2020年08月08日

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【連載 新事業の創出】JFRこどもみらい カリキュラムで独自性

2020/02/17 10:51 am

デジタル化は加速し、生活者のモノ・コトに対するニーズの多様化や高度化、個性化が進展する。これらの変化もスピーディーだ。この変化に適応していくためには、従来型の百貨店リアル店舗だけでは限界があり、業種業態を超えた新たな事業創造が欠かせない。既に商業開発(不動産)をはじめ、クレジット(金融)、建装事業など、第2、第3の収益源となる事業が育ってきている百貨店もあるものの、マーケット変化に応じた間断ない事業開発・市場創造が問われる。eコマース(EC)市場への対応も課題であろうが、これ以外でも各社各様に「あるべき姿」の実現に向け、百貨店事業を補完する、あるいは相乗効果が高い新規事業の開拓や新しい市場の創造に積極的に挑んでおり、その成果が表れつつある。

 

 

 

キッズデュオ

J.フロントリテイリング(JFR)が、昨春より参入したのが幼児保育事業だ。昨年3月30日に横浜市青葉区青葉台にバイリンガル幼児園「ダイマルマツザカヤ キッズデュオインターナショナル青葉台」を開園した。本格的幼児園を百貨店が運営するのは初めて。幼児教育は次世代顧客の開拓と固定化に向けた最初の重要な接点になり、同社にとって「暮らしの新しい幸せの場」を提供する市場創造への挑戦でもある。

 

JFRは17年度から新しいグループビジョン「くらしの『あたらしい幸せ』を発明する」を掲げ、小売業の枠を超えた「マルチサービスリテイラー」を目指して事業領域を広げているが、幼児保育事業はこれを具現化した新規事業。

 

参入にあたり、「Kids Duo International(キッズデュオインターナショナル)」(以下KDI)を手掛ける(株)やる気スイッチグループホールディングスと提携。「(株)JFRこどもみらい」を設立し、フランチャイズ方式による「認可外保育施設」を運営している。

 

園の名前には、「KDI」の前に「大丸・松坂屋」ブランドを冠している。冠を配したのは国内の「KDI」11園の中でダイマルマツザカヤ キッズデュオインターナショナル青葉台のみ。「より協業しながら独自性を強めて、パートナー的存在として事業を育てていく」(JFRこどもみらい社長柏木敏弘氏)スタンスの表れであり、それだけ本腰を入れている証しだ。

 

本気度は園の規模にも表れている。2階建ての施設を建設し、面積は約1450平米。対象年齢は年少々(2歳児)、年少(3歳児)、年中(4歳児)、年長(5歳児)の4学年で、各学年3クラス制。定員は年少々が72名で、他は90名。合計12クラスで、定員は342名。国内で最大級の幼児園だ。開園時間にも工夫している。基本開園時間は(月~金)の午前9時から午後5時までだが、朝(前延長)は午前7時30分から、午後5時以降(後延長)は午後8時まで開園。言うまでもなく共働き世帯の不安・不満を解消する時間延長だ。

 

 

職業体験

カリキュラムも特徴的で、という。この中には独自の教育プログラムがある。昨年2月には入園予定園児を対象に、大丸東京店地下1階のアート・キャンディ・ショップ「パパブブレ」で職業体験を実施。こどもの日には松坂屋上野店で、「エレベーターガール・ボーイ」とレストランの「ウエイトレス・ウエイター」の職業体験イベントを行った。

 

今年2月には、15日に園内の2階ホールで、東京藝術大学生による「0歳からのコンサート」を開き、21日にはデパ地下でスイーツを展開する「エーデルワイス」のパティシエによるケーキ作りの体験会を開く。これらは「百貨店グループならではの上質な体験の提供」(柏木社長)だ。

 

 

19年10月から年中・年長園児を対象に、ロボット教材を使用したプログラミング教室を開始した。授業は英語で行われ、プログラミングによって自分が作ったロボットを動かすことを学ぶ。プログラミング教室は全12回で、今年1月23日に12回目を行い、完成したロボットで何ができるかを発表した。

 

幼児保育市場は変化しており、そこには様々なポテンシャルが潜在している。大丸松坂屋KDIは、異業種からの新規参入であり、従来の業界の枠にとらわれず、価値観の変化に柔軟に適応していくことを強みにできる。街づくりの観点からもなくてはならないコンテンツに違いない。「今後、様々な形でノウハウを生かせると思う」(柏木社長)と確かな手応えを得ている。