2024年05月02日

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資生堂、「女性研究者サイエンスグラント」第16回受賞者を表彰

7月6日に横浜にある資生堂グローバルイノベーションセンターで「第16回 資生堂 女性研究者サイエンスグラント 授賞式」が開かれ、10人の受賞者が表彰された

資生堂は先ごろ、「第16回 資生堂 女性研究者サイエンスグラント 授賞式」を開催した。「資生堂女性研究者サイエンスグラント」は次世代の指導的立場を担う女性研究者を支援し、日本の科学技術発展に貢献する社会活動の一環として、同社が2007年に設立。今回97人の応募者の中から選ばれた10人が授賞した。受賞者には1人当たり100万円の研究助成金が贈呈され、研究費用や研究補助員の雇用費などに充てることができる。6日に同社のグローバルイノベーションセンターで表彰式が開かれ、受賞者の喜びのスピーチや、過去の受賞者による講演などが行われた。

日本は政治、経済双方の分野においてジェンダーギャップ改善にはまだ課題が多いとされる

今回の受賞者は、郭暁麗氏、シーボーンケイティ―氏、永澤明佳氏、萩原明氏、橋本恵氏、松本咲氏、三木春香氏、矢田詩歩氏、吉田さちね氏、渡辺寛子氏の10人。式の開会に際し、取締役エグゼクティブオフィサー常務チーフD&Iオフィサーの鈴木ゆかり氏が受賞者への祝辞を述べ、ジェンダーギャップの改善が一向に進まない日本の現状についても触れた。「ジェンダー・ギャップ・レポート2023」によれば、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位で、昨年の116位からさらに後退。鈴木氏は「受賞者の皆さんがロールモデルとなり、後輩のために道を切り拓いてもらいたい」と期待の言葉を掛けた。

続いて、エグゼクティブオフィサー常務チーフブランドイノベーションオフィサーチーフテクノロジーオフィサーの岡部義昭氏より各受賞者に記念の盾が送られ、受賞者を代表して萩原氏がスピーチした。資生堂の長きに亘る女性支援への感謝を表し、自身の研究環境や勤め先である大学の状況も説明した。今後について「女子の学生達が臆せず上の立場を目指せるよう、これからも教育とサポート体制の充実をしっかりしていきたい」と意欲を語った。

審査委員長を務めたエグゼクティブオフィサーチーフテクノロジーオフィサーの東條洋介氏からは、今回一番驚いたこととして、エントリーした人達が「リーダーになる」という強い想いを書いていたと明かした。「これからは男性も共に(女性が上位で活躍できる)社会を目指さないといけない」と率直な感想を語った。

さらに「女性研究者の置かれている現状」や「女性研究者ならではの悩み」、「受賞者が感じるサイエンスグラントのメリット」について、過去の受賞者74名から得たアンケート調査の内容も発表された。「困りごとがある」と答えた人は8割以上で、「家庭と仕事の両立が困難」、「意思決定される場で女性の数が少ない」といった具体的な悩みが挙げられた。一方、「困り事がない」と答えた人からは「昇進や昇給の評価基準が明確」という意見があった。受賞のメリットについては、助成金の支給もさることながら「他の受賞者との交流」が生まれたことや、「心の支えになった」といった受賞自体に意義を感じている回答が多く寄せられた。

第6回で受賞した天野麻穂氏が登壇。会場に集まった過去受賞者からの質問にも回答した

第6回の受賞者である天野麻穂氏による講演も行われ、研究者、教員、会社の経営者と自身の様々な職業経験を元にアドバイスを披露した。より良い職場を見つけるには学会への参加が役立ち、良い研究結果が出た際にはSNSで発信すると誰かの目に留まり、声を掛けてもらえることも増えるという。セミナーなどで知り合った人とは、その日の内にSNSで連絡先を交換することで「“ゆるやかな関係性”で、つながり続けることができる」(天野氏)。相手を尊重しながら関係性を維持することの大切さを語り、受賞者達の今後の活躍にエールを送った。

(中林桂子)