JFR&KOMEHYO PARTNERS、ブランド品買取専門店を松坂屋名古屋店と大丸東京店にオープン
査定中は店内ラウンジで待つか館内で買い物をして過ごすこともできる
J.フロント リテイリングとコメ兵の合弁会社であるJFR&KOMEHYO PARTNERSは、ブランド品の買取専門店「MEGRUS(めぐらす)」の1号店を8月5日に松坂屋名古屋店、2号店を8日に大丸東京店にオープンした。同社は25年に7店舗、今後4年で23店舗を大丸松坂屋各店やパルコに出店する計画。30年までに総額売上げ80~90億円を目指す。
MEGRUSはブランド品などを買い取り、コメ兵へ卸売りする。「良品を数多く所有する層だと推測しており、百貨店の顧客、特に富裕層をメインに展開する」と同社社長の下垣徳尊氏は事業方針を語る。オープン前にはセグメントし、ダイレクトメールの活用と併せ、何度も百貨店の外商員に説明会を開き、顧客にアプローチを促している。店舗を訪れなくても外商員とMEGRUSの鑑定士が直接訪問し、買い取る体制も整える。「これまで築いてきた関係性、信頼性がある外商員には安心感を抱いてもらえる」(下垣氏)とのもくろみがある。
店舗により買取品目が異なる場合があるが、対象は主に貴金属や宝飾品、アパレルが中心
商品を販売する百貨店とその商品を買い取る店舗が共存できるのか。「新規事業を意思決定するプロセスで百貨店の社長も参加し、検討状況を共有しており、スムーズに協力体制が整ったため、当初から百貨店からは良好な状態で受け入れられた」(下垣氏)。
買取代金は現金でも受け取れるが、大丸松坂屋商品券の場合は買取金額2万円ごとに500円分をプレゼントする。あるいは買取金額に応じて大丸松坂屋が手掛けるファッションサブスクリプション「アナザーアドレス」などの体験を提供するといった特典も百貨店に支持された。「出店条件も既存事業者の条件を最低保証とし、当社が買い取るほど還元できるような賃料設計にしている」(下垣氏)こともポジティブに受け取られた要因だ。
5日にオープンした松坂屋名古屋店の状況は、初日で100万円ほど、2日目は 140万円、3日日は約 1000万円の実績を上げた。早い時点で好評に推移しているが、実はフリーの顧客によるもの。富裕層の顧客への案内が3日目くらいから行き亘った状況のため、下垣氏は今後に単価が上がることに期待を寄せている。大丸東京店に関しては、1日7~8人を迎え、20万円前後の単価を見込む。
同社は事業展開に先駆け、昨年に大丸神戸店で実証実験を行っている。「大丸松坂屋を代表する店舗であり、顧客も多く、既存のリユース事業者も入居していることから、ある程度の素地があった。外商員を動員して告知をした上での動向を検証し、3カ月で 約6000万円の買い取り実績を上げた」(下垣氏)。この結果から店舗のグレード感や客層などを分析し、事業結果を算出して店舗展開を決定している。
各店舗の鑑定士は研修フローを踏み、買取りには全店舗統一のクオリティーが保たれている
出店計画については、見込みある店舗をなるべく早くオープしていきたいため、外商売上げが全国ナンバー1の松坂屋名古屋店を1号店、首都圏のマーケティングとニュース性を備えた大丸東京店を2号店とした。特に松坂屋名古屋店は、早い段階で10億円を目指したい意向だ。今年は大丸札幌店、名古屋パルコ、大丸芦屋店、大丸福岡天神店への出店が決まっている。来年までに23店舗のほとんどをオープンし、3年目からは数店舗となる見込みだ。
松坂屋名古屋店と名古屋パルコは隣接する。「顧客が多少被る可能性はあるが、全て被ることはないと推測している。百貨店は富裕層中心の顧客基盤であり、商業施設の顧客とは違なる属性のため、棲み分けもしっかりできると考えている」(下垣氏)。
持続可能な社会の実現を目指す取り組みを行う団体を店内で紹介しており、買取が成立すると1件投票できる。1件につき88円の寄付・協賛をMEGRUSが行う
富裕層をメイン顧客と捉えるが、百貨店業界では若年富裕層の獲得が課題になっている。「グループの百貨店でも高齢の方々が多いが、20~40代の売上げが3~4割ほどに広がってきていると聞く。その世代に響くコンテンツやクローズのECサイトなどを実装しながら開拓しているため、当社も追従したい」(下垣氏)。大松松坂屋は外商の申し込みがインターネットで可能で、他社に比べてハードルは低い。若年富裕層が申し込みの75%を占めるまでになった。MEGRUSも若年富裕層の開拓に役立てる。
社長の下垣徳尊氏。コメ兵の小川翔太郎氏が副社長兼営業本部長に就任し、二人三脚で経営する
今後に向けては「当社が出店することで百貨店にも恩恵があるよう一緒に施策を打ち出していきたい。ハウスカード会員やアプリ会員にはしっかりとインセンティブを用意しつつ、フリー客への訴求も積極化する。友の会との連携強化も視野に入れる」と下垣氏は意欲を見せる。買取時に希望者にプレゼントする商品券は大丸松坂屋でしか使えないため、店内での買い回りも増やせる。MEGRUSは百貨店とウィンウィンの関係を構築し、成長力を育む。