関東百貨店、2027年のおせちを相次ぎ発表 物価高騰や志向の多様化に対応(上)
関東の百貨店各社は8月24日、一斉におせちの発表会を開いた。大丸松坂屋はコラボレーションした著名人が登場し、想いを語った
関東の百貨店各社が24日、2027年のおせちを発表した。物価の高騰、志向やシーンの多様化などを踏まえ、コストパフォーマンスやカスタマイズ性に長けたおせち、一人用、スイーツや肉などの“特化型”、人気のキャラクターらとコラボレーションした“推し活”仕様などを拡充。若年層に人気のインフルエンサーと組んだり、人気のテレビ番組とタイアップしたりして、新客の獲得にも余念がない。百貨店各社は新型コロナウイルス禍の「巣ごもり需要」で売上げを伸ばしたが、一段落して以降は勢いが鈍ってきた。百貨店に求められる上質、高級なおせちを引き続き揃えつつ、新たな仕掛けを用意して、拡販と客層の拡大につなげる。
百貨店のおせち商戦にとって直近のターニングポイントはコロナ禍だった。外出の自粛を余儀なくされ、年末年始を自宅で過ごす人々が買い求めたからだ。高島屋と大丸松坂屋百貨店は20年から26年にかけて、おせちの売上げが約1.3倍になった。
アフターコロナを迎えても需要は底堅い。高島屋や東武百貨店は26年も前年実績を上回った。大丸松坂屋は0.7%減だったが、売上げの半分以上を占める限定商品はプラスだった。限定商品は20年から右肩上がりで、26年までに約86%増えたという。「おせち+1」と呼ぶ、鍋料理や迎春料理なども26年は20年比で約2.4倍に膨らんだ。
オードブルやスイーツも含め、通常のおせちにプラスアルファできる商品は、おせち商戦の伸びしろだ。高島屋では「スイーツおせち」が毎年早期に完売し、選択肢として確立。新規に「パパブブレ」の「グミおせち」(6801円)を投入し、勢いに弾みを付ける。大丸松坂屋では「ルタオ」の「スイーツおせち」(2万4000円)が新登場。そごう・西武は初めて「デザートおせち」(1万800円)を販売する。松屋は12月30日に配送可能な「プラス一品」の鍋セットの種類を増やした。

高島屋はグミのおせちを投入
百貨店各社は日本の消費をけん引する推し活にも照準を合わせる。高島屋は「『ベルサイユのばら』55周年記念おせち」(2万4840円)や「リラックマおせち」(2万9700円)、「ウルトラマンおせち(KANSAIデザインコラボレーション)」(3万2130円)を、そごう・西武は「スーパー戦隊シリーズおせち二段重」(2万6460円)を、それぞれ新規に展開する。東武百貨店は「ノラネコぐんだん コラボおせち 一段」(1万800円)を初めて企画し、27年で絵本シリーズの誕生から15周年を迎えるノラネコぐんだんのファンを呼び込む。元宝塚歌劇団の彩風咲奈氏とのコラボも継続し、「彩風咲奈コラボおせち 二段重」(2万4840円)を販売する。
おせちを買う習慣がない若年層との接点を設けるため、SNSで影響力を持つ著名人との協業も目立つ。大丸松坂屋は、料理家の長谷川あかり氏に初めて監修を依頼。「おつまみ風一段 ニューおせちBOX2027」(1万8500)円を販売する。そごう・西武は、俳優の池田航氏が監修した「年越し洋風オードブル&迎春和風オードブル」(2万5000円)を初めて提案する。西澤大輔MD2部フード担当マーチャンダイザーは「若年層との接点にしたい」と期待を寄せる。
今年の年末年始は、一般的に12月29日~1月3日の6連休とされるが、有給休暇を取得して9連休とするビジネスパーソンも多いとみられる。通常であれば旅行者が増え、おせち商戦には逆風が吹く。しかし、物価の高騰や円安などが暗い影を落とす。百貨店各社はおせちの需要は減らないと予想し、コスパも意識した品揃えで前年実績のクリアを狙う。
高島屋、コラボやカスタマイズで独自性
高島屋は①コラボレーション②カスタマイズ③オードブル系④昭和レトロ⑤界隈系⑥食志向⑦バイヤーの一押し――で独自性を強め、「今年も前年に対してプラスを目指す」(竹内友梨MD本部食料品部バイヤー)。
①は文字通り有名店や人気のシェフのコラボで、日本料理鈴なり、ルカンケ、中國名菜 孫による「夢の饗宴おせち 和・洋・中 三段重」(10万8000円)、たん熊北店、三國、トゥーランドット臥龍居による「和・洋・中 三段重」(4万5360円)などを揃える。
②は名店や有名なシェフが監修した35品から12品ないし9品を自由に選べる「よりどり彩りおせち」で、くりきんとん尽くしも可能だ。毎年人気だが、「前年から8品をリニューアルしたほか、これまで12品のみだったインターネット通販でも9品で買えるようにした」(荒木卓徳クロスメディア事業部販売部MD第2グループグループマネジャー兼バイヤー)。料理ごとに価格が異なり、9品で1万3500円~、12品で1万8000円~となっている。

