2021年11月28日

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キリン、認知症改善にビールの苦み成分が効果

キリンホールディングスは、順天堂大学医学部との共同研究で、物忘れの自覚症状を有する中高齢者対象の臨床試験で、ビール苦味成分である「熟成ホップ由来苦味酸」が認知機能や気分状態を改善することを初めて確認した。成果は2020年5月26日に国際学術誌「Journal of Alzheimer’s Disease」誌に掲載された

試験では物忘れの自覚症状を有する健常中高年を対象にランダム化比較試験を実施。熟成ホップ由来苦味酸の認知機能や気分状態への作用を評価した。結果、熟成ホップ由来苦味酸摂取群ではプラセボ摂取群と比較して、選択的注意機能およびストレスマーカーが改善することが確認された。これは認知機能やストレス状態を改善することを示している。

具体的な試験方法としては、45歳から69歳で認知機能低下の自覚症状を有する健常中高齢100名を、熟成ホップ由来苦味酸を含むサプリメントを摂取する群熟成ホップ群およびプラセボ群にランダムに割り付け、12週間摂取させる二重盲検化試験を行った。摂取0週目と12週目に被験者の認知機能について、神経心理テストを用いて評価。ストレス状態については、唾液中のストレス指標を分析した。

結果、熟成ホップ群では、摂取12週目の標準注意検査法の選択的注意力を評価するSDMT(Symbol Digit Modalities Test) の正答率の結果が、プラセボ摂取群と比較して統計学的に有意に改善した。また、神経心理テスト後の唾液中に分泌されたストレス指標のβエンドルフィン濃度が熟成ホップ群ではプラセボ群と比較して0週目からの変化値が有意に低値を示した。さらに、メタ記憶質問紙における不安感のスコアが熟成ホップ群ではプラセボ群と比較して低値の傾向を示した。SCD質問紙に基づく層別解析では、注意力以外にも、記憶力においても熟成ホップ群ではプラセボ群と比較して有意に改善した。

キリンホールディングスはこれまで、高齢化が進む社会で問題となっている認知症や認知機能低下の改善について取り組んできた。2017年に東京大学との共同研究で、ビール苦味成分であるホップ苦味酸のアルツハイマー病予防効果を世界で初めて解明。さらに、多様な食品に展開可能な苦味質を抑えた独自素材の「熟成ホップエキス」を開発し、その中の成分である「熟成ホップ由来苦味酸」が脳腸相関を活性化することで認知機能の改善および抑うつ改善作用を示すことを解明した。また、「熟成ホップ」を起点として、ホップの力で健康課題を中心とする社会課題解決に取り組むために、2019年に電通との合弁会社であるINHOP社を設立した。

今後も「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV(Creating Shared Value)先進企業になる」ことを目標とする。キリングループの長期構想「KV2027」の実現に向けて既存事業の「食領域」(酒類・飲料事業)と「医領域」(医薬事業)に加え、「ヘルスサイエンス領域」を事業として立ち上げ育成しており、今回の研究の成果をもとに、キリン独自の「熟成ホップエキス」を活用し、認知機能改善、気分状態の改善に貢献することを目指す。