人気商品が充実している「2025 大阪・関西万博オフィシャルストア 大丸梅田店」

特に大丸梅田店では、4月11日から10月13日まで期間限定で5階にオープンした「THE GUNDAM BASE POP-UP WORLD TOUR in OSAKA(ガンダム ベース ポップアップ ワールド ツアー イン オオサカ)」に初日から多くの客が訪れ、好調に推移している。同フロアは多くのキャラクターショップを展開しており、国内外から人気の高いジャパニーズポップカルチャーを強化中だ。3月19日から10月13日まで期間限定でオープンしている「TAMASHII NATIONS STORE Satellite in OSAKA 2025(タマシイ ネイションズ ストア サテライト イン オオサカ2025)」では完成品フィギュアの展示などもあり、ストア限定商品が好評。バンダイナムコホールディングスの万博パビリオン「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION(ガンダム ネクスト フューチャー パビリオン)」に展示される「RX-78F00/E ガンダム」の超合金ブランドも登場し、話題を集めた。フロア全体で目標を上回っている。

万博を機にガンダムに興味を持った客や旅行者向けも楽しめる「THE GUNDAM BASE POP-UP WORLD TOUR in OSAKA」©創通・サンライズ

開幕前の24年9月4日と5日にそれぞれオープンした大丸東京店9階と大丸神戸店地下2階の万博会場外のオフィシャルストアも好調だ。前者は国内外の観光客の拠点となる東京駅で、後者は地下鉄海岸線の旧居留地・大丸前駅に直結する好アクセスから、今後もさらに万博を活気づけていく。

(都築いづみ・北野智子)