2026年01月01日

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日本から新たな美の文化を創造

資生堂 社長CEO 藤原 憲太郎

昨年、日本経済は国内外の様々な課題に直面しました。中でも世界的に拡大した関税の影響は、日本国内の物価上昇や株価の変動など多方面に及び、先行き不透明な状況が続きました。

一方、20年ぶりに国内で開催された大阪・関西万博は、多くの国と地域、政府機関などの組織や企業が協力し合い、先端技術をはじめとする新たなアイデアを創造する場として盛り上がり、持続可能で明るい未来社会を生み出す原動力となりました。

当社は昨年、2030年に向けた「2030 中期経営戦略」を策定しました。24年、レジリエントな事業構造の構築を目的として掲げた「アクションプラン 2025-2026」では、注力ブランドへの選択と集中、グローバルでの構造改革を行い、より強固な収益基盤の構築に取り組んできました。

「2030 中期経営戦略」は、これまで進めてきた改革を経て、ブランド価値最大化による新たな成長を実現することにより、新しい美の価値を創造し、生活者に寄り添う企業として社会に貢献します。

常に社会が変化する中で、生活者は不安や課題を抱え、日々の生活における人とのつながりや共感、心の豊かさなどを求める傾向にあります。資生堂が常に人と向き合い、新しい価値を発見し、革新的な創造を続けるため、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」の下、30年に実現するビジョンを「ひととの繋がりの中で新しい美を探求・創造・共有し、一人ひとりの人生を豊かにする」と設定しました。

私たちは、このビジョンを体現する「一瞬も 一生も 美しく」のスローガンとともに、新しく美しい価値を創造することを約束します。

「2030 中期経営戦略」の実現に向けては、資生堂グループの中核を成す日本事業の成長加速が不可欠です。グローバルにおいて価値創造をリードする存在となるべく、日本事業の新ビジョンとして「日本から、資生堂から、新しい美の文化をつくり出す」を掲げます。

多様化する生活者ニーズや市場を的確に捉え、強い存在感を発揮できるブランドの育成に注力するとともに、次なる成長ブランドや新領域へ投資することで、市場を上回る成長実現を目指します。

また、全社員が「生活者・お客さま起点」の活動に集中し、魅力的なブランドづくりや新たな価値開発によってお客様を魅了し続け、店頭ならではの体験価値向上、得意先のファン拡大に貢献してまいります。


“不易流行”で成長と挑戦を加速

資生堂ジャパン 社長 中田 幸治

2025年の国内の化粧品市場を振り返りますと、ローカル市場を中心に安定成長しつつも、価格帯の二極化が一層加速しました。単なる価格志向ではなく、価値を見極める傾向が高まっており、化粧品によって高価格帯と低価格帯を使い分ける生活者も増加。SNSをはじめとする情報発信および収集の拡大、体験活動の活発化など、生活者が得られる情報や体験は多様化が進み、トレンドや市場環境の変化も一段と早さを増した1年でした。

このように生活者を取り巻く環境が日々変化する時代において、当社は持続的な成長を実現していくという強い信念の下、新たなカテゴリーの創造、そして幅広く生活者から支持される商品の開発に注力してまいりました。

「クレ・ド・ポー ボーテ」や「エリクシール」などグローバル・コアブランドでは続々とヒット商品が誕生。そして「ベネフィーク」では「ホットクレンジングジェル」が新たなお客様との出会いにつながるなど、成長のフックとして貢献した結果、国内ローカルのお客様から高い支持を獲得しました。日本事業全体では第3四半期累計で10%台前半の高い利益率を確保するまでに成長しています。

これは一過性のものではなく、事業基盤がしっかりと整ってきた証であり、国内の化粧品市場において当社のブランドが高いプレゼンスを発揮し、安定した成長を遂げることで、日本事業が資生堂グループ全体をけん引した1年となりました。

本年の大きな方向性としては、30年に向けて“攻めの成長戦略”へと舵を切ってまいります。その上で私達が目指す30年に向けたビジョンでは「日本から、資生堂から、新しい美の文化をつくり出す」を掲げ、日本中を資生堂のファンで埋め尽くすことを目指します。

