2024年04月28日

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クラダシ、初の常設店 フードロス削減を加速

5月25日、たまプラーザテラス(GATE PLAZA1階)にオープンしたソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」

フードロス削減を目指してインターネット通販サイト「Kuradashi(クラダシ)」で商品を販売するクラダシは5月26日、「たまプラーザテラス」のゲートプラザ1階に初の常設店舗をオープンした。開店に合わせて、たまプラーザテラスを運営する東急モールズデベロップメントとクラダシ双方による発表会が開かれ、サステナブルな活動の説明や店舗の内覧会などが行われた。東急モールズデベロップメント社長の佐々木桃子氏は“Tokyu Malls Development Sustainability Action”について、クラダシ社長の関藤竜也氏はクラダシの事業内容、クラダシ経営戦略室長の築地雄峰氏は今回の常設店舗について、それぞれスピーチした。


東急モールズデベロップメント社長の佐々木桃子氏

東急モールズデベロップメント佐々木社長のスピーチ

当社は東急グループが事業の根幹に置く街づくりのDNAを受け継ぎ、商業施設運営を通じて地域の魅力を向上させ、地域の暮らしを豊かにするべく事業を推進しています。地域や暮らしを取り巻く環境は日々変化しているが、様々な社会課題に真摯に向き合い、事業を通じて課題解決に取り組むことが当社の重要な使命の1つ。沿線に住まわれている人のSDGsに対する関心は年々高まっています。東急沿線で事業を展開する会社として、地域の皆様により身近に気軽にSDGsに参加できる環境を提供するべく、さらにサステナブルな取り組みを加速させます。

この取り組みを推進するために、当社が行うサステナブルな活動を「Tokyu Malls Development Sustainability Action」として発信します。活動を通じて地域のお客様や事業パートナーの皆様とのコミュニケーションや共創の機会を増やして、共に社会課題の解決に取り組んで参ります。

これから本年度のテーマとして掲げる「循環型社会の実現」「子どもの笑顔をつくる」「脱炭素社会の推進」の3つの取り組みを紹介します。

「たまプラーザテラス」では、着古した衣服を回収している

循環型社会の実現については、たまプラーザテラスにフードロス削減に取り組むクラダシ様初となる常設店舗を出店していただき、これから一緒にフードロス削減活動に取り組んで参ります。また、たまプラーザテラスでは施設で働く従業員に向けて、賞味期限間近になった商品を販売する取り組みや、お客様の不要になった衣料品を館内に設置したボックスで回収するなど、リサイクル活動にも力を入れています。こうした活動が評価され、たまプラーザテラスは神奈川県の商業施設で初のエコマークを取得しました。

子どもの笑顔をつくるでは、青葉台東急スクエアでお客様からおもちゃや絵本を回収し、キッズスペースでの利活用や、青葉区と連携して地域の社会福祉協議会や子育て拠点、保育園などで譲渡会を実施しました。中央林間東急スクエアでは、今年3月にお子様だけが参加できるキッズフリマを実施しました。これは“買う売る”を通じて楽しみながら経済を学べるイベントです。今年の夏休み期間中には、当社が運営する10施設および各施設と直結する駅や公共施設も連携して「おしごと体験」ができる「キッズスタッフイベント」を開催します。このような体験イベントを通じて、お子様たちが楽しみながら様々な気づきや学べる機会を創造していきます。

脱炭素社会の推進では、港北TOKYU S.C.、青葉台東急スクエア、武蔵小杉東急スクエアの3施設で昨年のクリスマスイルミネーションで使用する電力に、J-クレジット制度を活用したカーボンオフセットを行いました。また、今年の3月には当社が商業施設を運営する南町田グランベリーパークが「地球環境大賞」(グランプリ)を受賞しました。この賞はフジサンケイグループが主催し、環境保全に貢献する企業・団体などを対象とする顕彰制度で、商業施設でのLED照明および太陽光発電システムパネルの一部導入などが評価されました。

当社は商業施設をお買い物の場としてだけでなく街の一部として、サステナブルな活動を通じたお客様とのコミュニケーションの機会や、事業パートナーの皆様との共創の機会を増やしていくことで、東急グループの一員として、地域の魅力向上とサステナブルな社会の実現に貢献していく所存です。

クラダシ社長の関藤竜也氏

クラダシ関藤社長のスピーチ

この度クラダシとしては初めて、常設店をたまプラーザテラスに出店させていただきました。世界のフードロス問題は非常に深刻な状況にあり、生産されているものの3分の1が廃棄されている。13億トンにもなるその廃棄量はカーボンニュートラルに向かう世界の温室効果ガス排出量の8~10%を占め、世界で走っている車両の排出量に匹敵するほどの数値であり、農業による世界の水使用量の4分の1を消費するまでになってしまっています。

