2021年05月11日

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デジタルと店頭の両方からアプローチ 寝具特集

三越日本橋本店のオンライン接客ではインポートの上質なホームリネンを取り扱う「マーム」が人気だ

百貨店は活況が続く寝具マーケットを取り込むため、オンライン接客と店頭ならではのサービス、両方からアプローチをかける。最近ではチャットやビデオ通話を通じた販売手法が普及しているが、こと寝具に関しては現物を試してみる必要性も高い。そこで、三越日本橋本店と髙島屋横浜店ではオンライン接客サービスの導入で客があらかじめ商品の候補を絞って店頭の滞在時間を短縮できるような体制をつくり、売場では最新の機器による測定や寝具だけでなく香りや音楽も含めた多角的な提案、職人による実演など、実店舗でしか提供できない買い物体験を充実。客からの支持を集めている。


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健康敷布団や枕、クッションが好調

矢野経済研究所の発表によると、ベッドリネン・寝具市場は2019年に減少したものの、2020年はコロナ禍の巣ごもり消費によって寝具の買い替え需要が増加しているという。これを示すように、リビング売場が入居する三越日本橋本店の本館5階は昨年の臨時休業明けの5~6月は客数が前年同期比で60%と大幅に減少したものの、寝具単体の売上げは同5%減と下げ幅は微減にとどまり、中でも健康敷布団、枕は共に同10%増と前年を超えた。

高島屋横浜店も20年度下期(20年9月~21年2月)の寝具の売上げは前年を上回った。同店は7階のリビング売場が全体的に好調だが、寝具は他と比べて10ポイントほど上回り、旺盛な購買意欲が表れている。こちらも健康敷布団や枕が同約10%増と人気を集め、さらにテレワークが増えた影響でクッションも同2桁増で推移している。

 

デジタル接客で滞在時間を短縮

寝具の需要が高まる一方で、外出を控えたり、店頭の長時間滞在を避けたりするという人は多い。百貨店はそうした人々の心情に寄り添って購入までサポートするため、チャットやビデオ通話による接客サービスを相次いで導入している。

三越日本橋本店は今年1月からリモート接客を実施。5階のリビング売場全体でLINEアカウント「日本橋三越ホームアイテム パーソナルショッピングデスク」を運用し、「LINE WORKS」によるチャットや「zoom」によるビデオ通話で商品の相談や提案ができる。

手軽かつ安全に相談ができる同サービスは寝具売場の顧客に好評を博し、購入まで至った商品の売上高における寝装・寝具の構成比は約7割にのぼる。ベッドマットレスで20万円超の商品をチャットのやり取りで購入した事例もあり、寝具への関心や安心・安全へのニーズの高まりにうまく合致した格好だ。ブランド別に見るとインポートの上質なホームリネンを取り扱う「マーム」への問い合わせが多く、特にカバーリングの人気が高かった。「おうち時間の増加と外出できないことから、ファッションへの感度が高いお客様の服への出費がこちらに向いたのだと思う」とライフデザイングループ日本橋ライフデザイン営業部Bショップ担当(本5階中央・西館)スーパーバイザーの正井圭祐氏は推測する。

今後も積極的に取り組み、「いつでもどこでも、来店時と同じ情報量を伝えられるようブラッシュアップを重ねる」(正井氏)意向だ。

高島屋横浜店も昨年5月に「エアウィーヴ」、同11月に「ロフテー」のオンライン接客サービスを導入した。エアウィーヴのサービス「リモート・コンシェルジュ」はビデオ通話で質問や相談ができ、文字や画像でやり取りするテキストチャット機能もある。ロフテーの「リモートコンシェルジュ」も同様だ。「どちらも最終的に来店して決めるが、店頭に滞在する時間を短縮するために商品を絞り込む目的で利用するお客様が多い」(販売第3部(子供服・趣味雑貨・学校制服・リビング・サービス営業)副部長の石川哲也氏)ため、事前にオンライン接客を利用してから訪れる客には、オンライン接客の内容を踏まえて短時間かつ適切な接客を行う。

