2026年01月10日

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‟カカオショック”を乗り越えろ 百貨店の2026年バレンタイン商戦

高島屋は不二製油のノンカカオ素材「アノザM」を使った商品を展開する

カカオ豆の価格高騰「カカオショック」が2026年のバレンタイン商戦に直撃する中、百貨店各社はあの手この手で打開策を練る。そごう・西武は「チョコか、チョコ以外か」をテーマとして、チョコレート以外のスイーツを拡充。高島屋は、不二製油が昨年開発したカカオ風味素材「アノザM」を使った商品を販売する。松屋は、イートインのデザートメニューを充実させ、限定性の高い体験価値を訴求する。

カカオ先物相場が歴史的な高値を付けたのは2024年で、その後ピークを脱したが、依然としてコロナ禍以前の水準よりは高い。物流コストの増大や、為替市場の円安基調も追い討ちを掛け、多くのチョコレートメーカーは値上げや内容量の見直しを行っている。百貨店のバレンタイン商戦はここ数年好調だが、何らかの対策は欠かせない。

“チョコ以外”を強化するそごう・西武、コーヒースイーツが新登場

チョコレートのラインナップでは、そごう・西武限定ブランドを取り揃える

「コーヒーを食べる」という新たな切り口のスイーツ「モカブル」

そごう・西武は、昨年にチョコ以外のスイーツが好調だったことを受け、今年のテーマを「チョコか、チョコ以外か」に設定。チョコ以外としては、焼き菓子やグミ、羊羹など、前年の2倍の品揃えを用意した。売上げ目標はチョコ以外で50%増、チョコレートを含めた全体で10%増を目指す。

25年のバレンタインで、チョコ以外の商品の売上げが約4倍と大幅に伸長した。マーチャンダイジング部フード担当の杉田大樹マーチャンダイザーは、「焼きたてのフィナンシェなど、『ここでしか味わえない』特別なものであれば、チョコ以外も購入する方が多かった」と話す。

‟チョコ以外”の目玉として、コーヒー豆を使った新スイーツ「モカブル」が新登場する。コーヒー豆を微粉砕したものを使用しており、豆が持つ味と香りを楽しめる。36g入りで1280円、12枚入りで2090円。チョコレートでは、日本初上陸ブランドや、そごう・西武限定ブランドを多く揃えることで限定感、特別感を訴求する。日本初上陸は「メゾン・コンスタンティ」など計4ブランド。

なお改装工事中の西武池袋本店は、まだ催事場がオープンしていないため、地下1階の食品売場を中心に展開する。3階化粧品売場のプロモーションスペースでもポップアップを開催し、4階のカフェ「ル カフェ ブノワ・ニアン」と6階の「ラルフズ コーヒー」ではスイーツメニューを提供する。

高島屋、不二製油のカカオ代替チョコレートに着目

不二製油の石渡暁之氏(左)と、高島屋の松宮香織バイヤー(右)

人気のイートインメニューも多数用意する。「Dining33」は浅井拓也シェフパティシエが、飴細工を使ったスイーツを実演販売する

高島屋は、海外の人気ブランドや日本初上陸ブランドなどに加えて、カカオを使用しない代替チョコレートを販売する。25年に誕生したミルクチョコレート風味の新素材「アノザM」を、「メゾン ショーダン」「トシ・ヨロイヅカ」など人気の4ブランドが使用し、新商品を開発。「カカオレススウィーツ」として高島屋限定で販売する。

アノザMは、キャロブ(イナゴマメ)、エンドウ豆、植物油脂などが原料の素材。不二製油が開発した。同社チョコレート事業本部日本事業部門チョコレート開発部第一課の石渡暁之課長は「チョコレート製造メーカーとして、素材を安定して長期的に供給したい想いがあった。味や品質には自信があり、今回のようなショコラブランドとのコラボを広げていきたい」と語る。

高島屋MD本部食料品部課長の松宮香織バイヤーは「代替チョコレートは最近増えているが、アノザMが、お客様に一番おいしいものを届けられると思った」と話す。「顧客向けの試食会では、カカオ豆を使っていないと説明すると『えっそうなの』と驚かれた。代替チョコレートは技術の革新も目覚ましく、消費者にもじき定着するのでは」との見方を示す。

物価高対策としては、個包装で低単価な商品を用意する。高価格な海外ブランドから低単価な商品まで幅広く揃えることで、多様なニーズに応える。昨年のバレンタインは店頭が好調で、売上高が前年比10%増を記録した。今年は5%増を目指す。

松屋、和素材にフォーカス 人気のデザートメニューも充実

フレンチレストラン「レストランローブ」がコース料理を提供する(写真は平瀬祥子シェフパティシエ)

青森県産の食材を使った「浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)」

松屋銀座店は「五感で楽しむカカオ」をテーマに、できたてのデザートや酒とのマリアージュが楽しめるイートイン・実演メニューを充実させる。全23ブランドを集積し、一皿ずつ目の前で仕立てて提供されるコースメニューが初登場する。国産素材を使ったチョコレート、世界のカカオ生産者に寄り添うブランドも多数用意する。

チョコレートの値上げが話題となる中、同社のアンケート調査では、今年のバレンタインチョコの予算は本命(配偶者やパートナー向け)チョコが5000円超、自分用チョコが初の1万円超となった。昨年と同等、または増やす人が多数派を占める。価格が上がっても購買意欲は衰えないと考え、特別感やライブ感の強化に傾注した。

イートイン・実演は同店催事で人気のカテゴリーだ。食品部食品二課MD担当バイヤー(課長補佐)の小泉翔氏は、「昨年のバレンタインは売上高が前年比2割増となり、過去最高を記録した。これはイートインの集客効果も大きい」と話す。今年の目玉は東京・西麻布のフレンチレストラン「レストランローブ」によるコースメニュー「ムニュカカオ」で、3種の料理が1皿ずつ目の前で仕上げられ、提供される。価格は、アルコールドリンク付きで1万8700円。

国産素材を使用したチョコレートブランドは、昨年より3割増加。沖縄でカカオを栽培し、自社工房でチョコレートを製造する「オキナワカカオ」などを展開する。今年は会期が前年より4日少ないため、売上高は前年並みを目標とする。

(都築いづみ)