2024年07月27日

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J.フロントが共創型オープンイノベーションラボ、空間コンピューティング時代のビジネス創出へ

「Apple Vision Pro」を活用したユースケース創出や社会実装を促進する

J.フロント リテイリング(以下、JFR)は4月24日、空間コンピューティング時代の事業創出を目的とした共創型オープンイノベーションラボ「STYLY Spatial Computing Lab」(以下、SSCL)を発足した。株式会社STYLYとKDDIとタッグを組み、STYLYが提供するXRプラットフォームを活用して、Appleの空間コンピューター「Apple Vision Pro」向けのユースケース創出から社会実装まで、次世代ビジネスの創出に向けた研究開発を行う。戦略パートナーとして、テックカルチャーメディア「WIRED 日本版」(合同会社コンデナスト・ジャパン)も参画。4社各様の技術とアセットを結集して、Apple Vision Proにおける新たなライフスタイルコンテンツの提供を促進する。

発足の背景には、XR技術を軸とした空間コンピューティング市場の拡大がある。2024年2月にアメリカでApple Vision Proが発売され、今後さらなるヘッドマウントディスプレイの革新や普及が世界中で起こると考えられる。Apple Vision Proは、デジタルコンテンツを現実世界とシームレスに融合しながら、実世界や周囲の人とのつながりを保てる空間コンピューター。iPhoneの登場によりライフスタイルが大きく変化したように、次世代デバイスとして期待されるApple Vision Proで、これまでにない大きなライフスタイルの変化やビジネスチャンスの到来も予想される。

一方で、未踏領域である空間コンピューティング市場への参入障壁は高い。複雑な空間コンピューティングという概念の理解や、体験デザインから開発、実装までのハードルの高さなど、事業者が単体で参入するにはリスクが大きい。そこで、JFRは空間コンピューターの可能性も含めて各社の強みや知見を生かしながら研究開発を行い、空間コンピューティング時代の新たなライフスタイルコンテンツを国内外へ発信していくSSCLを発足した。

SSCLは、Apple Vision Proをターゲットデバイスに、空間コンピューティング時代のビジネス創出を通じて、新たなライフスタイルの提案を目指す。まずは、STYLYのXRプラットフォームと9万超のグローバルクリエイターコミュニティのクリエイティブ力、WIRED 日本版のグローバルメディアの編集力、KDDIが持つエンタメコンテンツ力やメタバース・Webサービスの技術力、JFRのリアルアセットを通じた顧客接点を掛け合わせ、開発を進める。発足と同時に新たな参画企業も募集。空間ディスプレイの普及に伴い、日常がエンターテインメント化していくこれからの社会において、人々のライフスタイルに関わるインターフェイスのXR化を様々なコラボレーションパートナーと共に提案していく。

株式会社STYLY執行役員兼CMO兼STYLY Spatial Computing Lab所長の渡邊遼平氏

参画する各社の役割は分ける。SSCL主催のSTYLYは➀総合窓口およびSSCLの運営②XRプラットフォーム「STYLY」の提供③コンサルティング④XRコンテンツの制作⑤各種情報発信、戦略パートナーであるWIRED 日本版は➀空間コンピューティング市場に関するユースケースリサーチ②コンテンツ詳細化ワークショップの設計・運営③未来を実装するテックカルチャーメディア『WIRED』での情報発信――を担う。共創パートナーであるKDDIは➀高精細なXRコンテンツに有用な5G SAなど先端の通信ネットワーク環境提供②空間伝送・空間音響表現などのXR技術連携③「TELASA」などの映像サービスを中心としたコンテンツパートナー連携④「αU」などのメタバース・Web3サービスの技術協力⑤auスマートパスプレミアムなど既存顧客接点の提供。同じく共創パートナーのJFRは➀グループの商業施設 「パルコ」 「大丸」 「松坂屋」 などの生活者との接点提供②商業施設運営で養ってきたコンテンツ開発力の提供③新たなライフスタイルコンテンツ(プロトタイプ版)の実装と検証――となる。

SSCLの実施内容については、主に6つとなる。まずは「空間コンピューティング市場に関するリサーチレポートの提供」で、WIRED日本版編集部が担当。メディア視点で編集された独自レポートで、マーケット動向を読み解く上で重要なインサイトを獲得する。

2つ目は、ユースケース創出に向けたデスクトップリサーチからワークショップの実施、方針策定、企画立案までをサポートする「コンテンツ詳細化ワークショップ」。3つ目は「プロトタイピング」で、コンテンツ詳細化ワークショップにて立案された企画に対してSTYLYを活用したプロトタイピングを実施し、社内外のユーザへの体験会を通じて得られた意見を参考にブラッシュアップを進め、空間コンピューティング時代のユースケースの具体化を図る。4つ目は「Apple Vision Proの体験機会の創出」で、Apple Vision Proに関してSSCLのサポートの下、参画企業が開発などで自由に利用できるほか、一般顧客向けの体験会や実証実験での利用も可能にする。5つ目は、定期的なイベント開催を通じて参画企業同士の交流の場を提供する「参画企業同士のコミュニティ」。6つ目は、WIREDでSSCLの活動内容を紹介する「WIREDを軸とした情報発出」となる。そのほか、SSCLのオウンドメディアやプレスリリースなどで、国内外のメディアにアプローチする。

JFL執行役常務デジタル戦略統括部長兼大丸松坂屋百貨店取締役の林直孝氏

今回のSSCL発足について、JFL執行役常務デジタル戦略統括部長兼大丸松坂屋百貨店取締役の林直孝氏はコメントを発表。「STYLY社とは2017年からXR領域の取り組みでご一緒し、お互い『空間を身にまとう時代』が来ることを待ち望んできましたが、今回Apple Vision Proの発売によって、いよいよその動きが本格化しようとしています。このラボを通して、ARやMRといったテクノロジーを掛け合わせることで空間の価値を拡張し、商業施設ならではの『LBX(Location Based Experience)=その場所に行かないと体験できない価値』をどう高められるか、検討していきたいと思っています」とした。