これから日本は少子高齢化による人口減少が進むことは間違いありません。しかしながら「化粧人口」という観点で考えると、生活者ニーズが多様化する中、アクティブな高齢者の増加、メンズ美容の拡大、スキンケア及びメイクの若年齢化など、化粧人口はむしろ拡張していくと考えています。

今こそ資生堂が最も強みとする、生活者のインサイトを捉え、新しい価値やカテゴリーをつくり、話題化させる市場創造マーケティングで、生活者の“使ってみたい”というワクワク感を生み出していくことへ果敢に挑戦していきます。

まずは「コアブランド」を次の5年間の軸に据え、投資は絶対に緩めず、過去・現在へと続く研究開発から生まれてきた最新技術のシーズを、こうしたブランドに惜しみなく存分に搭載し、ひいてはよりブランドをシャープに尖らせ、資生堂だからこそ成し得る唯一無二のブランド価値の最大化を目指してまいります。30年に向けた成長を加速するという点で、26年はその一歩を踏み出す非常に大事な1年として捉えています。

単に新商品を発売するというだけでは、生活者から支持を得ることは叶いません。私達は30年に向けたビジョンを「人との繋がりの中で新しい美を探求・創造・共有し、一人ひとりの人生を豊かにする」としました。これこそが我々独自の強みであり、私達のミッション「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」の実現につながると信じています。

そこで、資生堂ではこのビジョンを体現するスローガンとして「一瞬も 一生も 美しく」を再び掲げました。今こそお客様の「一瞬も一生も美しくしたい」という本質的に変わらない願いを大事にしながら、最新の研究技術やデジタルなど、時代に合わせて新しいことにもしっかりと挑戦していくという変化を兼ね備えた、「不易流行(いつまでも変わらないものの中に新しい変化を取り入れること)」の思いで成長を加速させていきたいと思います。


化粧品核とした企業連合を始動

コーセーホールディングス 社長 小林 一俊

昨年は国内外において厳しい経済情勢に直面する局面もありましたが、おかげさまでコーセーは比較的順調な成績を上げることができました。

コーセーは今年から新しい体制で出発いたします。小林孝三郎が東京・王子の地に創業して80年になりますが、それ以来、初めての大きな経営体制の刷新を行います。具体的には「株式会社コーセーホールディングス」を発足させ、持株会社体制へと移行させました。3月の株主総会をもって、私はコーセーホールディングスの代表取締役会長グループCEOに就任する予定です。

コーセーはこの80年間で、企業規模もグループで働く人達も、また取引や企業活動に協力をいただいている皆様も拡大を続けてまいりました。そして何より、私達が提供する化粧品を愛し、使い続けて下さるお客様が世界中に広がりつつあります。さらなる飛躍に向け、真に信頼いただける企業を目指す上での戦略的経営判断の一環として、今回、持株会社体制への移行を決断したわけです。

私達は持株会社体制への移行を「ビューティコンソーシアム構想への第一歩」と位置付けましたが、コーセーの場合はグループ企業が増えても、その全てが祖業である「化粧品」を核としていることが大きな特徴です。多彩な個性を持つブランド群を、幅広い販路を通じてお客様に届けられることも強みです。グループ内での棲み分けによって、それぞれのブランドの特長をより明確化し、そのブランドならではの提供価値をさらに磨いてまいります。

コーセーは創業以来、製・販・需の共存共栄、つまり我々メーカー、販売してくれる皆様、ものづくりを支えてくれるサプライヤーの皆様とパートナーとして共に歩み、成長を分かち合える関係づくりに力を注いでまいりました。創業時から大切にしているこの考え方を、より幅広い対象にまで拡大し、あらゆるステークホルダーと互いに高め合う関係性を、これからも一つ一つ積み重ねてまいる所存です。そしてその蓄積から得た経験や強みをグループ経営に生かし、皆様からの期待に応えられる、日本を代表する美容企業集団「ビューティコンソーシアム」を目指してまいります。

