2024年12月10日

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生成AI、どう使う?百貨店の人に聞いてみた【後編】

昨今注目を集める、生成AI(人口知能)。とりわけ著名なのが対話型AI「ChatGPT」だろう。これからの時代、いかにChatGPTを使いこなすかがカギとなる——とまで巷では言われているが、「どのように業務に生かしたら良いのか?」「皆どれ程使っているのか?」と悩む人も少なくないのではないか。そこで、弊編集部で百貨店への匿名アンケートを実施。百貨店で働く人達のリアルな現状を聞いてみた。

調査方式は、全て会社名と個人名は匿名、部署と年齢のみ大まかに答えていただいた。全5社、各社1~3人に尋ねた。本人や周囲の使用状況などは前編にまとめており、後編では「今後百貨店で生成AIの使用は増えていくか?」という問いへの解答を記載していく。

問い合わせ対応の自動化、少し考える業務などに

まず、「今後生成AIの使用が増えるか?」という質問には全員が「増える」という見解を示した。iさん(営業企画、50代)は自身は今「ほとんど使っていない」としつつも、「使い方次第ということもあるが、使用の局面はイメージできるので確実に増えていくと思う」と予想する。

「どんなシーンで増えるか」という解答で多かったのは、「問い合わせへの解答の自動化」だ。bさん(情報システム、40代)は「利用は増加していくと考える。そのためには、社内情報との連携は必須。業務効率化がさらに進んでいくことに加え、問い合わせの自動化(社内・顧客)やパーソナルアシスタントまで広がるのではないか」と答えた。

hさん(業務改革部、40代)は「今後利用は増えていく。特に電話対応窓口などは、一時前さばきとして利用可能であると感じる」との考えを示した。eさん(情報システム、50代)も「百貨店はお取引先雇用のショップ販売員や業務委託、短期雇用が多いので『社内Q&A』に活用できると思う。そのほか、お客様向けのインフォメーションやオンラインサイトのお問い合わせ対応など、人員不足を補うために利用が進むと思う」と述べる。

dさん(情報システム、20代)は「例えば取引先との契約などのやり取りや、後方業務での問い合わせ一次回答など、至るところで活用の可能性はあると思う。生成AIを活用することで属人化が防げたり、業務効率を上げたりすることが実現できるのではないか」と、問い合わせの回答以外も含めた様々な領域の可能性を指摘した。

どの会社、どの部署でも独自のルールはあるため、解答の自動化は業務の効率化に大きく寄与する。とりわけ、eさんの言うように百貨店は自社社員以外のスタッフ、歳時記に合わせた短期間の雇用が多い。社外雇用や短期雇用のスタッフにとってもAIの方が気軽に聞きやすく、働きやすさにつながるかもしれない。

他方で客(一般消費者)に対しては、百貨店には細やかな“おもてなし”対応を求める人が多く、顧客の年齢層から考えても、生身の人間による接客のニーズは根強いとみられる。最近はJRが有人窓口の数を減らしたことで、かえって1つの窓口が混雑し問題化しているという報道もあった。人手不足の解決は喫緊の課題だが、AIと人間による対応の併用、スムーズな連携も必要そうだ。

一般消費者向けとしては、fさん(広報、30代)が「顧客情報の購買分析によるおすすめ商品の選定などで、利用が増えていくと思う」と、レコメンド機能について答えた。ECサイトや対面接客で自分の好みにあったアイテムや、消耗品の消費サイクルに合った商品が提案されれば、単価の上昇につながる。技術の発達による精度の向上や、取引先とのデータ連携などによる発展の余地も大きいと考えられる。

書類の作成など、事務的な仕事で導入可能という意見も寄せられた。aさん(総務・人事、30代)は、「事務的な仕事などにおいては、今後増えていくのではと思う」と解答。gさん(情報システム、30代)は「百貨店独自の業務でどこまで使われるか分からないが、ルーチンワークの中でも少し考えなければいけない業務には役に立つと思う。例えば、メルマガの文章や社内稟議・申請の文章作成などは生成AIで可能だと思う」と述べる。

多くの百貨店は書類の電子化やITインフラの整理といったデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めており、ここに生成AIの利用も加われば業務効率の大幅な向上が期待できる。なお、AIが苦手とするのが「クリエイティブ(創造的)な作業、言葉に表れない相手の感情を読み取った対応」。AIができる業務は任せ、クリエイティブな業務や心のこもった接客に注力できるのが最良だろう。

(都築いづみ)