2024年10月10日

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2024年に開業する大型施設 JRとイオングループ攻勢

「グラングリーン 大阪」のうめきた公園サウスパーク グラングリーン大阪開発事業者提供

今年2月1日に豊洲市場に隣接して開業した、温泉と商業施設からなる「豊洲 先客万来」。国内外からの客で賑わい、インバウンドが本格的に復活したと印象付ける。豊洲 先客万来を皮切りに、今年も大型の商業施設や複合施設の開業が相次ぐ。その特徴はJR系とイオングループの攻勢と、大都市を中心に再開発事業による大規模複合施設の竣工だ。SCでは交流や集いの場となる広場やステージの開設に加え、フードコートやフードホールの拡充、食物販店の集積によって「食」の拡大路線を強めているが、複合ビルにおいても低層階に複数フロアで商業施設を設け、食を主役にした施設づくりに注力。近隣型の商業施設は日常性の高いテナントを入れ、地域密着度を強めている。

4月25日にオープンする「SOCOLA 所沢」のイメージ

JR系の新規開業は枚挙に暇がない。JR四国が高松駅北側に開業する新駅ビル「TAKAMATSU ORNE(タカマツ オルネ)」、JR西日本がJR福井駅構内にオープンした商業施設「CURU-F(くるふ)福井駅」、JR東日本では新潟駅の高架下に誕生する「CoCoLo新潟(ココロ新潟)」、青森駅に直結した複合型の「&LOVINA(アンドラビナ)」、国立駅南口に開くJR東日本グループ初となる木造商業ビルの「nonowa国立SOUTH」、埼京線南与野駅西口の「Kaya-Machi」、新宿駅の改札内のエキナカ商業施設「EATo LUMINE(イイトルミネ)」などだ。

耳目を集めたのは、3月16日の北陸新幹線の金沢―敦賀駅間の延伸開業と同時にオープンしたCURU-F福井駅や一部施設を新幹線延伸開業に合わせて先行オープンさせた複合施設の「FUKUMACHI BLOCK」だ。延伸開業で福井市民や旅行者が押しかけ、福井駅構内や駅周辺が賑わった。CURU-F福井駅は、福井駅高架下商業施設「プリズム福井」を建て替え、売場面積を1.4倍に拡大(約3700㎡)して44ショップを集積。福井が誇る逸品、地元で話題の和洋菓子、デイリーコンビニエンス、上質な生活サポート、お食事処、サービスなど7つのゾーンで構成されている。

FUKUMACHI BLOCKはJR福井駅西口前の再開発事業。地上28階、高さ約120mのホテル・オフィス棟と地上28階、高さ約100mの住宅棟と300台を収容できる駐車場棟からなる大型複合施設(延床面積約7万540㎡)で、商業、業務、ホテル、住宅等で構成される。全体の竣工は5月の予定だが、北陸新幹線延伸開業に合わせて商業フロアの核となるフードホール「MINIE(ミニエ)」(29店舗入居)やホテル(コートヤード・バイ・マリオット福井)、駐車場などを先行オープンして駅前の賑わいづくりに一役買った。

新店の開業ではないが、西武福井店で北陸新幹線福井-敦賀開業を記念した「出前!エキュート&グランスタ東京in福井」(会期:3月27~31日)が6階催事場で開かれた。福井県とエキュート、グランスタなどを運営するJR東日本クロスステーション デベロップカンパニーによって実現した同催事は、昨年10月のプレ開催に続いて2回目。初回より規模を拡大して開催した今回は、西武福井店でエキュート、グランスタ東京で人気の菓子やサンドイッチなどを販売。福井県内初出店のブランドや限定品を多数取り揃え、一部商品は北陸新幹線を使用した列車荷物輸送サービス「はこビュン」を活用した。さらに、今回は実演コーナーを設置。出来たて販売も行った。

JR東日本クロスステーション デベロップメントカンパニーは、東京駅においても北陸新幹線延伸開業を記念してリアルな場とバーチャル空間を融合させた「Tokyo EkiVerse(トーキョーエキバース)」(会期:3月16~31日)を開いた。福井県の協力を得て福井県公式恐竜ブランドキャラクター「Juratic」と福井県マスコットユニット「Dinoはぴねす」のアバターを登場させ、東京駅丸の内駅舎周辺をバーチャル空間に再現。空間内では歴史、自然、文化など福井県の魅力も紹介した。