2026年、新たな決意と体制の下、多様なお客様のニーズに応えるべく、より高い付加価値の提供に向けて、全力で取り組んでまいります。


70周年は原点回帰と継承、革新を

アルビオン 社長 小林 章一

3月2日にアルビオンは創立70周年を迎えます。“世界一の高級化粧品メーカーをつくる”という大きな夢を抱き誕生した小さな会社が、こうして長い軌跡を刻んでこられたのは、ひとえに皆様のお力添えによるものと重ねてお礼申し上げます。これからも「初めに夢ありき」の信念と情熱によって、新たなる未来を切り拓いてまいりたいと思います。

この輝かしい節目を迎える今だからこそ、これまでの歩みを深く見詰め、原点に立ち返ることから今年度をスタートしたいと思っております。10年後、20年後、100周年を迎えるその時に、アルビオンがアルビオンらしく在り続けるためには何をすべきか、どうあるべきか、全メンバーが同じ気持ちで一丸となって考えていかなければならないと思っております。

まず、我々の独自性「アルビオンらしさ」の継承と革新が必要です。唯一無二のものづくり、私達ならではの接客、“アルビオンにしかできない”“アルビオンだからできる”商品づくり、教育の在り方に、さらなる磨きをかけてまいります。

特に前者においては、圧倒的な効果と個性を放ち、一瞬にしてお客様の肌も心も奪ってしまうほど独創的で効果的な商品を生み出したい――。お客様にも取引先にも心から喜んでいただける商品、突き抜けた商品づくりに、挑んでいきたいと思います。

後者にも一層注力し、店頭での美容活動に生かしてまいります。お客様としっかり対面し、寄り添うことを通じて、確かな信頼関係を築き、一店一店の貢献にもつなげてまいります。強みをより強固にすることによって「アルビオンらしさ」の進化を目指します。

さらに、昨年始動したデジタル戦略も、今年度に本格稼働します。アルビオンIDの導入、ロイヤルティプログラム、店頭機器のアップデート、そして4月のオンラインストアと、多岐に亘って進めてまいります。

これまで何度も申してまいりましたが、このデジタル戦略の目的は“ブランドの認知拡大”と“理解の深化”です。まだ出会えていないお客様にアルビオンの魅力を届けると同時に、すでに出会えているお客様との絆をより一層深めることが狙いです。時代や取り巻く環境がいかに変化しようとも、専門店の皆様と共に歩み共に発展していくために、全社を挙げて挑戦したいと思います。お客様・取引先の想いや期待に応えられるよう、私達らしくデジタル戦略を進めてまいります。

原点回帰、そして継承と革新と。アルビオンの本質を今一度見詰め、新たなるアルビオンらしさを築き上げるために、精一杯取り組んでまいります。


100周年に向け改革を着実に実行

オンワードHD 社長 保元 道宣

昨年、世界が様々な変化や困難に直面する中、私達オンワードグループは「世界に、愛を着せる。」というコーポレートメッセージを掲げ、ファッション領域をはじめとする多様な事業を通じて、世界の人々の心をつなげるべく、挑戦を続けてまいりました。

その結果、皆様の多大なるご支援もあり、ブランド価値の向上や顧客基盤の拡大といった成果を着実に積み重ねることができましたことに、心より感謝を申し上げます。

2026年は「丙午(ひのえうま)」の年にあたり、「情熱と躍動が未来を切り拓く年」とされています。オンワードグループといたしましては、来年に控える創業100周年に向けて、これまで築いてきた歴史と伝統を大切にしながら、新しい時代にふさわしい改革を着実に実行することにより、さらなる成長と進化を目指してまいります。


460周年、世界に睡眠ソルーション

西川 西川 八一行 会長CEO

西川は2026年、創業460周年を迎えます。睡眠科学とテクノロジーで社会課題の解決に貢献する「睡眠ソルーション」企業への変革を推進し、「寝具の西川」から「世界中のみなさまへ睡眠ソルーションを提供できるnishikawa」に進化していこうとしています。

450周年以降、この10年間で睡眠そのものの価値が高まり、消費者の関心も高まってきました。私達も一途に睡眠の大切さを訴求し続けてきました。従来のように寝具を卸すだけでなく、お客様一人一人に寄り添って睡眠に関する困り事を解決していく睡眠ソルーション企業への変革を進めてきました。

