2022年08月16日

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京阪くずはモール店、大規模改装効果で黒字転換へ

3階を閉じ、1~2階に売場を集約した京阪百貨店くずはモール店。2階の直営部分は、百貨店らしい上質さを環境も含めて打ち出す

昨秋から今春にかけて大規模改装した京阪百貨店くずはモール店が、2022年度(22年4月~23年3月)に黒字へ転換する見通しだ。主に婦人服を扱う3階が長く不振で、赤字体質だったが、昨年8月31日までで同階の営業を終了。売場を1階と2階に集約するとともに、両階の大規模改装に踏み切ると、22年度は5月に2階の売上げがコロナ禍前の19年度比で12.9%増と大きく伸び、面積が改装前から4割ほど縮んだ1階の食品も売上げが前年を捉えるなど好調で、視界は良好だ。

「全国的にショッピングモール内の百貨店は厳しいと捉えており、生き残るための策を(くずはモールを運営する)京阪流通システムと協議する中で、3階の返却を決めた。3階のマーチャンダイジングは一昔前どころか“三昔前”で、業績はずっと厳しい。お客様から婦人服や子供服の要望はあるが、やらないと決断した」

亘千里営業本部くずは店長が大規模改装の経緯を説明する。3階は昨年8月31日で閉じ、1階と2階のリニューアルに着手。1階は先行して昨年3月に洋菓子の「パティスリー ナチュール シロモト」、同4月に和惣菜の「あさ ひる 夕ごはん 豆藤」。同9月に洋菓子の「ボンシャペリー」を入れ、同10月には全国の銘品や銘菓を揃える自主編集売場「美味衆合」と「美味折々」、リカー売場を新装して2階から進物サロンと京阪友の会カウンターを移設、同11月は「フレッシュマート」を一新した。

食品は売場の約4分の3を刷新したが、とりわけ大きく変わったのはリカー売場とフレッシュマートだ。リカー売場には本棚のような什器を配置。陳列する商品には「本を読んでもらうかのように詳細な説明を付けて楽しんでもらう」(亘店長)。フレッシュマートは品揃えを上質化。周辺にスーパーマーケットが多く、価格競争から脱却して独自性を強めた。

例えば、鮮魚売場では全国の漁港で水揚げされた新鮮な魚を、食べ方も含めて提案。精肉売場では「宮崎県産黒毛和牛 宮崎ハーブプレミアム」や「とかち一徹牛」、「沖縄あぐ~豚」を中心に様々な部位を用途別に揃え、青果売場では地場野菜やオーガニック野菜を充実させ、グローサリー売場でもオーガニックや無添加、グルテンフリー、素材にこだわった冷凍食品などを展開する。

2階は直営を婦人用品、化粧品、家庭用品、ビューティー&リラクゼーションに絞り込み、昨年11月に3階からロフトを移し、今年4月に「ジーユー」がオープンした。

大規模改装は五月雨式に完成したが、客の反応は上々だ。食品は什器の変更や導線の整備、進物サロンと京阪友の会カウンターの移設などで売場面積が以前の6割ほどに減ったが、売上げは前年に届いており、リカー売場は3割増。“ライブラリー化”したワインの動きが良く、リカー売場の売上げの半分を占める日本酒も1割増と勢いに弾みが付いた。フレッシュマートは客単価が上昇。いわゆる「天然物」や調味料が好調だ。食品は売上げの約7割を稼ぐ屋台骨。全体では予算を上回っているが、「もっと認知度が上がれば、客数や売上げが伸びるはず。定期的なイベントでPRしていく」(亘店長)。

2階はロフトの売上げが3階の時に比べて25%増と好スタート。店装は刷新したものの、品揃えは大きく変えていないが、隣接するジーユーや同階の「無印良品」とのリレーションが生きた。亘店長は「若いお客様から『無印良品、ロフト、ジーユーで最強だね』と言われる」と笑う。

3階から2階に移設した「ロフト」は売上げが大きく伸長した

ショッピングモールの品揃えでは物足りない、高感度な客に照準を合わせる直営部分は、化粧品がインバウンドを除くと19年度の実績に近付いており、ビューティー&リラクゼーションは19年度を超えてきた。圧縮した婦人用品も同売場対比では2割増で推移。亘店長は「お客様から寄せられる『京都や(京阪百貨店)守口店に行かなくても、良いモノがある』という声が増えてきた。週替わりのイベントスペースも売上げが伸びている」と手応えを実感する。

今後について、亘店長は「食品はいかにスーパーマーケットと差異化できるか。生鮮やグローサリーは直営の利点を生かしていく。お客様の消費行動は速い。バズったモノは、いち早く採り入れる。とにかく『これまでは』から脱却し、ゼロベースの発想と手法で戦っていく」と腹案を明かす。大規模改装の完成と盛況に油断せず、素早く、常識にとらわれない戦略で、安定的に黒字を計上できる店舗に生まれ変わる。

(野間智朗)