2022年07月04日

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2022年 百貨店首脳 年頭所感・弐

<掲載企業>

■高島屋

■小田急百貨店

■京王百貨店

■松屋

■ながの東急百貨店

■岡島

■井上


再生へ「異次元の構造改革」

高島屋 社長 村田 善郎

2021年は新型コロナウイルス感染症の想定を上回る拡大により、高島屋グループの商業施設においても臨時休業や入店制限の実施を余儀なくされるなど、大変に厳しい経営環境となりました。一時は感染の収束により個人消費は着実な回復傾向にありましたが、昨年後半からは新たな変異株の影響により、依然として先行き不透明な経営環境が続いております。

こうした中、当社においてはグループ総合戦略「まちづくり」を推進し、時代や社会、お客様からのニーズの変化に対応すべく、「街のアンカーとしての役割発揮」、「館の魅力最大化」に取り組んでおります。しかしながら、本来ブランド価値の源泉である百貨店の経営は、新型コロナウイルス禍で大きく傷んでおり、その再生そのものが持続的成長に向けた喫緊の課題であります。

そこで22年は、百貨店の再生に向けた「異次元の構造改革」の年と位置付けております。中核事業の百貨店においては企業経営や生産性向上に向けた、仕組みを根本から変える構造改革に取り組むとともに、品揃えや環境、サービス面において、ワンストップでお買い物を楽しんで頂ける店づくりを実現する営業力強化に取り組んで参ります。

グループ事業においても、商業開発や金融、飲食など既存事業の深耕や新規事業の開発に取り組み、より一層、当社の強みであるグループ総合力を発揮していける体制を構築して参ります。

当社には創業以来、190年以上に亘って受け継いできた「店是(てんぜ)」という商いの基本的行動規範があります。この店是は現在のグループ経営理念「いつも、人から。」へと紐付いており、ESG経営とはいかにあるべきかを考える時の拠り所になるものであります。

新型コロナウイルス禍において百貨店の存在意義が今一度問われる中、次の200年に向けて「すべての人々が21世紀の豊かさを実現できる社会の実現」に貢献できるよう社会課題の解決に取り組み、グループのさらなる成長を目指すとともに、持続可能な社会の実現に貢献して参ります。



「未来型商業モデル」を追求

小田急百貨店 社長 樋本 達夫

昨年は度重なる緊急事態宣言の発出にともない、営業活動の一部抑制を余儀なくされるなど、新型コロナウイルス感染症は、引き続き業界全体に大きな影響をおよぼしました。ワクチン接種の浸透により経済は緩やかな回復傾向にあるものの、厳しい状況は続いています。

本年は小田急電鉄が東京地下鉄などと共同して推進する国家戦略特別区域の都市再生プロジェクトである新宿駅西口地区開発計画がいよいよスタートします。そのスタートに伴い、新宿店は本年9月末をもって本館での営業を終了し、10月以降、強化カテゴリーである食品、化粧品、ラグジュアリーブランドを中心に、新宿西口ハルクにて営業を継続いたします。

こうした事業環境の中、顧客ニーズの変化を捉えた収益獲得施策の推進やコスト効率の改善など、収益構造の変革や「未来型商業モデル」の検討を全社一丸となって推進すべく、昨年、デジタル戦略推進部を新設し、新たなビジネスモデル構築の検討を進めて参りました。

ECにおいては、展開商品の拡充に加え外部モールへの積極的な出店により、販路拡大と新規顧客の獲得に寄与しているほか、リモートショッピングの活用促進を図ることで、売上高や会員数の拡大など、着実に成果を上げています。

また、インバウンド需要の回復が見込めない中、中国在住者をターゲットとしたライブコマースを実施したほか、オリジナル米菓ブランドの卸事業のさらなる拡大といった既存店舗事業以外の収益源開拓にも、一層強化して取り組んでいきます。

さらに、新宿西口再開発のスタートを迎える本年は、顧客との関係性を堅持し、絆をより強固にするための重要な年度と捉えています。そこで、顧客データの活用によるデジタルマーケティングを推進し、顧客接点の拡充に努めるとともに、お得意様外商と連動した新規事業などについても確実に進め、店頭以外の商品の販売など新たな営業スタイルに進化させて参ります。

