大丸松坂屋の「明日見世」、過去最多の27ブランドに
明日見世は11月12日から「Connection is the gift」がテーマ。クリスマスやバレンタインデーの贈答需要に照準を合わせる
大丸松坂屋百貨店が大丸東京店の9階で運営するショールーミングスペース「明日見世」が右肩上がりだ。約3カ月ごとにテーマやブランド、展示などを一新するが、11月12日からは過去最多の27ブランドを揃えるとともに、前期に追加した出品料が2番目に高い契約形態「BRANDING」(1カ月あたり110万円)が1社から3社に増加。ブランドの数と高額な契約が増え、収益性は一段と高まった。
2021年10月6日に4階にオープンし、昨年9月18日に9階に移設・拡大した明日見世。11月12日には「Connection is the gift」をテーマに、第6弾が始まった。上りエスカレーターの正面には、F.I.S.が手掛ける「BEAUTIFUL SILICA」が初登場。ポップアップストアのような環境に美容液やクリーム、サプリメントなどが並ぶ。契約形態は「PREMIUM」(1カ月当たり200万円)だ。PREMIUMでの契約は、前期までの三省製薬に続き2社目となる。

初登場の「BEAUTIFUL SILICA」
明日見世のマネージャーを務める大貫哲也本社経営戦略本部DX推進部デジタル事業開発担当は「BEAUTIFUL SILICAは今年3月に生まれたブランドで、PREMIUMを提案すると『デビュー年を盛り上げたい』と即決してくれた。いきなり大丸松坂屋の各店でのポップアップストアは難しく、互いのニーズが合致した」と経緯を説明する。
BEAUTIFUL SILICAの次に目に留まるのは、ジェイ・エスの「IONDOCTOR」、エテルナムの「Eternam」、三省製薬の「DERMED」と「IROIKU」だ。いずれも契約形態はBRANDINGで、①最も出品料が安い「STANDARD」(1カ月当たり30万円)の2つ分のスペース②POPやロゴを掲示できる③大丸東京店のフロアやメディアなどを使ったプロモーションでPRの効果を最大化できる――の3つがメリットだが、BRANDINGでの契約を選んだ経緯は異なる。
初出品のEternamは誕生から間もなく、ポップアップストアを積極的に行っているが、「より長期間に亘り拠点を設けられる」として明日見世に白羽の矢を立てた。明日見世には「アンバサダー」と呼ぶブランドや商品に精通した大丸松坂屋百貨店のスタッフがおり、販売員を派遣せずに済むため、「ポップアップストアと並行できるのも利点」という。
IONDOCTORは第1弾にSTANDARDで出品。売上げは好調で、アンバサダーが客から得た情報のフィードバックにも満足し、「クリスマスをはじめホリデーの時期に、より多くのラインナップを見せれば、もっと売れるのではないか」と予想し、BRANDINGに契約形態を変えてチャレンジした。

「IONDOCTOR」は、ホリデーの時期を拡販の好機と捉え、ラインナップを増やして再出品
三省製薬は第1弾から第5弾までのPREMIUMで一定の成果を確認。第6弾では違う手法で訴求力を試す。
契約形態は明日見世に対する期待感とイコールだ。契約形態はSTANDARD、STANDARDより広いスペースで陳列できる「STANDARD PLUS」(同60万円)、大丸松坂屋百貨店のアプリ「大丸・松坂屋アプリ」を活用した来店促進、客へのサンプリングやアンケートなどが可能な「CONNECT」(同95万円)とBRANDING、PREMIUMの5種類だが、高額なBRANDINGやPREMIUMも選ばれているのは、これまでに積み上げてきた成果や評判、信頼にほかならない。
再出品する企業の増加とアイテムの幅の拡大も、明日見世の価値を証明する。第6弾では、約3分の1のブランドが再出品。来年2月3日までの期間を生かし、クリスマスやバレンタインデーなどの贈答需要を取り込む。大貫氏は「新生活や梅雨に照準を合わせる企業もある」と話す。企業のプロモーションに明日見世が組み込まれつつある。
アイテムの幅では、加湿器や布団乾燥機といった季節家電を初めて集積。ドライヤーのような形状の「cado」の布団乾燥機が目を惹く。子供と大人が一緒にDIYを楽しめる「FABLOCK」やビー玉転がし、積み木、パズルを組み合わせた木製玩具「coconos」など、子供向けも充実させた。第5弾では子供向けの学習机や椅子を揃える「mirumio」、ポップなカラーのベビーチェア「アッフル ソルベ」が出品し、反響が大きかったからだ。アッフル ソルベは全6色が完売したという。
第6弾では、明日見世としても新たな施策を講じた。イラストレーターのmoka、写真家の相澤有紀、Tat、ペインターのSUGI、画家の渡邉太地の各氏と協業。若手のアーティストに「Connection is the gift」を題した架空の楽曲のレコードジャケットをデザインしてもらって展示するほか、4000円以上の買上げ特典としてステッカーやアクリルコースター、買上げ特典としてメッセージカードを用意した。大貫氏は「若手のアーティストにとって、自分の作品をアウトプットする機会は少ない。『百貨店で展示してもらえるのは嬉しい。ありがたい』と言われた。若手のアーティストとのコラボレーションは今後も継続したい」と方針を示した。

若手のアーティストと協業し、その作品を展示
明日見世について、大貫氏は「順調に推移している」と強調する。実際、取り扱うブランドの増加に伴い人員を増やしており、新たにPR担当も配置した。ブランドも体制も拡大路線で、さらなる成長を目指す。
(野間智朗)