2025年08月21日

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大丸松坂屋の「明日見世」、ブランドの幅と契約形態が拡大

明日見世は8月20日にブランドを一新。3カ月ごとに入れ替えており、今回は23ブランドを揃える

大丸松坂屋百貨店が大丸東京店の9階で運営するショールーミングスペース「明日見世」が、“幅”を広げている。出品するブランドと契約形態のバリエーションだ。8月20日に一新されたブランドには、初めてNPO法人が名を連ねるとともに、オフィス向け家具のメーカーであるオカムラは新たな契約形態「BRANDING」を使って子供の学習用の机や椅子などを揃える「mirumio」を出品した。BRANDINGで契約すると、大丸東京店のフロアやメディアなどを使ったプロモーションでPRの効果を最大化できる。明日見世は昨年9月18日に4階から9階に移設・拡大。以降は客数が急増し、ブランドから得る出品料や物販の売上げなどからなる収益性も大きく向上している。

明日見世は約3カ月ごとに新装しており、20日には継続と新規を併せて23ブランドが登場した。その一角に、認定NPO法人の国連WFP協会が手掛ける「レッドカップキャンペーン」がある。国連WFPが給食を入れる容器として用いる赤いカップを購入すると、売上げの一部が学校給食支援に役立てられる。明日見世がブランドの商品でなく、プロジェクトを紹介するのは初めてだ。今後は地方自治体との協業も視野に入れる。

国連WFP協会が手掛ける「レッドカップキャンペーン」

契約形態は従来、最も出品料が安い「STANDARD」(1カ月当たり30万円)、STANDARDより広いスペースで陳列できる「STANDARD PLUS」(同60万円)、ポップアップストアのように展開できる「PREMIUM」(同200万円)の3種類だったが、「CONNECT」(同95万円)とBRANDING(同110万円)を追加。CONNECTは大丸松坂屋百貨店のアプリ「大丸・松坂屋アプリ」を活用した来店促進、客へのサンプリングやアンケートなどが可能だ。オカムラはBRANDINGでmirumioを出品。明日見世側は「ミキハウス」や「プチバトー」の近くに配置し、9階を訪れるファミリーの目に触れやすくした。BRANDINGという契約形態ならではの“特典”だ。

子供の学習用の机や椅子などを揃える「mirumio」

明日見世は主にD2Cブランドで構成されるが、そのメーカーの評価は高い。東京駅に位置するトラフィックの優位性だけでなく、「アンバサダー」と呼ぶブランドや商品に精通したスタッフの存在が支持されている。メーカーにとって、アンバサダーが客に商品をどう説明するかは非常に重要だ。ブランディングに関わる。実際、客を装って立ち寄るメーカーの社員は少なくない。しかし、総じて「ここまでやってくれるのか」と驚き、好印象を抱くという。

メーカーの多くはブランディングが目的だが、リアル店舗の1つと捉えて1年間に亘り出品を続け、そのコストを上回る売上げを稼ぐメーカーも現れた。インターネット通販サイトと直営店で商品を販売するが、直営店の立地が悪く、大丸東京店に「商品を確かめられる場所」の役割を託した結果、多くの客が訪れて買って帰るようになった。

今回も出品しているが、第一工業製薬の「NIOCAN」は明日見世を足掛かりに販路が拡大。セレクトショップでも扱われるようになった。

こうした成功体験は、口コミなどでメーカーに伝播する。明日見世のマネージャーを務める大貫哲也本社経営戦略本部DX推進部デジタル事業開発担当は「1年間、3回連続など契約を継続するブランドが増えている」と手応えを実感する。

21年10月6日にオープンしてから、間もなく4年。当時はホットワードだった「ショールーミング」が次第にトーンダウンしていく中、明日見世は着実に成長軌道を描く。

(野間智朗)