2025年05月02日

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アンドエスティの旗艦店が原宿にオープン、年間客数100万人目標

左から、アンドエスティ取締役CBO小林千晃氏、スタイリングライフ・ホールディングスNBD事業推進本部CK事業部のシモンズティアラ氏、店長の林歩美氏、アンドエスティ事業戦略室 シニアマネージャーの長島雄太氏、アダストリア/アンドエスティ代表取締役CEO木村治氏

アダストリアグループのアンドエスティは4月24日、JR原宿駅から徒歩2分のWITH HARAJUKU 1階に、フラッグシップストア「and ST TOKYO」をオープンした。店舗面積は約230坪、取扱いアイテム数は2000種類以上。「ニコアンド」「ローリーズファーム」など、アダストリアグループの人気ブランドだけでなく、IP・ブランドコラボを展開し、2週間~1カ月で入れ替わるポップアップも開催していく。若年層やインバウンドも取り込みながら年間客数100万人を目指す。

アダストリアグループは、1973年に紳士服業態からメンズカジュアルに転換するなど、顧客や時代のニーズに合わせて変化してきた。現在はウェブストア141店舗を含め国内外で1600店舗以上を展開。25年2月期売上高は2931億円、国内ウェブ売上高は728億円で、24年2月期時点では国内アパレル業界3位にランクインしている。25年度は5回目の変革を迎え、9月にHD体制への移行を予定。その最初のフェーズとして24年12月にアンドエスティを分社化した。

アンドエスティはアダストリアグループの公式ウェブストアを運営する。ECモールは自社以外に他社ブランドも取り扱い、25年4月時点で33ブランドが出店。会員数は2000万人を超える。会員向けマガジンも開始している。

同ショップはリアルとデジタルを融合した新しいショッピング体験を進めるフラッグシップストアとなる。「すきとつながるメディアストア」をコンセプトに、他社ブランドのアイテム販売やIPコラボ、サイネージ利用、サンプリングなどで協業を図る。30年までにウェブ流通総額1000億円を目指し、メディアとしての機能も併せ持った「Play Fashion!プラットフォーマー」の地位を確立していく。

一面ガラス張りの外観は、通行人への訴求力も高い

特徴的なのがJR原宿駅前の通りに面した入口一帯のエリア。飲食店コーナーを併設し、オープニングは「オイモトーキョー」が限定スイーツを販売する。その向かいに「PAUL&JOE」のコスメを揃え、その先では5月下旬までサンリオキャラクターとのコラボアイテムや限定アイテムを販売する。店内には巨大なハローキティが出現し、絶好の撮影スポットを提供。4月26日まではハローキティなど4キャラクターが集結したり、買い物金額に応じて先着でキャラクターとの撮影も楽しめた。原宿カルチャーをモチーフにした20種類のキャラクターの巨大ガチャが登場し、ハローキティをARフィルターで見つけるARゲームも導入する。5月24日からは「名探偵コナン」とのコラボが予定されている。

サイネージが目を引くサンリオキャラクターズのコーナー。巨大なキティもスタンバイする

話題を集めているのが20年に日本から撤退した「キャスキッドソン」とのコラボだ。「ローリーズファーム」エリアでスタイリングコラボを展開している。日本市場における輸入販売権とライセンス権を取得しているスタイリングライフ・ホールディングスNBD事業推進本部CK事業部のシモンズティアラ氏は「アンドエスティが持つ2000万人の会員基盤、競合ではなくブランドとの相乗効果、インフルエンサーでもある親近感・信頼感のあるスタッフ」を理由に同社を選んだと語る。日本に再上陸した直営店とは異なる展開に期待を寄せており「既存顧客だけでなく、新たに20~30代の女性に向けて日本限定の商品も開発し、毎月新作を発表していく」。日本人の体型やサイズに合わせたガーリーテイストなワンピースやトップス、「KNT365」とコラボしたニットバッグやシュシュ、スマホストラップなど、日本人女性が手に取りやすいラインナップとなる。