その1つの終着点が「ねむりの相談所」です。眠りのプロであるスリープマスターが、無料でお客様の相談に応じ、理想的な睡眠環境のための寝具はもちろん、寝室環境を考えた光や音、香りなど様々なサポートツールを提案しています。ねむりの相談所は全国で130カ所程度まで増えました。

24年10月にローンチした睡眠アプリ「goomo(グーモ)」も随時進化してきましたので、より使いやすくなり、ダウンロード数も10万程度まで増えてきました。これによって睡眠データの「見える化」も実現できました。

店舗環境も百貨店などの既存売場は、ねむりの相談所を併設するなど、総合的により良い眠りを提案できるSPA型ショップに順次改装してきました。これまで百貨店では館の集客力に依存していた部分が多かったのですが、(ショップ化によって)自ら情報発信やキャンペーンなどを通じて集客もできるようになってきました。店舗では「26節」に応じて様々な企画やイベントを実施し、その時期に最適な寝具を提案できるようなオペレーションが整備されつつあります。

私達の睡眠データ、デジタルやAIの活用などの「超デジタル」と、店頭でのハートフルな接客など「超アナログ」とのコンビネーションによって、ショップでは安定した売上げが確保できるようになりますし、専門店ではトラフィックが多い好立地でなくても目的買いを中心とした集客と安定した店舗運営が可能になります。

私達の睡眠データと百貨店のお客様の購買データを共有することができれば、その日のお客様の体調や気分に応じて高揚するような最適な商品やサービスを提案できるようになります。特に地方都市の百貨店には、10年程前から「ヘルスケアゾーン」の提案をしてきました。毎年受けている健康診断のように「睡眠診断」への生活者の意識が醸成されてくると、百貨店への新しい来店動機にもなります。

460周年を機に、10年後、その先の500周年のあるべき姿を見据えながら、お客様一人一人の「よく眠り、よく生きる」のために、睡眠ソルーションを提供し続けていきます。


社会的、経済的価値の両立目指す

キリンビール 社長 堀口 英樹

当社は昨年、「全員でお客様価値の創造にチャレンジ」という基本方針に立ち返り、「お客様価値の創造に向けたブランド育成」と「お酒の未来を創る両面のアクション」を戦略テーマの両輪として一貫した活動を行ってまいりました。

「お客様価値の創造に向けたブランド育成」では、当社のフラッグシップである「キリン一番搾り 生ビール」がお客様から引き続き高く支持いただく中、新しいワクワク感やビールの楽しさを届けるべく、4月に「キリン一番搾り ホワイトビール」を発売し、大変好評をいただきました。また、9月にはノンアルコールテイスト飲料の新ブランド「ラガーゼロ」、10月にはこだわりの素材と製法でつくったエールタイプの「キリングッドエール」など、今年は次々と新しいお客様への提案を届けました。

「みんなと共に、日本のビールの新たな100年を!」としたビジョンの下、取り組みを進めているクラフトビールについても、「スプリングバレーブルワリー」ブランドで昨年3月に発売以来初となる大規模なリブランディングを行っており、今後も「ビールを楽しくする」ブルワリーとしてお客様との多様な接点を創出してまいります。

「お酒の未来を創る両面のアクション」では、コミュニティへのアクションとして、人と人、人と社会をつなげる企業姿勢にひも付けたブランドアクションを実行し、お酒の持つポジティブな価値を感じていただくべく活動を進めました。

特に、一昨年発売した「キリンビール 晴れ風」では、多くのお客様に賛同いただいた「晴れ風ACTION」において、昨年は新たな取り組みとして資金不足などで中止となってしまった各地の花火大会の花火を大阪・関西万博に集め、夜空に華を咲かせる支援にもつなげることができました。

本年も様々な環境変化がますます加速する1年となることが想定されますが、当社は「お酒の未来を創造し、人と社会に、つながるよろこびを届け続ける会社となる」という在りたい姿の実現に向けてまい進していきます。

長期的には国内市場の縮小は避け難いものと考えますが、お酒のイノベーションを通じて、新たなお酒の楽しさや長くお酒と付き合ううれしさを創造していくことで、幅広いお客様に「つながるよろこび」をお届けしていけるよう、進化を遂げていく所存です。

