2026年01月20日

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知られざる工場ブランドで感動体験を 高崎発セレクトショップ「メゾンドエフ」の挑戦

高崎高島屋の4階に構える。売場面積は約80㎡で、扱う商品は300~500SKUほど

メイド・イン・ジャパンの商品をブランディングする取り組みが、日本各地で活発に行われている。その中で、群馬県高崎市でファクトリーブランドのセレクトショップに挑戦した企業がある。高崎高島屋だ。同店に構える「メゾンドエフ」は2020年のスタートから成長を続け、今では新宿や日本橋、柏、横浜など高島屋の他店舗にもポップアップを出している。なぜこれほど成功したのか? メゾンドエフを企画し、現在も運営を手掛ける中里康宏バイヤーに尋ねた。


MD本部紳士服・紳士雑貨・スポーツ部次長(高崎店駐在バイヤー)の中里康宏氏

お客様と百貨店、取引先によるコミュニティが生まれ好循環に

――「メゾンドエフ」は、どのようなショップですか。簡単に教えてください。

日本のファクトリーブランドを中心に集めたセレクトショップで、高崎高島屋の4階で展開しています。地方には、あまり知られていないけれど素晴らしいブランドがたくさんあります。そうしたブランドや工場、商品を広く知ってもらいたいと思い、社内公募制度を通じて企画しました。

実はメゾンドエフの「エフ」は、「ファクトリー」(工場)に加えて、「ファインド」(発見)、「フリー」(自由)といった意味も込めています。百貨店の売場の「婦人服」「紳士服」「リビング」「食品」といったカテゴリーを超えたいという考えがありました。ですので衣料品や衣料雑貨、レザーアイテム、フレグランスなどの生活雑貨など幅広く扱っていますし、メンズ・レディースの両方があります。

価格帯は、生産者と直接やり取りするため、百貨店の平均的な価格より廉価です。例えばTシャツは、通常なら1万2000~3000円程度ですが、メゾンドエフでは9000円くらいです。商品の価格に対して品質が高いことが、お客様に支持されている理由の1つです。

――売上高など、商況はいかがですか。

おおむね順調です。ショップのオープンは2020年4月1日で、その後すぐはコロナ禍となりましたが、売上げは右肩上がりを続けています。24年度(24年3月~25年2月)は前年同期比で50%増でしたし、直近の25年9~11月は同25%増となりました。利益面も、23年頃に黒字化を達成しています。

売上げが伸びている要因として、お客様が増え、顧客基盤ができていることが大きいです。メゾンドエフで扱う商品はどれもものづくりの背景やストーリーがあり、そのことを販売スタッフがしっかりとお客様に伝えることで、お客様に共感を生み出しています。

お客様の価値観が多様化する中で、国内各地の産地のファンや、シャツ、靴といったアイテムにこだわる層など、様々なコミュニティがあります。メゾンドエフを通して、コミュニティ同士が交わることで、それぞれの新しいファンを獲得する好循環ができています。産地の活性化に貢献できますし、苦戦する地方百貨店の活路になると実感しています。

デザイン性の高いインテリア雑貨なども扱う

「まだ知られていない」が新鮮さ、付加価値を生む

――ほかのセレクトショップがある中で、メゾンドエフが成功した要因は何だと考えますか。

メゾンドエフで主に扱うのは、まだ世の中にあまり知られていないブランドです。なので未知数な部分もありますが、それが逆に、新しい発見をもたらします。どのセレクトショップにも並んでいる有名ブランドは、安心感はありますが、新鮮みはないですよね。

知られていないからこそ、一つ一つのファクトリーの背景やストーリーが、お客様にとっての付加価値、感動体験になります。一度感動体験をすると「また来よう」とか、「誰々に紹介してみよう」「贈り物にしよう」と次にもつながります。

――23年から、高島屋の他店舗でポップアップを行っています。そちらはいかがですか。

始まる前はどうなることかと不安もありましたが、蓋を開けてみると、どこも売上げは予算を達成し、好調です。お客様の滞留時間が長く、楽しんで納得して購入する方が多かったのが印象的でした。中には、柏店で購入した後、新宿店のポップアップにもわざわざ足を運んで来て下さったお客様もいました。

新たなお客様を取り込むため、見せ方には非常にこだわりました。ポップアップは大体4~5ブランドを出店しますが、店頭で統一感が出るような、相性の良い組み合わせを選びました。また、婦人服とアクセサリーなど、複数のカテゴリーから選ぶことも留意しました。そうすることで、服に興味を持ったお客様が雑貨も買い回るといった効果が生まれています。

高島屋日本橋店で行ったポップアップの様子

産地支援に欠かせないのは「第三者目線」と「継続性」

――今後に向けた計画や、新たに取り組むことなどを教えてください。

商品の拡販に加えて、人材不足問題にも貢献できないかと考えています。ファクトリーブランドは自社の技術やものづくりについて発信することができますが、さらに川上の生産者は自分達のブランドがあるわけではないので、情報発信や人材確保が困難です。そうした方達にスポットを当てるため、現在、桐生産地(群馬県の絹織物の産地)についての情報発信に取り組んでいます。

また、地元の高校から、教育プログラムをできないかとオファーがありました。年間を通じてものづくりや企画、売場運営などについて学んでいただき、最終的に学生が販売をする内容です。まだ構想段階ですが、小売業も人材不足は深刻なので、プログラムを通じて百貨店の仕事の面白さを学生に知ってもらい、人材の確保につながればと前向きに捉えています。

――最後に、ものづくりの支援やブランディングに大切なことは何だと考えますか。これまでの経験も踏まえて教えてください。

これまで6年ほど携わってきて、産地や工場を支援するには、第三者の役割が重要だと実感します。もちろんどのブランドも優れた技術や品質を持っていますが、それをどのように切り取り、どうキュレーションするかは、付加価値に直結します。それから何より一番大切なのは、継続性です。短期的なスパンではなく、中長期的に産地と関わることが、ものづくりの支援には欠かせないと考えます。

(聞き手・都築いづみ)