2026年02月27日

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阪急うめだ本店のコンセプト型売場「グリーンエイジ」が成長を続ける理由

「グリーンエイジ」は阪急うめだ本店8階の中央部に構える

「人と自然の共生」を掲げる、阪急うめだ本店の売場「GREEN AGE(グリーンエイジ)」。2023年4月のオープン時はこれまでにないコンセプト型売場として注目を集めたが、快進撃はその後も続いている。2年間で前売場比2倍にまで売上げが成長し、25年度(25年4月~26年1月末時点)も前年を超えて推移。グリーンエイジのコンセプトに共感する顧客が増えており、コンセプト型売場の成功事例となっている。

カテゴリーミックスで‟自然共生”を提案

グリーンエイジは「パートナーや仲間との絆を大切にする都市生活者」に向けた、新しい自然共生型ライフスタイルを提案する売場で、ファッションや食、雑貨、コスメなど、従来のカテゴリーの垣根を超えた品揃えが特長。「プラダ」「ロエベ」といったラグジュアリーブランドも共存する。

売場は、自然とのふれあいを通じて暮らしの質を高めることを掲げた「グリーンネイバーフッドライフ」と、自然に寄り添いながら心身の健康を実現し、自分自身も持続可能であろうとする「グリーンウェルネスライフ」の2つのゾーンで構成される。

そのほかイベントスペースとして「COMMUNITY PARK(コミュニティパーク)」など全3カ所を設け、イベントやワークショップを実施している。

パルダリウム(熱帯植物水槽)を扱う体験型ショップ「ADA LAB UMEDA」

「買いたくなる」「共感」との出会いが情緒的価値に

同売場はコロナ禍による延期を経て、23年4月にオープンした。最初の1年は売上高が想定に届かなかったが、24年度以降(24年4月~)は、全ての月で前年を超えており、25年度(25年4月~26年1月末時点)は前年比1.2倍以上で推移している。同店のポイントカード会員の新規獲得数も、他部門と比べてグリーンエイジがトップで、しっかりとファンを掴んでいることが分かる。

グリーンエイジ営業統括部の石田良太ゼネラルマネージャーは、「25年度はインバウンドが不安定だった。しかし国内のお客様の売上げが、識別顧客(同店のハウスカードを含めた識別IDを持つ客)、非識別顧客ともに1.3倍以上伸長した。『部門ファン』と位置付ける、年間3日以上かつ3ユニット以上を買い回るお客様は、1.4倍を超える。お客様との関係性をしっかりと育てられている」と語る。業界がインバウンドバブルに沸く中でも、国内の顧客基盤を固めたことが奏功した格好だ。

また石田氏は、支持されている要因として「買いたいものを買いに行く場所から、『買いたくなる』や『共感できる』、『体験』に出会える場への進化」を挙げる。買いたいものが決まっている場合は、ECサイトやカテゴリー別の売場の方が比較検討しやすい。しかしグリーンエイジは、カテゴリーミックスの品揃えに加え、ワークショップやセミナーを含めたリアル店舗ならではの体験を充実させることで、「来ること自体が楽しい」という情緒的な価値を生み出している。

イベントスペースでは、ヨガ教室も開催する。リアル店舗ならではの体験だ

売場の「メディア化」や買い回り施策で顧客化

具体的に同売場が行っている施策としては、1つがグリーンエイジの「メディア化」だ。毎月独自の編集テーマを設け、売場に変化を付けている。それを自社SNSに加え、外部メディアでも取り上げてもらうことで、新客との接点を創出する。広告出稿はほとんど行っていないが、外部メディアに取り上げられる数は定量的に伸びているという。

毎月のテーマも、従来の歳時記的なテーマにひとひねりを加えている。例えば6月といえば梅雨の時期であり、梅雨対策のテーマが一般的であったが、昨今は梅雨時期のずれや急な天候変化も多い。そこで昨年6月は「ディザスター・プリベーション」(有事への備え)と銘打ち、現代の気候変動に対応できるアイテムを展開。ハイスペックで高価格だが日常でも使える商品を揃え、日々の生活をより楽しくすることを提案した。

新客の定着に向けては、買い回り施策に力を入れている。例えばバレンタインシーズンは、普段百貨店を利用しない客も多く来店する。これを一時的な来店にしないため、バレンタイン商品の購入客にヘルス&ビューティーのショップで使える体験チケットを配布し、回遊を促進している。昨年は3000部の体験チケットが全て配布され、今年は4000部を用意したが全て配布され、同ゾーンの売上も好調だった。

フェアトレードコーヒーについて学ぶセミナーも昨年に開催。学びの要素も提供する

体験価値から「滞在価値」へ

順調なグリーンエイジだが、目指すのは「体験価値にとどまらない、滞在価値の創出」(石田氏)である。人々の興味・関心が多様化する中で、百貨店は小売業だけでなく、様々な時間消費の選択肢と競合している。その中で「お客様にまたここで過ごしたいと思っていただく、つまり滞在価値が、売場や店舗のファン増加、LTV(顧客への生涯提供価値)向上につながる」と同氏は述べる。

近年はリテール(小売り)とエンターテインメント(娯楽)を掛け合わせた「リテールテイメント」という概念が普及しているが、これについて「モノを購入していただく瞬間の付加価値向上、つまり『個別最適』の意味合いが強い。その点をつなげげて店舗やフロア全体の価値を向上させる、『全体最適』の視点が重要と感じる」(石田氏)との見方を示す。

人々の可処分時間を巡る競争が激しさを増す中で、売場に求められる役割は大きく変化している。共感や発見、体験を通じて顧客との関係性を深める拠点として進化を遂げたグリーンエイジだが、今後もさらに磨きをかけていく方針だ。

(都築いづみ)