2022年07月04日

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【連載】松屋銀座店、客と従業員のマインドを環境に優しく~SDGs 百貨店~

松屋銀座店が昨年10月6日~11月9日に開催したプロモーション「BEAUTIFL MIND 毎日ひとつ私と誰かにいいことを」では、VPにも力を入れた

注)僚誌「ストアーズレポート」2021年12月号に掲載した記事を一部再編集しました

「SDGs」、「サステナブル」、「環境経営」といった言葉が認知されて久しい。今や「持続可能」は小学校の授業にも登場する。百貨店業界の各社も経営の軸足に据え、様々な形で具現化を急ぐ。企業としての大局的な取り組みにとどまらず、店舗単位でもSDGsやサステナブルを掲げたモノやコトが増えてきた。この連載では、それらを紹介していきながら、百貨店業界とSDGsやサステナブル、環境経営との最適な向き合い方、持続を可能にするマネタイズへの道を探る。第2回は松屋銀座店が2021年10月6日~11月9日に開催したプロモーション「BEAUTIFL MIND 毎日ひとつ私と誰かにいいことを」(以下、ビューティフルマインド)にフォーカス。全館規模で1カ月余りに亘って、サステナブルに関連するモノやコトなどを打ち出した。

ビューティフルマインドは、4月の“リベンジ”でもある。「美しい暮らし」を掲げ、「美と健康」や「エシカル」、「サステナブル」などをキーワードに同様のプロモーションを展開したが、当時はコロナ禍が猛威を振るっており、23日には政府が緊急事態宣言を発出。プロモーションを企画した片岸茉紀販売促進部主任は「(予定した)100%はできなかった」と悔やむ。その想いを、ビューティフルマインドに込めた。

ビューティフルマインドは、経済産業省や環境省らが主導する「3R推進月間」である10月をスタートに設定。美と健康にも焦点を当てた4月と異なり、内容はサステナブルに絞り込んだ。

まず、こだわったのが“全館”とネーミング。片岸さんは「4年くらい前にも『エシカル』を切り口に催事を開いたが、参画は一部のフロアにとどまり、全館ではなかった。ビューティフルマインドには『美しい自身の暮らしを追求し、環境にも配慮するマインドを育てたい』という意図を込めた」と説明する。ビューティフルマインドを分かりやすく伝えるため、社内で議論して「毎日ひとつ私と誰かにいいことを」というサブタイトルも添えた。

内容は、客にとって普遍的な行為である買い物が、社会貢献や環境保全に繋がるように工夫した。例えばマイバッグで買い物するとプレゼントがもらえる、化粧品売場の一部のショップでは空き容器の回収に協力するとポイントやプレゼントを得られるなどだ。「ビューティフルマインドのテーマと、大量生産品を仕入れて販売する百貨店のビジネスモデルは合致しづらいが、お客様に(サステナブルや3Rを意識する)きっかけを提供したかった。そして、気軽に参画できるようにも配慮した」(片岸さん)。

“きっかけ”は、他にも多彩に用意した。目玉としては、13~19日に1階のイベントスペース「スペース・オブ・ギンザ」に12のブランドが登場。傷や亀裂も美しさと捉え、鉱物のありのままの姿を生かしたジュエリーを揃える「ジーナ・クワン」、市場に出回らない規格外の花を安価に提供する「ハナネ」、エシカルなバッグ「アアルナ」、生分解性を備える素材を用いたヨガウェアの「リンダワークス」、「マザーハウス」のチョコレートブランド「リトル マザーハウス」(百貨店初)、沖縄県で持続可能な地域社会の育成を目指す「オキナワカカオ」、生産者の想いや土地のアジを届ける「旅するチーズケーキ」は、いずれも「人・社会・地球の未来を考える」をテーマにセレクトした。

昨年10月13~19日には、1階のイベントスペース「スペース・オブ・ギンザ」に、「マザーハウス」のチョコレートブランド「リトル マザーハウス」(百貨店初)など12のブランドが登場

また、地下1階の和洋酒売場ではコルク栓の回収と再資源化を、地上3階の特設スペースでは婦人服の自主編集売場「リタズダイアリー」が扱うブランドのアップサイクルアイテムの展示・販売を、5階の紳士ネクタイ売場では、不要なネクタイをペンケースや名刺入れにリメイクする「ネクタイリメイクイベント」(料金は2200円)を、6階の子供用品売場ではランドセルをミニチュアに加工する「メモリアルランドセル」(料金は1万3200円)を、それぞれ実施。各階では、装飾や陳列に再生コルク、木綿の再生紙からなる「リコットントルソー」を用い、各売場では受け取った後も繰り返し使える布製のギフトバッグを無料で、しかもコースターにもなるチャームを付けて提供した。

不要なネクタイをペンケースや名刺入れにリメイクする「ネクタイリメイクイベント」

「初めて取引先を巻き込んでアップサイクルアイテムを販売するなど、全体として前回よりも内容を進化させただけでなく、事前に各部署の若手を集めて勉強会を開き、情報を共有する、販売員には接客でマイバッグの利用を促してもらうなど、体制も整えた。まさに試金石」。片岸さんは強調する。さらに「プロモーションを継続して社内外に仲間を増やしていきたい」と意欲を燃やす。サステナブルにちなんだ独自のノベルティを作るため、銀座店の屋上でコットンの栽培を始め、すでに1回目の収穫を終えるなど、今後への“種蒔き”にも余念がない。

松屋銀座店は客と従業員のマインドを、より美しく、環境に優しく変えていく。

(野間智朗)