高島屋の「よりどり彩りおせち」は35品から12品、あるいは9品を自由に選べる
③では中国の四大料理を食べ比べられる「中国四大料理オードブル」(1万7820円)を新発売。④では時代性を映した料理からなる「昭和・平成・令和 家族三世代おせち」(2万8620円)、昭和のお子様ランチ風の「昭和レトロオードブル(アデリアレトロ柄)」(1万800円)を新たに打ち出した。
⑤は上述のキャラクター系やスイーツ系で、⑥では昨年完売した「ソロ活おせち」(6912円)にハイカロリーな「ギルティバージョン」と「低カロリーバージョン」を追加した。⑦は通販の売上げで18年連続1位の「髙島屋おせち三段重」(2万3280円)、売上げの一部を被災地の支援に寄付する「北陸支援おせち 三段重」(2万2680円)などからなる。
高島屋は店頭で約900種類、ネット通販で約1150種類のおせちを揃える。ネット通販では8月19日から受け付けており、店舗では9月24日から順次販売を始める。
大丸松坂屋、販売チャネルの拡大に本腰
大丸松坂屋は「販売チャネルの拡大、全国配送が可能な冷凍と売れ行きが良いオリジナルの強化で、前年比3%増の売上げを目指す」(浅川幸治営業本部MDコンテンツ開発第2部おせち料理担当バイヤー)。
販売チャネルの拡大では、SNSで高い影響力を有する長谷川あかり氏や料理研究家でワインソムリエの石橋絵理氏、人気テレビドラマ「VIVANT」とタイアップ。SNSやテレビドラマを通じて、おせちを買ってこなかった人々を取り込む。
石橋氏の監修は昨年に続く2回目で、昨年は早期に完売した上、配送の問題で購入できる地域が限られていたため、全国配送に変更。「おつまみ風一段 “えり”すぐり マリアージュおせち」(1万8500円)として販売する。石橋氏は「左上から右に向かって食べるコース料理で、ゆっくり食卓を囲む時間を楽しんでほしい。和洋中などの枠にとらわれず、世界を旅しているような気分になれる。(料理の上に乗せる)クリアシートにはワインとのペアリングを記載しており、ワインを選ぶところから楽しんでほしい」と語った。
百貨店のおせちを初めて手掛けた長谷川氏は「普段のレシピは手順をそぎ落として作成するが、ただひたすらに味わってほしい(という想い)に全振りした。食べると発見があり、料理のインスピレーション、モチベーションが湧くように工夫した。おせちを買ってみる入口になれたら、大人数の集まりでの変わり種として追加してもらえたらいい。こだわったのは色合いで、『どんな味がするのだろう』という高揚感を与えたい」と説明した。

SNSで大人気の料理家、長谷川あかり氏が初めて監修したおせち
著名人との協業では、ウイスキー文化研究所が認定するウイスキーの最難関資格「マスター・オブ・ウイスキー」の初代合格者である、サントリーの佐々木氏が監修した「和・洋風一段 酔いしれる新春ペアリング重」(3万8000円)が、昨年の外商限定を経て一般販売。おせちと人気のウイスキー「山崎」のペアリングを堪能できる。佐々木氏は、おせちとウイスキーの相性について「最初は『どうなんだろう』と考え込んだが、ウイスキーは水割り、ロック、1対1、ストレートなどでアルコールの度数を変えられ、それによって(おせちの)甘い、しょっぱい、辛いなどに合わせられる。飲む、食べる順番による味の変化が面白く、おせちとウイスキーはむしろ1番合うのではないか」と力を込めた。
VIVANTとのタイアップは「日曜劇場『VIVANT』乃木家のおせち」(2万8000円)で、乃木家の家紋を配したオリジナルの重箱に入れて届ける。詳細は9月13日の午後10時に発表する。
大丸松坂屋は数年来、全国に配送できる冷凍を重要視しており、品揃えを前年の約1.1倍に拡充。例えば、初めて開発した一人用、初登場となる小樽洋菓子舗ルタオの「スイーツおせち2027」(2万4000円)が含まれる。
オリジナルのラインナップは前年比0.6%増と微増だが、20年比では約2倍に達した。売上げの構成比も半分を超えており、前年は上位20の全てがオリジナル。今年も、8年連続で売上げが1位の大原千鶴氏が監修した「口福おせち 未 和風三段」(3万2400円)、販売数量で4年連続1位の京彩宴が監修した「和・洋風 二段 天禄」(1万1880円)を軸に、拡販を狙う。天禄は価格を5年間も据え置いており、46品で1万1880円というコスパもアピールする。
臼井満執行役員営業本部MDコンテンツ開発第2部長は「おせち市場は2010年頃から横ばいだが、当社のシェアはコロナ禍前に比べて約1.3倍になっている。高品質、オリジナルを追求してきたのは間違っていない」と自信を示した。
大丸松坂屋は首都圏の店舗で403種類、関西の店舗で498種類のおせちを揃え、ネット通販では9月17日の午後2時に、店舗では10月1日に販売を始める。
※関東百貨店、2027年のおせちを相次ぎ発表 物価高騰や志向の多様化に対応(下)に続く