店舗ではフードロスになってしまうかもしれない食品、飲料中心に、お酒、冷蔵・冷凍商品も展開

我々クラダシは“ソーシャルグッドカンパニーでありつづける”をミッションとして、世の中に山積する社会課題を凸と凹をマッチングすることによって新しい価値を創造していくことにあり、大切にしている「社会性」「環境性」「経済性」の3つの合理性を成し遂げる活動をしています。ビジョンとしているのは“日本で最もフードロスを削減する会社”。日本で消費されている食料の約3分の2を世界から輸入しているにも関わらず、残念ながら我が国は世界でトップレベルのフードロス大国となっています。毎年毎年廃棄されていることが大きな問題です。

そこでクラダシは、フードロス削減を目指し2014年に「楽しいお買い物で、みんな得するソーシャルグッドマーケット『Kuradashi』」を立ち上げました。クラダシのサービスの特徴は、まだ食べられるにも関わらずメーカーから出荷されずお蔵入りされているものに新しい価値を付けて提供する。そういう意味でクラダシというサービス名を付けているのです。そのような価値ある商品を消費者の皆様にお得にお買い物いただきつつ、売上げの一部を社会支援していただく。加えて環境支援だったり、社会福祉支援だったり、災害対策支援といったことを、消費者の皆様と一緒になってサステナブルな社会実現に貢献できるという仕組みを構築しました。

クラダシのサービスを開始して現在までで会員数は46万人を突破し、パートナー企業数は1300社を超えています。フードロス削減量は1万6000トン超、寄付による支援金総額は1億6000万円になっています。SDGsは「誰一人取り残さない」という目標をもって進んでいるようですが、クラダシは誰でも気軽に参加できる。自分のための買物が人のためになるというのが、まさにトレードオフでなく、無理のない消費構造へのつながりを実現しています。

ソーシャルグッドカンパニーとして、自ら支援する金銭的支援の活動にとどまらず、地域経済の活性化と社会発展にも寄与するために支援金制度「クラダシ基金」を設立しています。それには地方創生事業、SDGs教育事業、フードバンク支援事業、食のサステナビリティ研究会の社会貢献活動に充てられます。地方創生事業について言えば、社会貢献型インターンシップと称している「クラダシチャレンジ」という活動を全国23回実施してきました。少子高齢化、人口減少による人手不足で、今後益々未収穫による残が出てくる。こうした未収穫ロス削減のために学生さんが全国に出向いて収穫のお手伝いをしたものを、クラダシで販売して現地にも還元するサステナブルな流れができています。農業体験された学生さんには、クラダシ基金から旅費・交通費・宿泊費などを供出しています。

「楽しいお買い物で、みんなトクするソーシャルグッドマーケットを創る」をBrand Purpose(ブランド パーパス)としている我々クラダシは、持続可能な社会の実現に向けて邁進していきます。

クラダシ経営戦略室室長の築地氏

クラダシ築地室長のスピーチ

食品においてもECのポテンシャルは大きいと思われますが、21年時点でみた国内BtoCの食品EC化率は3.77%であり、依然として店頭販売の存在感が大きい状況にあります。私共は東急モールズデベロップメント様と連携して常設店舗のテストも踏まえポップアップストアを実施してきました。

東急グループとの共創で22年にポップアップストアを7回、開催日数にして62日間実施。これによりまだ食べられるにも関わらず捨てられる可能性がある商品を、累計で5万点以上販売しフードロス削減ができました。昨年2月に東急プラザ2店舗でバレンタインチョコのロス削減を目指して開いたイベントでは、“私たちのバレンタインは2月15日から始まります。”のポップを付けたことで、多くのメディアに取り上げられ、フードロスが広く認識される機会となりました。

たまプラーザテラスに5月26日に開設した初の常設店は「社会にいいこと」「街にいいこと」をテーマに運営していきます。このテーマを実現するため「見る」「知る」「関わる」の3つを仕掛けていきます。

まず見るについては、店舗における社会貢献度を可視化しました。店舗販売により削減されたフードロス削減量や、それに伴う二酸化炭素(CO2)排出量の削減などを店頭のサイネージに表現しています。

知るについての仕掛けは、店舗内にコラボレーションブースを設けサステナブルな商品や企業の取り組みを紹介。加えてフードロスなどの課題をより理解していただくためのリアルイベントを適時実施します。その第1弾として6月に「レシピサイトNadia」との共催でトークイベントを実施しました。

関わるでは、店内でお買い物をすると支援したい活動や団体をお客様自身で選べる仕組みがあり、お買い上げ金額の一部が社会貢献活動支援に充てられます。具体的にはレジでお買い物いただいた後に、SDGsカラーのボタンをお渡しします。お客様はそれをレジの後方壁面にある支援先団体の中から支援先を選択して、ボックスに入れていただくという仕組みです。

クラダシとしては常設店舗を通じて「たのしく」「やさしく」「おやすく」の3つの価値を提供します。弊社には様々な理由で商品が持ち込まれます。まだ食べられるのにロスになり得る商品があるので、店頭が日々入れ替わる楽しさがあります。また商品を購入することによってフードロスに貢献できるだけでなく、気軽に支援もできるというやさしさ。そしておやすくは、お客様が無理なく毎日使えるような“お手頃感”のある安い価格の提供で実現させています。

(塚井明彦)