2022年08月14日

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松屋、リアルとバーチャルの融合で新客を開拓

DiOが制作した「デザインコレクション バーチャルストア」。売場で扱う約700点のうち約100点を掲載し、環境や空間など細部まで“リアルさ”を追求した

新たな接点をバーチャルで切り拓く――。松屋は17日、著名なデザイナーや建築家らで構成される「日本デザインコミッティー」のメンバーが選りすぐった商品を揃える、銀座店の自主編集売場「デザインコレクション」のバーチャルストアを開いた。売場で扱う約700点のうち約100点のデザインや色柄、質感などを、ウェブサイトで確かめられる。売場を訪れたときと同等の体験を追求し、バーチャルストアの構築は国宝や世界遺産などのデジタルアーカイブを手掛けてきたDiOに依頼。売場や商品が細部までリアルに再現され、没入感は抜群だ。デザインコレクションはバーチャルに“入口”を増やし、年間の売上げを1.25倍に引き上げる。

松屋にとっては初めてのバーチャルストア、DiOにとっては初めての百貨店とのタッグとなる。松屋の齋藤篤顧客戦略部顧客政策課長は「コロナ禍でインターネット通販に注力してきたが、お客様に店頭で実施したアンケートでは、リアル店舗を訪れる喜びの声が多い。そこでVR(仮想現実)を活用し、遠方に住む人も実際に売場を歩いている感覚を味わえるようにした」と狙いを明かす。DiOにとっても「寺社仏閣を中心にアーカイブ化に取り組んできたが、どう付加価値を提供するかは課題だった。そんな時に松屋さんからオファーが届いた」(吉原知宏事業部長)と“渡りに船”だった。

こだわったのは“リアリティ”だ。VRで一般的な3DCGでなく、約2億4000万画素相当の写真を用いて、商品や売場を精緻に再現した。家具を中心に28点は回転させられ、11点には使い方などが分かる動画を埋め込んだ。

オープンに際しては、デザインコレクションを担当する蓑輪正太郎営業五部リビング・呉服・美術課バイヤーがデモンストレーション。「入口から矢印をクリックして進め、360度を見渡せる。歩幅も工夫し、商品の陳列棚を1つ1つ移動できるようにした。オレンジのマークをクリックすると商品のバリエーションが分かり、『購入』を押すとネット通販サイト『松屋オンライン』に移動し、スムーズに購入できる。商品には選定者のコメントが添えられているが、その名前をクリックすると、日本デザインコミッティーのウェブサイトのプロフィールに飛び、どんな人か、どんな作品を生み出してきたか、詳細に分かる」と機能や特長を説明した。

初の試みだけに、完成までは苦労の連続だった。蓑輪氏は「現代人は『グーグルマップ』をはじめとするアプリで“直感動作”に慣れており、バーチャルストアは『こうなる』と思って操作し、実際に反映されるかが成否を分ける。DiOさんも追求してくれたが、その調整は最も苦労した」と振り返る。苦心したからこそ、「お客様にはリアル店舗とバーチャルストアを行ったり来たりして欲しい。例えばリアル店舗でイスを見て即決できなくても、自宅からバーチャルストアにアクセスすれば、改めて熟考できる。それは大きなメリット」と“双方向”の効果に期待を寄せる。バーチャルストアからリアル店舗に送客できる特典も検討中だ。

今後は、売場の約7分の1にとどまる商品の拡充を急ぐ。バーチャルストアがオープンして以降、26日時点では「新しいお客様の来店に寄与している」(広報担当者)という。リアルとバーチャルの融合による相乗効果は、まず新客の誘引という形で表れてきた。