2021年03月07日

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【後編】無印良品、地域と連携し交流を楽しめる架け橋に

2021/01/27 5:00 am

昨年12月にオープンした住空間に特化した大型店の「無印良品 東京有明」。良品計画代表取締役会長の金井政明氏は「東京有明の店を住空間のモデル店舗として政令指定都市へ出店していく。ここを住空間事業の拠点にしながら、お客様と一緒に暮らし方であったり、作り方であったり、片づけ方であったりを一緒に考え、お客様の生活に巻き込まれていく店にしたい。この店は政令指定都市への出店やお客様の生活に巻き込まれていく実験店舗でもある。東京有明で先々考えているのは私どもが自治体などと協定を結んで様々な取組をしている房総エリアと有明に住まわれている人がつながりをもち、お互いが交流を楽しめる架け橋になれる役割を具体化していきたい」と語る。

【写真】住空間に特化した関東最大店の「無印良品 東京有明」(2階)

すでに良品計画では自治体だけでなく地域の顧客や商店街、生産者、学校などともつながりをもち、無印良品がコミュニティ・まちづくりに巻き込まれる形で地域活性化を進めている。金井会長も「単に無印良品の店を出すのでなく、地域の生活者や生産者などと一緒になって考え、地域社会の課題解決にあたるなどで地域コミュニティの再生に取組み、地域に役立つ存在になっていく」と、地域とのつながりを重視している。

地域と連携した移動販売やイベント開催

良品計画が地域活性で連携協定を結んでいるのは千葉県鴨川市、千葉県いすみ市、新潟県十日町、新潟県上越市、福島県浪江町、山形県酒田市など。千葉県鴨川市とは2014年から同市内釜沼北集落において鴨川里山トラスト活動を開始。17年には同市と地域活性化に関する協定がむすばれ、同市が嶺岡山の麓に設けている総合交流ターミナル「みんなみの里」の指定管理者となり良品計画が運営している。良品計画が運営している「里のMUJIみんなみの里」は無印良品、鴨川の里山・里海の幸を生かしたメニューを提供するCafé&Meal MUJI、鴨川の新たな地域銘品を開発・紹介する「開発工房」などでなる。鴨川・釜沼北集落の棚田での田植え・稲刈りなどのイベントを開催するなどして都市と農村との交流づくりも進めている。これに加え、鴨川市と協定する前から同市大山地区で生産された長狭米コシヒカリ100%米で醸造した日本酒(亀田酒造の日本酒・純米無濾過原酒)の販売も続けている。

良品計画と千葉県いすみ市・夷隅東部漁業協同組合・株式会社SOTOBO ISUMI(市と漁業組合で設立した地域商社)との連携協定が20年10月に合意に達し地域活性化事業が始まる。いすみ市が活用する総務省の地域活性化プログラム・地域おこし企業人事制度に良品計画がスタッフを派遣して現地で地域活性化事業を推進する。その取組み内容は、地域漁港で水揚げされた水産物の販路拡大、地域特産品の知名度向上、地域商店街の活性化を含む施設及び空間の有効活用など。まず最初にSOTOBO ISUMIと連携して無印良品ネットストア「諸国良品」でいすみ市の水産物販売を開始する。

直江津の中山間地を回る移動販売

2020年1月、上越市及びバス会社の頸城自動車と良品計画の三者で地域活性化に向けた包括連携に関する協定がむすばれ、同年7月に国内最大級の無印店舗「無印良品 直江津」がオープンしているが、合わせて店舗外事業も昨秋からスタートした。それが連携している頸城自動車所有のバスを活用した移動販売。店舗に足を運びづらい中山間地など直江津地区の旧町村部の13区に住まわれるエリアにバスが出向き、会話をしながら無印良品のレトルトカレーといった食品から化粧水、タオル、肌着などの日用品を中心に販売している。