国内市場において、本年は10月にビール類酒税一本化を迎えます。当社はビール・RTDの成長を最優先にしながら、エコノミーカテゴリーの下支えや、伸長するノンアルコールテイスト飲料の強化も含めて、多様なお客様ニーズに応えるべく強固なブランドポートフォリオを積極的なマーケティングによってさらに磨き上げます。

また、成長する海外事業においてはAPACを重点エリアとして、販売網のさらなる拡大やビール・RTD・洋酒での商品ラインナップの強化とともに、日本市場との連動を加速させたいと思います。

そして、社会課題として注目が高まっているアルコール関連問題(Alcohol-Related Problems)においては、「Drink for Future」をスローガンに掲げ、未来に向けた責任として、適正飲酒に関する啓発のさらなる拡大や大学との共同研究推進を通じて、節度ある飲酒文化の醸成を目指してまいります。

中長期を見据えて、社会的価値と経済的価値を両立し、持続的に事業発展すべく取り組んでまいります。


確実な成長軌道へ一丸でまい進

三陽商会 社長 大江 伸治

2026年2月期は25年4月に公表した中期経営計画の初年度に当たります。その今期も、2カ月を残すのみとなりました。

上半期は、春先の低気温やその後の急激な気温上昇と記録的な猛暑の長期化などイレギュラーな気象条件に見舞われました。加えて、内外の政治経済情勢の先行き不透明感や恒常的な物価上昇によって、消費マインドが低下。特に高額品市場が低迷し、主販路である百貨店の不振が続いた影響が大きく、期を通して売上げが前年を下回る基調で推移しました。

また、プロパー販売比率や粗利率などのKPI も悪化し、誠に遺憾ながら売上げ・利益双方が計画未達成に終わりました。これらの状況を鑑み、通期計画についても下方修正を余儀なくされました。

下半期に入って以降は、10月中旬まで高気温が続いたことで秋冬商戦の始動が遅れ、苦戦が続きましたが、後半以降気温の低下とともに秋冬物が一気に本格稼働し、11月は前年を大きく上回ることができました。12月に入ってやや市況が鈍化しましたが、残り2カ月で巻き返すべく、背水の陣で臨むことにより、修正計画の必達を期す所存であります。

一方、本年3月にスタートする27年2月期は、中期経営計画に掲げた方針に沿って、会社を確実に成長軌道に乗せるべく、オーガニックグロースによる既存事業の拡大に加え、新規事業や新ブランド開発、百貨店以外の販路拡大、アクイジションによる新商権確保、海外展開などにも積極的に取り組んでまいります。

新しい年を迎え、この1年引き続き気を引き締め、全社一丸となって目標達成にまい進する覚悟を新たにしています。


「価値を創り提供する会社」へ変化

川辺 社長 岡野 将之

昨年2025年、ストアーズ社様におかれましては創業70周年を迎えられましたこと、心よりお祝い申し上げます。今後も益々のご発展を祈念いたします。

さて、昨年は地政学の問題やトランプ関税、国内においては高市政権の発足と、様々な出来事が我々のビジネスにも影響を与えた年でした。26年も政治経済含め当社を取り巻く環境に影響を受ける事象があったとしても、自分達の目標に向かって進むべきのみという考えで活動してまいります。

新年度は当社の新中期3カ年経営計画のスタートの年になります。今期決算はこれからですが、前年度までの3年間において売上高はほぼ横ばいながら、現中期経営計画の目標であった「グループ連携強化によるコストの削減」に徹したこともあり、売上総利益は5.1ポイント改善できました。しかし、人件費、店舗家賃など固定費の高騰などで、営業利益は1.4ポイントの改善にとどまりました。

新中期経営計画では、この利益率改善が最大のテーマと考え、戦略策定を行ってまいります。これまでのグループ連携を生かしながらコストの削減、利益率の高いオリジナル商品の販売強化、それを販売につなげるデジタルマーケティング強化、そしてEC化率を高め、利益率の改善に努めたいと考えています。

これらは現中期経営計画の施策の中でも始めている部分もありますが、今後は特にオリジナル商品の販売強化と、それらの認知からファンの拡大、そしてブランド化までのプロセスをサポートするデジタルマーケティング強化をさらに進めたいと考えます。

