2025年07月22日

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猛暑を乗り切る 趣向を凝らした各社の夏のスイーツ企画

「keio スイーツ博覧会」会場入口では、老若男女が次々とお菓子缶を手に取っていた

冷たいスイーツの需要が高まる夏、百貨店各社は独自性のある企画を打ち出している。京王百貨店は「keio スイーツ博覧会」を初開催し、高島屋横浜店はかんきつ類グルメが登場する「シトラスパレード」を実施。阪急うめだ本店は、人気のかき氷フェアやスイーツの冷凍宅配サービスを展開し、他社とは一線を画す特別なスイーツを提供している。

日本百貨店協会の発表によると、4~5月の全国百貨店売上高は前年高伸長したインバウンドの反動の影響が大きく、軒並み低調に推移した。しかし主要5品目のうち主要4品目がマイナスだったのに対し、食品だけは菓子や催事が好調で、前年を上回った。物価高などで財布の紐が固くなる中でも、スイーツは「ちょっとしたぜいたく」として好まれやすい。さらに猛暑も重なるため、百貨店各社は好機とにらむ。

京王新宿店、初開催の「博覧会」が盛況

今年初開催となるのが京王百貨店新宿店の「keio スイーツ博覧会」だ。7月23日までの開催で、初日の10日は開店早々多くの人だかりができ、食品・レストラン部催事担当課長の星野也氏は「想定以上の来場者を迎えた」と笑顔で語る。「売上げは1週間経過した時点で目標比プラス22%」と、バイヤーの佐藤雅一氏も手応えをつかんだ。

実演販売する店舗が多く、思い思いのスイーツを求めて会場をめぐる人でにぎわう

初開催の理由は、「物産展や催事を実施していく中で、スイーツに対する反応が好調に推移しており、幅広い顧客年代層から反応を得ていた。当店はもともとシニア層に強いとされてきたが、新宿を取り巻く環境が変化し、商況の変化に合わせ新客獲得強化を図るため、幅広い年齢層に支持される新しい催事として企画、実施につながった」(佐藤氏)。

会場は中元会場に隣接する7階の催事場。「2週間の期間の前半は中元の駆込み需要層に合わせ、後半は子供から大人まで楽しめる施策を盛り込んだ『京王夏祭り 2025』も開催されるため、ファミリー層に訴求する」(星野氏)と、同時開催の催事の相乗効果を狙う。

「赤福おかげ横丁」のイートインコーナーは、年齢層が高い人にも好評だった

出店は「和栗専門 紗織」のモンブランソフトや「三ツ間農園」のゴロっといちごミルクといったひんやりスイーツから「Café The SUN LIVES HERE」のCHILK(チーズケーキ)、「NUTS FACTORY」のキャラメルナッツ、「銀座ベーカリー」のカステラビスケット、「KAIDO books & coffee」の生スコーンなどの洋菓子系、「まるもち家」のまるもち、「京都三条幸福屋」の京たいやきなどの和菓子系までバラエティー豊か。初登場16店を含む27店で構成され、実演販売も行い、イートインスペースも用意。三重の「赤福」のイートイン業態「赤福おかげ横丁」は16日までの展開で全国初出店した。

不二家の新ブランド「ペコちゃんのmilkyマフィン」が初展開。ペコちゃん人形で遊ぶ子供の姿も見られた

お菓子缶研究家の中田ぷぅ氏が監修した「keio缶フェス」コーナーも好調で、「ターゲット層としていた若い年代層が多く見られ、平日の夕方や土日は混雑した」(佐藤氏)。30ブランド約60種類のお菓子缶が会場入口に並ぶ様は壮観で、11日には中田氏が来場。「ポーラ美術館のお菓子缶など、当社だけでは扱えなかったアイテムが揃っており、これもコラボの賜物」(星野氏)。1人でいくつもの缶を手にする人が多く、人気の高さが伺えた。「新たな顧客獲得は、トレンド感のあるスイーツ展開がSNSでのバズリにもつながり、イベントに勢いが出ると感じた」(佐藤氏)。