JR四国で開業したのは、高松駅北側の新駅ビルTAKAMATSU ORNE。駐車場棟と商業棟が建てられ、地上4階建ての商業棟(店舗面積約6220㎡)には約50店舗が集結した。これに既存棟の南館(同2400㎡)を合わせると約8620㎡の店舗面積となる。ORNEの1階には、目玉としてお遍路さんが四国八十八カ所を巡るように四国の食にフォーカスしたシコクメグルマルシェ(物販ゾーン)とシコクメグルキッチン(飲食ゾーン)があり、高松MESSAGEがテーマの3階はものを買うだけの場所でなくラウンジもあり、交流の場を担う。4階にはシンボリックな大屋根と人工芝、ウッドデッキで構成された屋上広場を設けている。

JR東日本においては、新潟駅の高架下空間にCoCoLo新潟が誕生。5月29日にグランドオープンすると、約140店舗、既存店を含めると総計約170店舗、店舗面積は約2万6500㎡(新設約1万3000㎡、既存約1万3500㎡)の規模になる。CoCoLo新潟の1~2階には特徴を持たせた食を集積。1階イーストサイドに「エキナンキッチン」(飲食ゾーン)や地元新潟の食材を多く取り揃えた生鮮売場「CoCoLo Mart」、2階イーストサイドに新潟のラーメンや居酒屋を横丁スタイルで展開する「ニイガタバル×麺横丁」、2階ウエストサイドに惣菜・飲食の「ニシデリストリート」が整備される。

旧青森駅東口駅舎跡地に建つJR青森駅東口ビルは駅直結型(既存駅ビルのラビナとも接続)の複合ビル。10階建てで、1~3階の商業施設が&LOVINA、4階に青森県の縄文遺跡の情報発信拠点と青森市の青森市民美術展示館が入り、4~10階がホテル(ReLabo)だ。売場面積約4300㎡の&LOVINAには青森市初出店でサイゼリア、東北初出店で好日山荘、青森県初出店でスタンダードプロダクツやPLAZAなど全21ショップが名を連ねる。

そのほかのJR東日本の新施設では、JR中央線コミュニティデザインが手掛ける、同グループ初となる木造商業ビルnonowa国立SOUTH。JR中央線コミュニティデザインはショッピングセンター(CELEO)や高架下開発(nonowa)、駅運営などを主要事業としており、木造商業ビルの規模は地上4階、延床面積約2450㎡。ルミネがJR新宿駅B1階改札内にオープンするEATo LUMINEは食関連ショップ中心に28ショップが並ぶエキナカ商業施設だ。

イオングループはイオンモール、イオンタウン、イオンそよらなどで出店攻勢をかけている。中でも出店の勢いで目立つのが、イオンリテールが運営する都市型ショッピングセンター、そよら。小商圏の新フォーマットとして開発したそよらは「通う・集う・つながる場」をキーワードに、都市生活に必要なものが揃い、日常生活で一番便利で、子供と一緒に快適に過ごせるワンストップショッピング型の商業施設だ。20年3月に開いた「イオンそよら海老江」を皮切りに出店を続け、今年は三重県鈴鹿市白子駅前に「そよら鈴鹿白子」、横浜市港北区に「そよら横浜高田」、大阪府大阪狭山市に「そよら金剛」、福井県福井市に「そよら福井開発」を夏までにオープンする。

イオンモールは24年以降に「(仮称)イオンモール北福島」(24年以降)、「(仮称)八王子インターチェンジ北」(25年春)、「(仮称)イオンモール須坂」(25年秋)、「(仮称)イオンモール仙台雨宮」(25年秋)などの出店を計画。ただ、24年のイオンモールは新規出店よりも、イオンレイクタウン、イオンモール幕張新都心、イオンモール太田、イオンモール宮崎などにおける大規模リニューアルに力が入っている。

昨年は「羽田エアポートガーデン」、「東京ミッドタウン八重洲」、「東急歌舞伎町タワー」、2万席のアリーナがある「ミュージックテラス」、「羽田イノベーションシティ」、森ビルの「麻布台ヒルズ」、などに代表される、再開発事業による大型複合ビルの竣工が続いた。そして今年も、別表にもあるようにラッシュの状態だ。

別表

3月1日に開業した「三井アウトレットパーク ららテラス HARUMI FLAG」

特に大規模再開発で目立つのが大阪だ。例えば、梅田エリアで再開発事業が進む「イノゲート大阪」「JPタワー大阪」「グラングリーン大阪」。JPタワー大阪(地下3階~地上39階、延床面積約22万7000㎡)はオフィス、商業施設、ホテル、劇場からなる複合型で、大阪駅新駅ビルのイノゲート大阪(地下1階~地上23階、延床面積約6万440㎡)は低層階に商業ゾーンを併設したオフィス特化型ビルだ。両施設が共通して注力したのが商業施設で、梅田エリアには百貨店から地下街、駅ビル、駅ナカ、ファッションビルまで食を展開する施設が数多くあるだけに、とりわけ食には相当な力が入るもようだ。