これまでは、ハンカチやスカーフ、フレグランスをただ提供する「モノを売る会社」でした。これからはデジタルの力で商品のストーリーや価値、背景を伝え「価値を創り提供する会社」へと変化していきます。

またリアル店舗は、オンラインでは得られない価値を提供する場所へと変えていきたいと思います。体験や商品の確認、触って試せる場として、商品の魅力を五感で楽しめる場所へと変えます。そこに導くのもデジタルの力が必要と考え、デジタルの強化こそが未来を拓けるものと信じ、取り組んでまいります。

創業から100年以上が経ちましたが、歴史やこれまでの結果にとらわれていると変化を起こせない「成熟企業」になりがちです。創業者のつもりで、新たに会社をつくるんだという気持ちで、「第二創業成長企業」として新しいことにチャレンジしていきます。


成功体験の水平展開で成長加速

カネボウ化粧品 社長 内山 智子

2025年を振り返りますと、世界の化粧品市場は一定の成長を維持し、特にスキンケア、サンケア、ベースメイクが市場全体をけん引した1年でした。国内市場は体験型サービスの拡大や海外旅行客の増加に伴うインバウンド需要の高まりが奏功し、スキンケアとサンケアを中心に堅調に推移しました。

アジアに目を向けると、中国では緩やかに成長をしているものの、ECは販促競争の激化で好不調が安定しない状況が継続し、一方でASEANは小売り・ECの整備や暑熱環境起因のサンケア需要、SNS発需要が市場を押し上げ、2桁成長が続いています。欧米市場も堅調で、観光回復と自己表現需要によりフレグランスやメイクが伸長し、実店舗とオンラインを横断した購買行動の広がりが売上げを後押ししました。

このような事業環境の中、花王は中期経営計画「K27」の下、「グローバル・シャープトップ」戦略を掲げ、化粧品事業を成長ドライバーの1つとして位置付けています。その中核を担う存在として、グローバルでの成長を目指す6つのブランド、「SENSAI」「MOLTON BROWN」「KANEBO」「SOFINA」「Curél」「KATE」を中心に、経営資源を集中し、競争力を強化するとともに構造改革を進めることで、事業全体の成長と収益性の両立を加速させてまいりました。

具体的には、注力する6ブランドを「日本発型(Curél)」「欧州発型(SENSAI・MOLTON BROWN)」「アジア型(KANEBO・KATE・SOFINA)」という3つの海外展開モデルに整理し、地域特性に応じた“勝ち筋の型化”を進めてまいりました。25年は、この「型」を各ブランドの活動に落とし込み、実際の市場で成果が見え始めた1年でもありました。

こうしたグローバル注力6ブランドに加え、「TWANY」「LISSAGE」などをはじめとする高いロイヤルティを有するブランドは、スターアイテムの育成と店頭における体験価値の強化によって、ブランドの独自性をさらに高めるとともに、生涯顧客づくりを推進し、事業の屋台骨となる収益基盤の形成に取り組んでまいりました。

26年は「成長加速の年」と位置付け、25年に獲得した成功パターンを他エリア・他ブランドへ水平展開しながら、日本発の機能価値・欧州発ラグジュアリー価値・アジアでのローカライズを一段と深めていきます。

同時に、店頭カウンセリングとデジタルをつなぐOne IDやAI肌測定など、新たな顧客体験づくりにも挑戦し、継続購買とLTV向上につながる仕組みづくりを進めてまいります。

最後に、効率性が求められる環境の中にあっても、リアルな接点だからこそ生まれる温かな感情や納得感は何物にも代えがたい価値と考えております。販売店の皆様の店頭というかけがえのない体験の場を通じて、生活者の肌と感情に真っすぐ向き合い、ブランド価値を丁寧に届けていくことこそが、花王の化粧品事業に携わる者としての、そして1人の経営者としての変わらぬ使命と感じております。

これからも、皆様にとっての良きパートナーであり続けられるよう、生涯愛していただける商品を価値ある形でお客様にお届けする活動を、皆様と共に取り組んでまいります。

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