2021年11月27日

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三陽商会、初の総合カタログ発行 多様な購買ニーズに対応

「サンヨースタイルマガジン」の表紙(左)と複数ブランドが比較できる商品ページ

三陽商会は11月3日、初となる紙の総合カタログ「SANYO Style MAGAZINE(サンヨー・スタイル・マガジン)」を発行した。複数のブランドを有する総合アパレル企業ならではの品揃えを活かし、ブランドごとのスタイリング提案に加え、トレンドやシーンといったテーマ軸でブランドをミックスしたスタイリングも掲載。店頭やECへの誘客装置としての役割を果たす。

三陽商会では、2025年に売上高520億円、売上総利益率55%、営業利益率10%を目指し、ブランディングの再構築、OMO推進などを進めている真っ最中だ。その成長戦略では、ミドルアッパーをメインターゲットに据え、顧客起点のマーケティングへの転換を推し進める。

「コロナ禍でECの成長性は再認識できたものの、やはり第一義としてこれからもリアル店舗は重要であると位置付けています」と語るのは三陽商会事業本部長兼デジタルマーケティング戦略本部長 取締役兼常務執行役員である加藤郁郎氏。リアル店舗やECと顧客を繋ぐ架け橋として今回のカタログを製作した。

三陽商会事業本部長兼デジタルマーケティング戦略本部長 取締役兼常務執行役員 加藤郁郎氏

今回の総合カタログは生活様式や消費行動が多様化した昨今において、購買ニーズに対応した情報の提供を目的としている。ブランド「EVEX by KRIZIA(エヴェックス バイ クリツィア)」の電話注文ができるファッションマガジン「Wings(ウィングス)」の実績と、来店のハードルが高い昨今の社会情勢を踏まえた。三陽商会が運営するファッションウェブマガジン「SANYO Style MAGAZINE」の紙版にあたる。

「時間があればもっと多くの商品を掲載したかった」という加藤氏。来期の発行も楽しみだ

2020年11月にウィメンズブランド「エヴェックス バイ クリツィア」のアイテムを電話注文できるファッションマガジン「Wings(ウィングス)」を発行。各店舗から顧客へ発送し、顧客は自分に合った買い方を選択できるようにした。カタログを手にして、店頭での購入することも、誌面のQRコードを読み込んでオンラインストアで購入することもできる。さらにカタログを見て店舗へ電話し、馴染みの販売員と会話しながらの電話注文という方法もある。「ウィングス」の成功は、「エヴェックス バイ クリツィア」が要する顧客像の影響も大きい。「エヴェックス バイ クリツィア」はメインターゲットが50~60代と三陽商会のブランドの中では比較的高年齢にあたる。その年代はコロナでの行動制限も大きく来店も減少、クレジットカードの情報をインターネット上に入力したくないという心理からくるECへの抵抗も少なくない世代だ。

「ウィングス」はそういった世代の顧客に対して購入方法の選択肢を広げることに成功。冊子の送付をきっかけに来店した客数は予想を10%上回り、店頭売上げ(電話注文を含む)は想定の2.3倍、掲載商品のEC売上は想定の4.8倍と大きな成果をあげた。この取り組みを通じてブランドと客の双方にメリットがあることが明らかになったことから、2021年4月に第2弾を発行。そして10月には第3弾となる「Wings vol.3」を発行し、電話注文に加えて、各店舗のラインアカウントによるオンライン接客を行うなど、より快適な買い物方法の創出に取り組んできた。

そのような成果をもとに発行したのが初の総合カタログ「サンヨー・スタイル・マガジン」だ。ウェブマガジンの雰囲気はそのままに、来店してじっくり商品を見てまわることのハードルが高い昨今の社会情勢を踏まえて、スタイリングに役立つ情報を提供することを目的とする。サイズはA4版で48ページ構成。創刊号となる今回は「BEST COAT MOMENT(ベスト コート モーメント)」と題して今冬おすすめのコートを特集。「お仕事スタイル」や「休日リラックススタイル」など生活シーンごとのコートスタイルのほか、コートに映える色合いのニットやコーディネートに華を添える冬小物など、バリエーション豊富に紹介している。

誌面の作り方も工夫を凝らした。カタログだけでも購入の決め手となるよう、素材やカラー展開、サイズなどを明記。QRコードもECサイトの各商品ページへ遷移するなど、購入のしやすさを重視した作りだ。通販カタログとファッション誌の中間のようなバランスの良さを実現している。

このカタログの発行に百貨店もおおむね好反応を見せる。「百貨店の店舗を通さないECでの購入が増えてしまうのではないか」と懸念を示す声もあるようだが、「ウィングス」ではカタログをきっかけとして店舗への来店が増えるというデータもある。ある百貨店ではカタログの情報の質の高さに感銘を受け、外商員に持たせる予定だという。

また多くの百貨店が年齢軸でフロアを区切っているために出会えていなかったブランドと顧客との接点も再発見できる。いつものブランド以外のアイテムにも挑戦したいと思う消費者が格段に増えることとなろう。百貨店に対象のブランドが入っていない場合も考えられるが、一部トライアルとして、協力体制を取れる百貨店において、その館で展開していないブランドのアイテムも注文があれば納品することについて試みる。

カタログを通し、加藤氏は「我々の力で顧客を呼ぶことができる、本当の意味での集客を目指したい」と目標を語る。主販路を百貨店とする三陽商会では、今までは「百貨店側が提案する販促策に任せることも多かった」という。店頭へ来た客に対していかに売るかという考えから、もっと商品を磨き適切にプロモーションしていくことで、自分たちの力で顧客を店頭に呼ぼうという考えにシフトチェンジしたことのあらわれだ。三陽商会が進める顧客起点のマーケティングに期待したい。