いつの時代においても「“集客”により街の魅力を高め、賑わいの核となる商業施設」を提供できる企業となることが「当社が実現すべき存在価値」であり、その存在価値を明確に示すべく改革を推進してきました。

再開発工事期間中は、当社にとってまさに挑戦の期間です。この機会を新たなビジネスモデルへの転換期と位置付け、当社の強みを生かしながらリアル店舗の価値向上を図るとともに、時代の潮流を捉えた創出すべき提供価値を検討し、将来を見据えた「未来型商業モデル」の構築を目指して参ります。



新中計で大胆な構造改革推進

京王百貨店 社長 駒田 一郎

昨年は、年初より緊急事態宣言発令やまん延防止等重点措置による営業自粛や時間短縮を余儀なくされたほか、「デパ地下」での感染拡大リスクが名指しされるなど、百貨店業界にとりまして大変厳しい商環境となりました。10月以降になってようやく日常を取り戻すこととなりましたが、訪日外国人客の消滅や消費行動の変化など、先行き不透明な状況が依然として続いております。

そのような中、当社はウィズ・コロナの新たな生活様式や価値観の変化に対応し、店頭においてアプリを使ったデジタル会員証の導入や非接触決済手段を追加、またイエナカ消費で注目される趣味カテゴリーの拡充を図るとともに、成長するEC事業の強化、サテライト店舗の新規出店など販売チャネルの多角化と顧客接点の拡大に取り組んで参りました。一方で、コスト構造の見直しによる、利益指向経営を目指して参りました。

迎えた2022年は、当社にとって新たな中期経営計画のスタートの年度となります。以前より課題として認識していた百貨店を取り巻くマーケットの環境は、コロナ禍での新たな消費行動で加速度的に変化を遂げました。当社としても今後の事業の方向性を見極める最も重要な3カ年と考え、中期最終年度に収益の最大化を目指して大胆な構造改革を進めて参ります。

新宿店では、新客獲得、客層拡大に向けた大規模改装とMDの強化を図るとともに、さらなるローコストオペレーションを実現する店舗構造改革を進めて参ります。聖蹟桜ヶ丘店では、周辺地域の開発を契機に百貨店の強みを生かした商品カテゴリーの拡充や来店を動機付けるためのイベントの実施など、郊外型モデルの確立を目指します。

また、コロナ禍で来店機会が減る中、外商事業、サテライト・EC事業においては、さらなるシームレスな顧客接点を図り、事業規模の拡大を目指して参ります。

これらの展開により、お客様、お取引先様、従業員とともに新しい時代を築いて参る所存です。



新たな収益の源泉を創造へ

松屋 社長 秋田 正紀

新型コロナウイルス感染症の影響により、当社グループを取り巻く経営環境は依然として厳しい状況にありますが、長期間に亘るコロナ禍において、人とリアルに接することの価値観、そして絆づくりの大切さを強く認識致しました。このコロナ禍における最大の「学び」を糧に、松屋ならではの独自性をさらに磨き上げていくことが、今私達に求められています。

その独自性の実現にとって必要なことは2つあります。まず1つ目は「デザインの松屋」として常に「気遣い」を心掛け、取り組むことです。「アフター・コロナ」では、お客様の価値観、行動様式が大きく変化し、その変化に対し一人一人がどう対応していくかが、私達に求められています。常に「気遣い」を心掛け、お互いに敬意と尊重の気持ちを込めて、日々の業務に取り組んで参ります。

2つ目は松屋グループを個性溢れるブランドに磨き上げることです。当社グループは、いつの時代においても常に「チャレンジ精神」と「創意工夫」に力を注ぎ、直面している様々な変化や困難に対してはチャンスと捉えて取り組んで参りました。引き続き一人一人が仕事に対して主体性を持ってベストを尽くすことが、今後の松屋ブランドの価値向上を目指す大きな推進力となります。

3月にスタートする新中期経営計画は、新たな収益の源泉を創造し、コロナ禍により傷ついてしまった状況を回復させ、確固たる成長シナリオを描いていく予定です。今後の外部環境は徐々に好転していくと思われますが、新中期経営計画ではそれに頼ることなく、「チャレンジ精神」と「創意工夫」の精神の下、強い意志を持ち、独自に再成長を図っていきます。