イノゲート大阪が2~5階の商業フロア(施設面積約6500席)に大阪の老舗や路地裏の名店から海外の有名レストランまで50店舗を大集結して仕掛けるのが「バルチカ03(ゼロサン)」。「ルクア大阪」で人気を博す地下2階のバルゾーン「バルチカ」の派生ブランドとして展開する。2~3階は朝から夜まで多様なメニューを提供する大型のオールダイニングや海外有名レストラン、カフェなどで構成。4階は大阪で人気の老舗や路地裏の名店が集まり、梅田で働くオフィスワーカーのランチニーズに対応する。昼呑みも楽しめ、夜は宴会、ちょい飲み、はしご酒まで幅広いニーズを引き出す。5階は路地裏の名店や行列が絶えない有名店、予約困難店が軒を連ねる、呑みのニーズに特化したフロアとなる。

JPタワー大阪は地下1階~地上6階までを商業施設(商業施設賃貸面積約1万6000㎡)に充て、「UNKNOWN(アンノウン)」をコンセプトに、まだ知らない、まだ体験したことのないものを集め、日本の良さを発見し、再認識できる商業施設を目指す。商業施設名称は「KITTE大阪」で、地下1階に西梅田の新名所として開設される「気軽にお酒を楽しめる横丁ゾーン「うめよこ」は“大人のたまり場”をコンセプトに、大阪の串揚げ、たこ焼き、ホルモン焼きなど17の名物店が並ぶ。

西梅田の顔となるシンボリックなフロアを担う1階は、旧局舎の一部を保存・継承した4層吹き抜けのアトリウムが広がり、その周囲に店舗が並ぶ。2階には北は北海道から南は沖縄県までの各地域のアンテナショップが集まる。さらに、地域の魅力を発信する情報発信スペース「@JPCafe」が登場。そのほか、3階はメイド・イン・ジャパンの商品が楽しめる、暮らしにまつわる地域の銘品フロア、4階は我が街自慢の人気レストランフロア、5階が特別な日を彩る各地の有名レストランフロア、6階は劇場とコト体験のフロアとなる。

大阪駅前の貨物ヤード跡地で大規模複合開発が進むのが、うめきた2期の「グラングリーン大阪」。都市公園、オフィス、商業施設、中核機能、ホテル、住宅を有する巨大な街を出現させる。とにかくスケールが大きく、「うめきた公園」は大規模ターミナル駅直結の都市公園としては世界最大級(公園面積4万5000㎡)であり、ホテルはキャノピーbyヒルトン大阪梅田、ホテル阪急グランレスパイア大阪など3つのホテルが入り、総客室数は1042室。オフィスは総貸室面積が約3万4000坪と大規模だ。

商業施設の「グラングリーン大阪 ショップ&レストラン」は、9月6日に先行オープンするうめきた公園(公園内施設、4店舗)と北街区「北館」(15店舗)、25年春頃オープン予定の南街区「南館」で、これらを合わせた商業賃貸面積は2万4950㎡に上る。公園内施設は「都市公園の季節ごとに変化する景色を楽しみながら食事をする」という体験を提供する施設として、うめきた公園サウスパークに3店舗、同ノースパークに1店舗を配置する。北館には都市公園と一体となれる15店舗が出る。南館では最先端の都市型ライフスタイルの先駆けとして、国際色豊かなレストランやショップが登場。関西最大級の都市型スパには天然温泉やうめきた公園を見渡せるインフィニティプールが加わる。大規模フードマーケットもオープンする予定だ。

うめきた公園ノースパーク(グラングリーン大阪開発事業者提供)

うめきた公園サウスパーク(グラングリーン大阪開発事業者提供)

低層階の商業施設に大きな面積を割いている複合施設は、ほかにもみられる。名古屋・栄の新たなランドマークを目指して4月23日に全面開業する「中日ビル」(地下5階~地上33階、延床面積約11万7000㎡)に出店するテナントの数は93に上る。うち名古屋初が31、業態初出店が5。93店舗を業種別にみると、カフェ・レストランが29、フードが10、物販店が26、サービスが22、医療が6。93店舗のうち60店舗が地下1階から地上3階までの商業フロアに入る。

生鮮食品、デリカ、ベーカリー、ワインなどの専門店を揃えた地下1階は「にぎやかなマルシェフロア」。18店舗で、カフェ・レストランが9、フードが7となる。個性や趣味性を重視したテナントが集まる1階は人と情報が行き交う「栄」の中心となるフロア。18店舗のうち14店舗が物販だ。書籍や雑貨、全国各地の特産品や伝統工芸品などが集積する2階はコミュニケーション&カルチャーのフロアで7店舗からなる。栄最大級のレストラン街(飲食店舗が15)となる3階は「栄」の新たなシンボルとなるレストラン&コミュニケーションフロアとなる。

(塚井明彦)