良品計画社員による「軽トラックでの移動販売」

移動販売は酒田エリアでも始まっている。酒田市と良品計画は19年7月のパートナーシップ協定によって両者による酒田プロジェクトが本格的に立ち上がった。その第1弾として良品計画社員による軽トラックでの移動販売が20年6月から開始。レトルトカレー、化粧品、洗面用品、文房具、調理用品、清掃用品など無印良品で販売する日用品を軽トラックに積み込み、中山間地域を含む八幡地域を回る。軽トラックなので細い道にも入っていける。都市部と違い、近くにスーパーマーケットやコンビニがなく、ちょっとした買い物にも手間がかかる地域なだけにトラックから流れる音楽に気づき近隣に住む人たちが訪れる。

移動販売に続き空洞化が進む中心市街地にある商店街の一角(酒田市中町)に今年2月から「無印良品ポップアップストア」をオープンした。人気のレトルトカレーや清掃用品、天然素材を使用したインナーウェアなど、毎日の生活を支えるくらしの基本アイテムを中心に取り揃えている。

新潟県十日町とは20年9月に協定を結んでいる。提携の内容は、大地の芸術祭、観光・産業振興、まちづくり・地域振興に関する活性化に寄与すること。十日町市は2000年から3年に1度開催される「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」が世界最大級の野外アート展として知られ、国内外から50万人を超える集客がある。良品計画は同市が活用する地域おこし企業人制度に社員を派遣し大地の芸術祭の活性化に取組む。移動販売バスを活用した出張販売の実証実験も予定している。

初となる道の駅への出店

福島県双葉郡浪江町とは道の駅を中心に地域振興・復興促進、地域産品の販路拡大などで協定をむすび、東日本大震災による原発事故などで甚大な被害を受けた浪江町の復興のシンボルとして本年3月グランドオープンする「道の駅なみえ」へ無印良品の出店を決めた。無印良品が道の駅に出店するのは初めて。開業する無印良品店舗は官民協働により住民主体のまちづくりにあたる一般社団法人まちづくりなみえに運営を委託するライセンスドストア。売場面積は約160㎡。同道の駅にはフードテラス、産地直売所、ベーカリー、郷土料理研修室などができる。良品計画は浪江町が地域おこしに活用する企業人事制度にスタッフを派遣する計画。

地域とつながる活動は廃校跡地の再生、商店街の活性化、団地コミュニティ再生などでも活動が進んでいる。廃校跡地の再生であれば、2013年に閉校した千葉県大多喜町の旧老川小学校を拠点に活動が始まり、施設内にコワーキングスペースと菓子製造業の営業許可が取得可能な「菓子シェア工房老川」が開設され、食を通じた場づくりとなる「みんなの食堂」が定期開催されるなど、地域住民とのコミュニティづくりが進んでいる。また、千葉県南房総市の旧長尾幼稚園・小学校の跡地であるシラハマ校舎の旧校庭部分を菜園付き小屋として区画し、そこに建てた「無印良品の小屋」を販売。山形県酒田市日向地区にある廃校を活用した「日向コミュニティセンター」には無印良品がコンセプト及びデザイン監修したコミュニティカフェ「日向カフェ」をオープンしている。

商店街の活性化に向けては、板橋区の光が丘パークタウン内にあるゆりの木商店街の一角に「MUJIcom光が丘ゆりの木商店街」をオープン。店内には買い物の途中に一休みできるシェアハウススペースや無料で利用できるシェアキッチンなどを設け、団地コミュニティ再生に取り組んでいる。光が丘パークタウンとの取組はさらに広がりをみせ、良品計画の販売部、人事総務部、MUJI HOUSEなどの関連部署と、同団地を管理するUR都市機構が連携して新プロジェクトがスタートを切り、無印良品の店舗に勤務するスタッフ2名が団地に住み、団地住民の視点で自治会や商店会、MUJIcom光が丘ゆりの木商店街のイベントなどに参加し、団地住まいの人と交流しながら団地暮らしの魅力を伝えている。

産学共創活動では武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパスに無印良品初となる産学共創店舗「MUJIcom 武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパス」を開設している。ここでは無印良品の日用品や食品を販売するだけでなく、学食となるカフェスペースでデリや日替わり弁当、サンドイッチを販売。子供から大人まで集えるcom StudioやOpenMarketなども設けられている。

個店経営の集団でなる無印良品は地域とつながりながら地方都市でも存在感を高めていく気配だ。