常に「気遣い」を心掛けつつ、全員が一丸となって「攻め」の姿勢で、松屋グループを独自性の強い個性溢れるブランドに磨き上げて参ります。

昨年はエンゼルスの大谷翔平選手の大活躍が話題になりましたが、彼が北海道日本ハムファイターズに入団当時、世間は二刀流に対して否定的だったのを、栗山監督は「人間は、なぜ前例がないものを否定するのだ?」、「なぜ見えない未来を信じようとしないのだ?」と疑問に思い、周囲からの批判には屈せず、二刀流を認めて育成にあたったそうです。

今は、まさにこの「見えない未来を信じる力」が必要です。これからのアフター・コロナにおいては、未知の世界が待っています。私達も、勇気を持って前例のないことにチャレンジしたいと考えています。


 


地域と「共に暮らしを育む」

ながの東急百貨店 社長 平石 直哉

当社は昨年6月から東急グループのヘッドクオーターである東急の子会社となり、同社からの直接的なバックアップの下、安定した利益確保に取り組んでいます。しかし回復の兆しは見られるものの、未だコロナ禍に翻弄され、加えて須坂市に大型ショッピングモールが2024年春に開業予定です。当社と距離的には離れていますが、かなりの脅威と感じています。

このような厳しい状況を勝ち抜き、地元に根差しながら生き残っていくため、10年、20年先でもぶれない長期の事業ビジョンを策定しました。それが「共に暮らしを育む」です。

そして、この事業ビジョンには大きく3つの目標があります。1点目はライフタイムバリュー(顧客生涯価値)の向上です。お客様との接点(オフライン、オンライン)を増やし、購買機会を拡大し、長く、深くお付き合い頂ける存在であり続けること、即ち生まれた時から一生涯お付き合いを頂ける存在を目指します。

2点目はローカリスト(地域の顔)としての存在感の発揮です。地域唯一の百貨店としての強み(目利き力、編集力、販売力)を生かし、長野ならではの上質で洗練されたライフスタイルを提供し続けます。

3点目はサステナブル(持続可能)な事業モデルの構築です。既存事業の魅力向上、安定収益化と新たな事業機会の創出に取り組み、常にお客様に寄り添い、地域とともに発展する企業であり続けます。

この事業ビジョンの実現に向けては、売上げの多寡にかかわらず、着実に利益を生み出せる収支構造の構築が必要不可欠であり、次の5点を重点施策とし、抜本的な事業構造改革に取り組んで参ります。

まず1点目はカスタマー戦略です。ハウスカードの強化、LINEアプリの導入やSNS会員の獲得などによるデジタルツールの強化、加えてショッピングアテンダントサービスのリスタートです。

2点目はハイブリッド化リモデルです。目利き力、編集力、販売力という百貨店ならではの強みを凝縮し、得意分野である食品、化粧品、ギフトなどにできるだけ集中します。その一方で、他のスペースを賃貸化することで安定した賃料収入と新たな利用価値の提供が期待できます。

3点目は業務改革です。業務効率の改善を進めるもので、組織の再編、業務フローの見直しを、先行する東急百貨店の事例を参考にしつつ、同社と連携して進めます。

4点目は人事施策として、出向政策や女性の登用に力を入れます。5点目は新規事業です。EC、デジタル戦略強化と人材サービス事業で、ECは昨年自社サイトを立ち上げ、今後益々重要になり、拡大していきたい部門です。人材サービス事業は、新テナントの販売員として、当社社員の出向を考えています。

そのほかにも地域との連携強化や外商改革の推進、長野県ならではの農産物や加工品、伝統工芸などの地域の魅力を発信する「しなのづくり」プロジェクトの拡大などにも力を注ぎます。

新たな年を迎え、未だコロナの影響は予断を許さない状況ですが、当社はスピード感を持って事業構造改革の推進に鋭意取り組み、事業ビジョンである「共に暮らしを育む」の実現を目指して参ります。


ファッションとコラボを進化

岡島 社長 雨宮 潔

2022年こそはコロナ禍との決別による明るく自由な社会の復活を望んでおりましたが、次々に襲ってくる新たな変異株の感染拡大により、感染対策を徹底しております山梨県におきましても、平穏な日常生活の復活が遅れております。

