歳暮商戦は‟試食”で活性化 自家需要や新客開拓も視野に
高島屋新宿店で6日に行われた試食会。歳暮の商品が多数振る舞われた
中元・歳暮市場は長らく縮小傾向にあり、百貨店がテコ入れのために目を付けたのが“試食”だ。と言っても、ギフトセンター店頭で少量のサンプルを配るだけではない。三越日本橋本店は、歳暮と連動した試食イベントをギフトセンターの隣で展開。高島屋は新宿店8階のレストランで歳暮ギフトのメニューを提供する。自家需要や、これまで中元・歳暮になじみのなかった次世代層の取り込みも狙う。
三越日本橋、イートインや有料試飲を連動で開催

三越日本橋本店は、ギフトセンターを開いた初週にワインの有料試飲を実施した
三越日本橋本店は、歳暮ギフトセンターの隣で試食・試飲できるイベントを開催し、購買意欲を喚起する。同店のギフトセンターは10月29日~12月22日に本館7階の催物会場で展開するが、10月29日~11月3日には「アレックス ガンバル」のブルゴーニュワインの有料試飲を実施。11月5~10日には実演イートインイベント「美味良縁コレクション」を開催し、12~17日には、ミュージシャン・高見沢俊彦氏のおすすめグルメを集めたイベント「高見沢俊彦の美味しい音楽 美しいメシ 美食祭 in 日本橋三越」を行った。
アレックス ガンバルのワインや美味良縁コレクションで提供したメニューは、大半が今回の歳暮用アイテムだ。高見沢俊彦氏のイベントも、受注生産商品の受注はギフトセンターで承るなど、歳暮企画と連動した内容になっている。こうした施策を本格的に行うのは、今回が初となる。
ギフトデザイン商品部計画担当の池見貴之氏は、「ギフトセンターへの来客数は年々減っている。イベントによって、お客様の数を増やしたかった」と意図を明かす。試食によって、贈答だけでなく自分用や家族用の購入も狙う。儀礼ギフトのみに限らず、幅広い需要の掘り起こしを狙った取り組みだ。

ギフトセンターの決起セレモニーの様子。初日は開店前に150人もの客が並んだという
高島屋、レストランで歳暮グルメを提供
高島屋は昨年の中元から顧客を招いた試食会を実施しており、11月6日に4回目の試食会を実施した。高島屋オリジナルの名店コラボや、今シーズンのテーマである「レトロ」感のあるメニューを振る舞った。今シーズンは新たな取り組みとして、新宿店で「お歳暮カフェ」を展開。歳暮ギフトのメニューが料理として登場する。
試食会は、「贈る前に味を確かめてほしい」「バイヤーや作り手の想いを伝えたい」といった狙いからスタート。同社のアプリ会員を対象に告知し、抽選で選ばれる。4回とも用意された枠を大きく上回る応募があり、イベント後にはSNSで好意的な投稿が寄せられるなど、人気イベントとなっている。
MD本部食料品部次長の小野田剛史バイヤーは、「商品化に至るまで様々なストーリーがあるが、それをお客様に伝えられる良い機会。お客様からは『おいしかったから買うね』と言っていただくこともあり、購買にもつながっている」と話す。

1つ1つの商品に開発秘話があり、試食会でそれを語っていく(左が「shojin 宗胡」の野村大輔シェフ、右が藤堂恵子バイヤー)
今回は、新宿店8階にあるレストラン「Kouji&ko」で試食会を開催。ガトーショコラや野菜スープ、サンドイッチなど全9メニューを提供し、高島屋のバイヤーや協業したシェフがメニューの魅力やこだわりなどを解説した。参加した女性は「2品目のスープが本当においしかった。自分で買うには少し高いけど、もらったらうれしいので誰かに贈ってみようと思う」と感想を話す。
新施策の‟お歳暮カフェ”として、Kouji&koでは7~25日、歳暮商品の8種類のメニューを通常の営業時に提供している。店内には11階のギフトセンターの案内を置き、ギフトセンターでもお歳暮カフェを紹介し、相互の送客を図る。藤堂恵子バイヤーは「既存のお客様に加え、歳暮を贈る習慣がない次世代とのタッチポイントにしたい」と話す。
確かに中元・歳暮市場は縮小しているが、自分へのご褒美や、カジュアルギフトのニーズは決して減ってはいない。また、記者も試食会に参加させていただいたことで、1つ1つの商品に熱い想いやこだわりが込められていることを初めて知った。そうした背景に触れ、購買を促す動機として、試食イベントは今後も規模を拡大していきそうだ。
(都築いづみ)