2024年05月05日

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<ストレポ3月号掲載>2023年開業 大型商業施設の趨勢

大型商業施設には「コミュニティ拠点」としての役割が強く求められている(画像はイメージ)

今年も全国の主要都市で再開発に伴う大型商業施設が開業する。日本ショッピングセンター(SC)協会の調査によると、2023年に開業予定のSC等の商業施設は32カ所程度。昨年開業したSCは36施設だが、閉店は37施設を数える。もはや大型商業施設の生き残りをかけた競合が熾烈化している。他の施設と一線を画す特徴ある存在価値が問われており、そこには魅力ある新しい「街」づくりと地域振興・貢献の視点が欠かせない。

※この記事は、月刊ストアーズレポート2023年3月号掲載の特集「23年開業 大型商業施設の趨勢」(全12ページ)の一部を抜粋・編集して紹介します。購読される方は、こちらからご注文ください。(その他3月号の内容はこちらからご確認いただけます)

「過ごす楽しさ、地域交流、環境配慮」がキーワード

大型商業施設は、ほかの施設とは一線を画す特徴ある存在価値が問われ、さらにそこには街の魅力化と地域振興・貢献の視点が欠かせない。これが立地する商圏内で魅力を放つ商業施設となり、存在価値を高めるための特徴化になる。昨年、開業したSCには、その潮流が鮮明に表われており、それは3つに大別できる。

1つが、カルチャー、スポーツ、アミューズメント施設など体験型エンターテインメント機能の充実による「リアルな場で過ごす楽しさ」の強化である。2つ目が、地元の行政や企業・団体などと連携して「まちづくり」の一環として出店し、広場やホール、公益施設なども整備した「地域交流の拠点化」だ。

そして3つ目が、再生可能エネルギーの活用や環境に負荷の少ない建材の利用など脱炭素社会・循環型社会の実現に向けた「環境配慮型の施設」づくりである。これはハード面だけでなくイベントなどを通じたサステナビリティ(SDGs)活動が活発化しており、標準装備と化している。ここで共通するのは各々の大型商業施設が対象とする生活者に対して、関心の高い「体験価値」の提供である。

八重洲に「東京ミッドタウン」、「ジャパン」ブランドを集積

三井不動産は、この春、都心部のミクストユース型(複合用途型)街づくりブランド「東京ミッドタウン」、リージョナル型SC(RSC)の「ららぽーと」ブランド、「アウトレットパーク」の3業態を相次いで開業させる。

まず、3月10日にグランドオープンするのが「東京ミッドタウン八重洲」だ。「東京ミッドタウン」ブランドでは六本木(07年開業)、日比谷(18年)に次ぐ3施設目。同ブランドは三井不動産が都心部において総力を結集して開発するミクストユース型街づくりブランドの名称で、「『JAPAN VALUE(新しい価値・感性・才能)』を世界に発信しつづける街」をビジョンに、「ダイバーシティ、ホスピタリティ、クリエイティビティ、サステナビリティ」という4つを共通の提供価値(バリュー)として街づくりを進めてきている。

八重洲では、六本木や日比谷で、それぞれの地域特性を生かした街づくりで培ってきたノウハウを継承し、「日本の夢が集う街。世界の夢に育つ街」を目指した街づくりに取り組んでいく。東京ミッドタウン八重洲は、地上45階建ての八重洲セントラルタワーと地上7階建ての同セントラルスクエアの2棟で構成される大規模複合ビル。前者はオフィス、ホテル、商業施設、小学校、バスターミナル、駐車場など、後者はオフィス、住宅、商業施設、子育て支援施設、駐車場などで構成する。

次いで三井不動産は、4月17日、大阪に「三井ショッピングパークららぽーと門真」と「三井アウトレットパーク(MOP)大阪門真」をオープンさせる。建物は4階建てで、1階と3階に「ららぽーと」を、2階に「アウトレットパーク」を配する。同社としては2業態による複合型商業施設は初めて。日常から非日常的な買い物体験までワンストップで提供する。4階は屋上広場「空の広場」で、イベントステージや遊具などを設置し、カフェも配置する。広場はエントランスやセンターコートなどにも配置して、集い出会うことで活気あふれる空間を創出し、門真市の新たなコミュニティ拠点として、また大阪を代表する商業施設として魅力的な街づくりに貢献していくという。

街づくり再開発事業に伴う、イオングループ出店目立つ

イオングループでは、4月4日に開業する「イオンモール豊川」をはじめ、地域創生型商業施設の3号店となる「ジ アウトレット湘南平塚」、「イオンモール横浜西口(仮称)」、「イオンタウン松原」などが順次開業する予定だ。

注目されるSCの1つがイオンモール豊川で、近接する豊川市民病院や、同市が進める「八幡駅周辺地区のまちづくり」と連携しながら商業、医療、福祉、文化の複合的な地域拠点として、街の賑わい創出の一助となるための施設を目指している。地域の生活者が集える緑豊かなガーデンスペースをはじめ、スポーツやアウトドア体験ができる屋外広場、エンターテインメント施設を配置して、多くのライフスタイル型専門店とともに新たな出会いと体験を創出する街の賑わい拠点づくりに取り組む。イオンモールのノウハウを結集した大型SCだ。

このイオンモールが神奈川県平塚市のツインシティ大神地区で開発中の「ジ アウトレット湘南平塚」も、地域創生型商業施設の3拠点目であり、関東初出店として注目される。「アウトレット」、「エンターテインメント」、「地域との出会い」を掛け合わせたアウトレット業態だ。今回、平塚市が進めている土地区画整理事業の「北の核」と位置付けられるプロジェクトの商業施設の核であるだけに、これまで以上に街づくりへの貢献や地域連携、いわゆるイオンモール流の「地域との出会い」への取り組みが求められよう。

同市をホームタウンの1つとするプロサッカークラブ湘南ベルマーレとオフィシャルクラブパートナー契約を締結予定で、年間プロモーションやイベント企画で連携する。湘南ベルマーレ監修によるフットサルコート(3面)を設置し、サッカースクールを開設するほか、様々な運動プログラムも定期的に開催する予定。またオープンエアのウエストコートに約300インチの大型デジタルサイネージを設置して、スポーツ・エンターテインメントイベントの観戦ができるイベントスペースも設ける。

大型商業施設の開発には、地域特性に応じた「地域共生・共創」の視点が欠かせず、ひとつの新しい「街」を創出して、憩い・集える「コミュニティ拠点」と化し、地域活性化の一翼を担う役割が一段と強く求められている。それが特徴化につながり、その地域における存在価値にほかならない。

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