2025年05月03日

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東京のフードシーンを盛り上げる4店舗が集結  玉川高島屋S・Cフードコートがオープン

伸びやかでボールドな形状の長いカウンターは、空間内の象徴的な存在

玉川高島屋S・Cは4月29日、二子玉川駅方面と二子玉川商店街をつなぐ西館ストリートをリニューアルし、フードコート「P.」をオープンした。歩道を一部拡張し、植栽を一新。オープンキッチンを中心に、東京のフードシーンを盛り上げる国際色豊かな4つの飲食店がコーヒーにペイストリー、ランチ、ピザ、カレー、ハンバーガー、ビールやワインと朝から夜まで楽しめる場を提供する。1人でも仲間でも立ち寄れ、ベンチシートにテーブル席、カウンターと様々に用意されている。通りに面しては一面がガラス張りで開放的。拡張された歩道にはベンチが配され、公園のように居心地の良い空間を生み出している。テイクアウトして多摩川沿いへ足を伸ばす需要も見込む。

店内の長いカウンターの意匠も重ね合わせた「P.」のデザインとともに、DDAAの元木大輔さん

ランドスケープとインテリアデザインを担当したのはDDAAの元木大輔さんだ。「ここは、もともと駐車場だったこともあり、パブリック、パーク、ピープル、プレイと、あらゆる意味を内包させ『P』という名称を採用した」。「セットバックし、歩道を広く確保した」こと、「店内の床と通りは同じ石畳にした」こと、「一枚岩を切り出し、植栽に配置して座れるようにしたベンチ」が公園のような居心地の良さを生み出している。歩道は駅前まで続いており、一帯に新たな賑わいを創り出す。

歩道に配置された植栽を生かしたベンチ。一枚岩を切り出した石に座って休憩できる

大理石の天板のテーブルが並ぶコーナー。壁面のポスターがアクセントになっている

フードコート内は「セットバックにより取り壊した大理石をテーブルの天板に採用」している。インテリアのクオリティも百貨店ならでは。トチノキの一枚板の長いテーブルもあり、贅沢なしつらえだ。天井の剥き出しになった配管やコンクリートの壁、テーマカラーのオレンジ色がモダンな印象を与えつつも、木の椅子が並び温かな雰囲気。中央にはシームレスなオープンキッチンがレイアウトされ、各店舗のスタッフが境目なく動き回る様子はひとつの店舗のようで、躍動感があふれ眺めているだけでも楽しい。

トチノキの一枚板のカウンター席。椅子もコーナーごとにデザインが異なる

マックス・ハウゼガさん(左)とスタッフのLANさん(右)

飲食ディレクションを担当した「Terrain」のマックス・ハウゼガさんは「このオープンキッチンは出店している店舗がつながりやすく、一体感が生まれる」と話す。マックスさんは出店している「ミニマッシーフ」のオーナーでもあり、「うちのスタッフにはベーカーがいて、バンズなど他の店舗へのメニュー提供も可能。コラボレーションするアイデアは尽きない」。「アディカリー」のスタッフは「『ピザスライス』さんとうちのカレーでコラボメニューを作ってみたり、『ミッケラーバーガー』さんのビールとうちのチャイで新たなドリンクを作ってみたり、やってみたいことがたくさんある」という。ミニマッシーフのLANさんは「周辺の二子玉川商店街の方々ともイベントを共催したり、このエリアを一緒に盛り上げていけることも企画中」と語る。「神田の店舗をクローズし、心機一転、この店を始めるが、とても楽しみ」とミッケラーバーガーのシールズ・ハミルトンさんはいう。

アディカリ・カンチャンさんはスパイス使いの魔術師

「P.friends」の名称のもと、オープン前からキッチンをシェアし交流を重ねてきた4店舗だが、いずれも個性豊かで洗練された料理が揃う。アディカリーは中目黒のモダンネパール料理レストランで、シェフのアディカリ・カンチャンさんが作るカレーは、ポップアップで好評を得ており、待望の出店。毎日20kgの玉ねぎを炒めることからはじまり、7~8種類のカレーを提供する。ダル、ラッサム、タルカリ、アルブジヤ、トマトアチャール、パパド、バスマティライスが一皿に盛られ、混ぜながら味わうと口の中でスパイスが調和し合い絶品。アルコールやソーダで割るオリジナルのチャイベースもスパイスが香り、エレガントな余韻が楽しめる。

ミニマッシーフのメニューの一例。マッシーフで人気の麻婆煮込みのラム肉がのったフラッドブレッドもメニューに並ぶ

約50年の歴史を持つ「大橋会館」をリノベし話題になった池尻大橋の人気店マッシーフは、ミニマッシーフとして登場。朝はコーヒーにペストリー、昼はスパイスを効かせたエスニックなトマトスープやヌードル、夜はワインとメイン料理や小皿料理を揃え、店名になっている光の加減でいろいろな表情を見せる「マッシーフ=山塊」を料理で体現させてくれる。

気さくなミッケラーバーガーのシールズ・ハミルトンさん

デンマーク発のブルワリー、ミッケラーのビールや日本のゲストブルワリーのビールが開店から楽しめるのがミッケラーバーガー。名物は余分な脂を削ぎ落とした赤身の旨みが詰まった和牛100%のハンバーガー。カリカリに焼いたパテはビールとも相性抜群。チーズ、ベジ、マッシュルーム、ベーコンチーズがあり、本場のアメリカンハンバーガーが食べられる。

店頭で焼いたピザはショーケースに並ぶ。オーダー後に温め直し熱々のピザを提供するピザスライスのスタッフ

直径50センチにも及ぶほどの大きなピザをカットして提供するニューヨークスタイルで人気のピザスライスは、チーズ、ペパロニ、イタリアンソーセージなど8種類をラインナップ。1枚でもボリュームがあり、食事としても満足感がある。マルゲリータはカリッとした食感が楽しめるよう特別な生地で焼かれている。フレンチフライやチキンナゲットなどのサイドメニューもある。

(北野智子)