ローリーズファームとキャスキッドソンそれぞれの魅力で相乗効果を生み出していく

自社ブランドからは、「ローリーズファーム」「ヘザー」「ハレ」が出店する。ライフスタイルブランドの「ラコレ」は東京土産やイラストレーターのRimo書き下ろしイラストグッズを販売し、インバウンドを意識した品揃えとなる。そのほか、バターサンド専門店「PRESS BUTTER SAND」の人気商品を限定パッケージデザインで数量限定販売し、カスタマイズできるチャームのコーナー、サブカルチャー的なもの、古着加工を施したものなど、Tシャツのコーナーもある。Tシャツは10月頃まで新作が続々と入荷予定だ。

夏はレジャーに焦点を当てるなど、季節を意識した展開も検討している

店内ではアダストリアの人気ブランドが集結するだけでなく、IPコラボ、ポップアップなど協業が展開される

同社は3つの成長戦略を掲げる。オープンプラットフォーム化推進、グローバル市場開拓。そしてもう1つが「ヒトを中心にした価値の提供」だ。シモンズティアラ氏も同社を選んだ理由として語る。取締役CBOの小林千晃氏が「強み」というスタッフには、それぞれ熱心な顧客が付いている。店内にはECモール上で全国の人気スタッフがアイテムを紹介する「スタッフボード」というコンテンツと連動したエリアもある。4月24、26、27日は、その人気スタッフ自身が店頭に立ち、同店限定トートバッグを販売した。

スタッフボードはスタッフの声で立ち上がり、現在4000人以上が投稿している。フォロワー獲得方法などSNS活用の社内ゼミも盛んだ。スタッフボード経由の売上げとフォロワー数から、ランキング形式で上位者が殿堂入りする制度があり、第1期のトップ3に輝いたうちの1人Hinechi氏は「接客が好きでもっとお客さんとつながりたくてSNSをはじめた」。同じく殿堂入りした新潟の店舗スタッフだったバヤコ氏は「自分が好きなものを紹介して、それを好きになってもらえて楽しい」という。「スタッフの声を取り上げてくれ、どんどん活躍の場を与えてくれる。希望が思った以上に早く実現するスピード感も会社の魅力」と2人は口を揃える。「公募制を採用しており、例えば海外店舗に行きたければ立候補できるためやり甲斐がある」とも。

自身がデザインしたトートバッグを手に。Hinechi氏(左)とバヤコ氏(右)

店長の林歩美氏は新卒で入社し、「and ST MitteN府中」「and ST エミテラス所沢」を経ての抜擢。「インバウンドやプロモーション対応など他の店舗の店長では経験できないことがここではできる」と目を輝かせる。「まず1年目は多くの人に店を知ってほしい。様々なブランドとのコラボも実現していきたい。そこでの新たな出会いから新しい展開に発展していく可能性があり、私たちにできることが無限に広げられる。それを楽しみにしている」。

この店でたくさんの人とつながっていきたいという林歩美氏

小林氏は「ここではECモールと同じようなビジネスモデルを構築していきたい。商品を販売することに限った収益を見込んでおらず、サイネージの活用や店内音楽の配信といったメディアとしての収益やポップアップ、サンプリング配布など、別のビジネスの形も視野に入れている。他社ブランドやクリエイターからの自発的な企画が持ちかけられることも期待している。当社のECモールに出店を検討している企業の受け入れも歓迎する。『and ST TOKYO』は実験の場であり、我々のやりたいことが詰まっている。原宿はポップアップが少ないと聞く。様々なブランドとつながり、原宿の魅力を国内外の顧客にも発信したい。これまでアプローチが及ばなかった若年層やインバウンドに取り組み、WeChatでの発信、多言語に対応するスタッフも配置する。これを足掛かりとして国内外の主要都市に展開していきたい」と意気込みを述べた。

(北野智子)