生活のリズムが戻らないと、「新たな自分づくり」にも消極的となり、個人消費も前向きさを取り戻すまでには至っておりません。

しかし、ファッションキャンペーンや物産展など一部では、秩序を守りながら盛況に開催出来る状況を取り戻しつつあります。百貨店など提案する側が、どれだけその時期のお客様の気持ちを先回りできるかが、景気復活のカギであると考えておりますし、そこに責任とやりがいを感じております。

現状の経営面では、コロナ禍で入店客数の減少傾向が続く中、利益率の拡大と経費削減のマネージメントに細心の注意を払っており、20年度、21年度と連続で黒字決算を見込んでおります。

しかし、残念ながらこれは都心に行けない富裕層の地元志向に支えられている一時的な現象でもあり、お客様の深層心理を冷静に判断すべきであると認識しております。まだまだ、お客様の求める「上質感」には応え切れておりませんので、県内唯一の百貨店として、販売サービスのレベルアップと付加価値の高い商品の導入を引き続き追い求めて参りたいと思います。

コロナ禍での営業を継続する中で実感したことは、お客様の気持ちを動かすには、どんな状況下でもプロモーショナルな店づくりを推進することが肝要であるという、リアル店舗ならではの役割です。山梨のマーケットにおいて、新鮮な商品提案や話題のブランドの誘致などプロモーションを拡充することで、安心感と期待感の両方を持って来店して頂けるよう努めて参りたいと思います。

今年以降の店づくりのキーワードは、この「プロモーション」に加え、「ファッション」、「コラボレーション」の3つです。人と接する機会が復活する際には、もう1度自我に目覚めて「ファッション」に向き合って頂けるための提案力を高める必要性を強く感じております。

さらには、コロナ禍で培った地域密着MD政策を進化・拡大させ、地元の様々なステークホルダーの方々との「コラボレーション」で地域活性化を率先して参る所存です。

この店づくりを推進するためには、お客様とはもちろんのこと、甲府中心市街地を支える様々な方々、岡島で一緒に働く従業員同士など多様な関係性において、円滑なコミュニケーションを復活させ、この時代を生き抜く素晴らしさを共有し、生産性の高い新たな1歩に繋げて参りたいと思います。

 


時代に合った“在り方”に変化

井上 社長 井上 裕

昨年を振り返りますと、新型コロナの拡大に翻弄され対応に追われた2020年と比べると、ウィズ・コロナを見据えた新たな在り方に変化しなければという意識が世間にはありました。

当社でも「密」を避けるためにリアル店舗への集客イベントは縮小した形で開催しながら、同時にネット販売で物産展などのイベント会場で扱っている商品を掲載するなど、少しでも買い物を楽しんで頂けるようなアイデアに挑戦しました。

また、巣ごもりニーズに対応できるように、過去に廃止した宅配サービスをリニューアルしてスタートさせました。荷物の受け取りの煩わしさを解決するために宅配ボックスを会員に無料で貸し出し、当社で扱っている食料品を中心に展開を始めています。まだまだ商品の種類や宅配エリアは満足のいくものではありませんが、会員からの意見を取り入れながら充実させていきたいと思います。

本年は今まで展開していなかった自社サイトでのネット販売を構築していきます。20年前から出店している楽天市場では、多くが県外のお客様の利用となっています。迅速な対応と百貨店ならではの丁寧なサービスで支持を頂いていますが、地元のお客様にも当社のネット販売をもっと楽しんで頂けるよう、自社サイトで百貨店の商品を取り揃え、買い物をして頂けるようにしていきます。

当社は昨年、井上保前社長(現会長)が退き、私が社長に就きました。明治18年に呉服店として創業して以来、長年に亘り地域のお客様にご愛顧頂けたのも、伝統を継続して守りながら、その時代の環境に合った「在り方」に変化してきたからだと思っております。

これからも、お客様に買い物を楽しんで頂くための努力はリアル店舗でもそのほかのチャネルでも変わりません。百貨店であることをさらに意識し、品揃えとサービスに磨きをかけ、新たなことへも積極的に挑戦していける百貨店を目指していきます。

 

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