高島屋横浜店、かんきつ類のイベントでリピーター生む

6月18日から7月1日まで「シトラスパレード」というレモンやオレンジ、グレープフルーツなどのかんきつ類グルメが登場するイベントを開催したのは髙島屋横浜店だ。和菓子売場だけでなく、惣菜売場、喫茶、レストランも含め、横断で展開。昨年が初開催で、今回が2回目となる。

企画担当者は「酷暑の中、来店動機の創出が課題と考えており、関心の高いグルメを軸に目で見ても食べても涼を感じてもらえるよう立案した。今回は当店限定品を強化した。惣菜から洋菓子、喫茶まで横断して実施できるテーマは珍しく、店舗全体としての盛り上がりにつなげている」と語る。

「ユーハイム」のやわらか杏仁&レモンゼリーは高島屋横浜店限定で登場した

告知で打ち出した商品に加え、清涼感や透明感など涼しさが見た目から伝わりやすい洋菓子が好調に推移。リピーターも見られ、結果的に「複数回の来店につながる取り組みとなった」(企画担当者)。期間中の食堂喫茶の売上げは、前年比約9%増だった。「折込みチラシやインスタグラム、Xでの告知にも手応えを感じた」(企画担当者)。

高島屋横浜店限定の「新宿高野」のシトラスパルフェ

同じく涼を感じられるイベントとして、7月23日からは昨年7月に復活開催した「フランスマルシェ」を開催する。フランスにまつわるグルメ、ファッション、雑貨などを集積したもので、スイーツに特化していないが、スイーツのイートインスペースを拡大。初登場店を増やし、アイスやクレープなど本場の味を提供する。物価高や酷暑に対応するイベントとして好評を得そうだ。

阪神うめだ、人気のかき氷フェアを今年も開催

阪神うめだ本店は7月30日から8月6日まで、「HANSHIN『イチオシ』かき氷2025」を開催する。ここ数年人気を博している催事で、全国のかき氷が満載のガイド本「かきごおりすと」の著者、日本かき氷協会代表の小池隆介氏イチオシの15店が集結する。

「見ても食べても楽しいかき氷に注目してほしい」という西山氏の言葉どおりのかき氷が揃う

今回は「まるごと」をテーマに、素材の味をまるごと封じ込めたかき氷を集めた。ケーキのような見た目、おかず系など、個性豊かなラインナップとなっている。「例年、若い世代を中心にファミリーまで、幅広い層に楽しんでもらっている。1人で何杯も召し上がる方や、期間中に何度も足を運んでくださる“ゴーラー”と呼ばれる方々が多い印象」と、阪神本OM販売推進部催事営業部アシスタントマネージャーの西山桃代氏は言う。混雑の状況により整理券を配布する場合もあり、「見ても食べても楽しいかき氷に注目してほしい」(西山氏)とのことだ。

阪急阪神百貨店では、冷凍宅配スイーツ「CAKE LINK」を展開しており、個食やデイリー需要の高まりを受け、個食タイプのアイスデザートを拡充している。これまで冷凍ホールケーキの展開を中心に、記念日需要を獲得してきたが、6月1日より個食タイプのアイスデザートのラインナップを5ブランド、5アイテムの新商品を加え、計8ブランド8アイテムに拡大した。

口に入れたとたん、ひんやりと芋の甘みが広がる「オオサカポテト夢ミルクジェラート」。7月1日から200セット限定で販売している

新商品の1つは、「当社ギフトカタログ掲載アイテムで、関西の方が他地域の方々にも勧められるよう、地元食材のアイス開発を行った。使用するサツマイモは大阪の八尾市産『夢シルク』で、上品な甘みと絹のようにとろける滑らかな舌触りが特徴。その特徴を生かす4種類のフレーバーを揃えた」と、新規サービス事業部スイーツSPA事業部マネージャーの古賀夕梨乃氏が誕生の経緯を語る。「予想以上の注文があり、秋にも新商品を検討している」という。デパ地下グルメを自宅に取り寄せ、涼しい自宅に居ながらにしてスイーツを楽しむ施策も、今後、十分に伸びしろがありそうだ。

(北野智子・都築いづみ)