 

店頭は睡眠へのアプローチを進化

エアウィーヴの3D測定器は視界に入りやすい通路のすぐ隣に配置した

こうしたサービスの導入によって商品の絞り込みなどはインターネット上で行えるようになったが、寝具は健康に直結するものであり、身体との相性や実際に使ってみた感触、生活環境とのマッチングも重要となる。商品の品質やこだわりを確かめるのも店頭でしかできない体験だ。店頭ではこうした部分を補完するサービスや打ち出しが盛んになっている。

高島屋横浜店はエアウィーヴの「3Dスキャナーで体形測定」を昨年5月に導入。身体の120万点から詳細な体形データを取得し、筋肉、脂肪、骨格、ゆがみを精緻に可視化する。このデータをもとに、マットレスを3分割し、好みの固さの素材にカスタムできる「ベッドマットレス S04」を提案。機械による正確な計測と商品提案が人気を博し、昨年下期の売上げは前年超えで推移した。ベッドマットレス S04は22万~39万6000円と高額なため、客単価の上昇にも寄与した。当初は売場の奥の方に置いていたが今年1月に通行量の多い通路の隣に移設し、集客力も発揮している。

今年3月には西川の「ねむりの相談所」をオープンした

今年3月3日にはさらに、西川の「ねむりの相談所」をスタートした。専用の活動量計で1日の運動量や寝姿勢、寝返り回数、睡眠時間などを計測し、普段の睡眠環境を可視化。寝具に加えてアロマ、快眠CD、家電など、眠りをサポートするアイテムをトータルで提案する。同時に1人1人に合ったパーソナルな寝具を提案する「&Free」も導入した。早速効果が表れ、3月の売上げは西川の売場で前年比42%増。「昨年は感染拡大による消費意欲の停滞や土日の臨時休業などもあったことを踏まえても好調と言える」(石川氏)。

三越日本橋本店は上質な商品のクローズアップに注力する

三越日本橋本店は、素材や製法にこだわった上質な商品の訴求を強化した。外商顧客をターゲットに定め、3月17~21日に西川の「オーダー真わた掛け布団」を店頭でクローズアップ。近江職人による真わたの手びき実演も行い、客が素材やモノの良さを感じられるような環境を用意した。すると同商品の売上げが牽引し、3月の布団の売上げは前年比約3割増と高伸伸した。

 

接客やサービスの質をさらなる向上へ

情報通信技術の発展は目覚ましい。百貨店は今後も常にアンテナを張り、客が求めるときには導入する必要があるだろう。一方で百貨店の要は依然として〝実店舗〟であり、その魅力のブラッシュアップが欠かせない。

高島屋横浜店は今後も「接客する場」としての売場の改革を推し進める。まずは発送業務の負担に着目した。百貨店では商品の配送の準備は販売員がバックヤードで行うのが一般的だが、手間がかかるうえに売場が手薄になってしまうという悩みがあった。そのため西川と協業し、同社の商品を受注した場合は、宇都宮市にある工場から商品を発送する仕組みへと切り替える。店舗に置く在庫の数を減らせるため、同店と西川どちらにとってもメリットのある取り組みだ。まずは対象商品を限定しながら、4月中のスタートを予定する。

三越日本橋本店も、今までは圧倒的な品揃えや品数を重視していたが、今後は接客やサービスなど、商品だけでない売場の価値を届けられるよう、変えていく必要を感じているという。「商品の置き方や見せ方も含め、スピード感をもって改革を行いたい」(正井氏)。

両店ともデジタル接客が「店頭でなくてもできる」簡単な質問や相談などを担い始めており、それによって実店舗では「店頭でしかできない」より高度なサービスや買い物体験の追求を深めている。デジタルによって利便性を向上させながら実店舗としての強みを失わないという、百貨店の新たなあるべき姿が具現化しつつある。