2024年12月04日

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<ストレポ10月号掲載>23年秋冬の百貨店改装最前線

「アート・カルチャー」や「リビング・生活雑貨関連」、「スポーツ・アウトドア関連」の拡充が進んできた(画像はイメージ)

全国百貨店の売上高がコロナ禍前の2019年度実績に近づいてきた。都市部では既に上回っている百貨店が相次いでいる。業界は「回復」から「再成長」のフェーズに向かっている。「守り」の構造改革と、「攻め」の経営・営業戦略が結実してきた証しでもある。この攻めの営業戦略の積極化は、昨年辺りから活発化してきている大小の改装に表れている。売上げ回復とともに、各店各様のビジョンに基づく「百貨店価値の再創造」への改装・MD再編に拍車がかかってきている。

※この記事は、月刊ストアーズレポート2023年10月号掲載の特集「23年秋冬の百貨店改装最前線」(全13ページ)の一部を抜粋・編集して紹介します。購読される方は、こちらからご注文ください。(その他10月号の内容はこちらからご確認いただけます)


再開発に伴う店舗改革断行、従来型百貨店MDを集約化

駅並びに周辺の再開発の進展に伴い、大規模改装を踏み切る百貨店も相次いでいる。共通するのが従来型の百貨店MDの集約化だ。広島と札幌エリアの百貨店がそうだ。

広島では福屋広島駅前店が、駅および駅周辺の再開発の進展による環境変化に対応していくため、今秋より集約・改装に踏み切っている。1999年の開業以来、初めての大規模改装で、段階的に進めていく。

同店はエールエールA館の核店舗として地下1階~9階と11階の11フロア構成だったが、9月1日の改装第1弾で、地下1階~5階と11階の7フロアに集約した。しかしながら上層階(8~10階)への広島市中央図書館の移設(26年春予定)、JR広島駅ビルの開業(25年春予定)、歩行者専用橋(デッキ)の設置など、同店を取り巻く環境は激変してくるだけに、顧客視点で従来の百貨店の枠にとらわれない新しいスタイルのフロア構成を創造していく好機と捉えている。

第1弾では、上層階で支持の高かった領域とサービス機能を下層階に集約した。9階のカープグッズ、アウトドア、スポーツ用品を5階に移設し、紳士服、紳士雑貨を併設したフロアに一新。7階と8階のサービス機能、並びに6階の雑貨ショップと7階のリビング用品を4階に移設し、婦人服とともにフロアを形成している。

来秋に予定している第2弾から新しいスタイルのMD構成への変革を本格化させる予定で、最終的には広島市中央図書館が完成予定の26年春に改装グランドオープンを計画している。

広島では、そごうも25年春の完成を目指した段階的改装が始動した。まず新館の営業を今年8月末で終了し、本館(地下2階~10階)に集約化。次いで隣接している専門店街「アクア広島センター街」の1階と2階に売場を設ける予定だ。本館の売場面積は広がるものの、2館体制から約35%縮小される。ただ買い回りしやすいゾーニングに工夫を凝らして利便性を高めることで、営業効率の改善につなげていく店舗構造改革でもある。

改装のコンセプトは「豊かな広島の暮らしを体験できる百貨店」で、「地域共生をモットーに地域に根差した百貨店として、買い物を通じて豊かで快適な生活を体験できる百貨店」を目指していく。

改装のポイントは以下の3項目を挙げている。1つ目が「ライフスタイルに寄り添う買い回りしやすいフロア構成」で、具現化の対象となるフロアは2階と4~7階。今秋から24年上期にかけて、ファッションをはじめ、暮らしに寄り添う充実したインテリアを提案する売場に刷新していく。

2点目が「デパ地下の魅力のアップデート」で、地下1階、2階を対象に、今秋から24年上期にかけて、菓子と惣菜を充実させていく。3点目が「ビューティー」と「ラグジュアリー」ゾーンの強化で、24年春から25年春にかけて1階を順次改装していく計画だ。

もう1つの札幌では、10月5日に開店50周年を迎える東急百貨店札幌店が、今春から着手していた全館規模の改装を9月15日に完成させた。JR札幌駅および周辺の再開発に伴う改装で、上層階に8月末に閉店した商業施設「札幌エスタ」から大型専門店が移設してきた。

地下1階~10階までの11フロアのうち、5~9階に集客力の高い大型専門店を誘致。地下1階~4階の下層階は、百貨店の強みを生かしたショップを集約化した。大幅に刷新したのが2~4階で、婦人服フロアだった2階は幅広い年代を対象にしたアパレルと雑貨で構成するファッションフロアに刷新。アパレル・雑貨だけでなく、サービス関連ショップも導入した。

3階は婦人服フロアから、日常の暮らしを豊かにするカテゴリーミックスによるライフスタイルフロアに一新。スポーツ、アウトドア、ホーム関連、ファッションショップなどで構成する。4階は既存顧客を対象に百貨店MDを集積したフロアで、婦人服、宝飾・時計・眼鏡、お得意様サロンなどで構成する。

同店の大改装は、東急百貨店が推進している独自の多事業化ビジネスモデル「融合型リテーラー」を具現化した店舗構造改革でもある。同社が中期経営計画で掲げているビジョン「いつでも、どこでも。ひとりひとりの上質な暮らしのパートナー」の実現を目指した「新生・東急百貨店札幌店」が船出している。

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