2024年04月30日

パスワード

「TOTOテクニカルセンター東京」がリニューアル、顧客との“共創”強める拠点へ

4月15日にグランドオープンする「TOTOテクニカルセンター東京」は、充実したデジタル技術で独自テクノロジーを提案する

TOTOは、東京都渋谷区にある「TOTOテクニカルセンター東京」(以下、テクニカルセンター)をリニューアルした。デジタルインフラを増強し、最新の商品提案や情報発信をよりフレキシブルに行い、同社の歴史やパブリックトイレの変遷も豊富なデータで紹介する。不特定多数の人が使用する非住宅のパブリックトイレは、時代と共に求められるニーズや課題が多様化してきている。顧客であるビジネスユーザーとの「共創」をさらに進め、快適な水回り空間の拡大に向けた拠点として、新たなスタートを切る。改修部分のオープンは4月15日。

テクニカルセンターは、1989年発足の同社プレゼンテーション部が前身となる。96年に世田谷区の桜新町にテクニカルセンターを開設し、2012年に現在の渋谷区代々木に移転。「ブランド醸成発信」「UD知見の構築」など提案力を強化し、国内外の最先端となるパブリックの水回り空間の実現に向け、建築家やデザイナー、設計者達との共創拡大に努めてきた。

12年ぶりとなるリニューアルの背景には、パブリックトイレを取り巻く環境変化がある。都内での再開発事業の活発化や、インバウンド回復を受け、宿泊施設などが環境整備への投資を増やしている。こうした機会に同社商品が多く採用されているのには「実はテクニカルセンターが大きな役割を果たしている」と、広報部の川原拓郎部長は述べる。加えて、新型コロナウイルス禍を経て「最新の事例が知りたい」という来館客も増加中。逸早く最新情報を顧客と共有し新しい価値を創出する――という、デジタル時代に合致した提案施設を目指して、20年にリニューアル構想を開始した。当初は移転から10周年となる22年のオープンを計画していた。しかし、新型コロナ禍による利用者の激減などから時期を見直し、今年の開業に至った。

同社の国内のテクニカルセンターは、名古屋、大阪、福岡、東京の計4拠点。中でも東京は約750坪と最も広い面積を有する。今回のリニューアルのコンセプトは「Fine&Flow」。Fineは同社の商品における「精密さ」「機密さ」を意味し、Flowは水を扱うことから「過去から未来につながっていく流れ」を表現した。このコンセプト設計も含め、施設設計は段階ごとに異なる外部クリエイターと協業。「コンセプト」決定と施設内体験のための「UX設計」は、デザインイノベーションを手掛けるTakram(タクラム)、施設の「空間デザイン」は建築家の中原崇志氏、施設におけるデジタル体験の「UX/UI設計」を、ビジュアルデザインスタジオのWOW inc.と行い、全体的な設計・施工とシステム開発は乃村工藝社が手掛けた。

リニューアルに際して設けたポイントは3つ。持続可能な社会実現のため、商品を通じてTOTOの取り組みを伝える「ストーリー」、顧客に合わせた提案をフレキシブルに組み立て理解と体感を促す「インタラクティブ」、そして、同社が“顧客との共創”と位置付けるパブリックトイレの歩みと、今後のリレーションシップを強固にする場としての「ホスピタリティ」だ。

施設の新しい顔となる「ブランドウォール」。多彩なデジタル表現が楽しめる

まずエントランススペースに設置された大型デジタル画面の「ブランドウォール」では、新たに制作したコンセプトムービーが来館者を迎える。Fine&Flowをジェネレーティブアート(リアルタイムにビジュアルが生成される映像手法)で創作した動画は、水の粒子が時間と共に躍動しながら「City」「DNA」「Flow」のモチーフで変化する様子が放映される。季節に合わせたカラーリングを取り入れ、顧客への“おもてなし”にもこだわった。

ブランドウォールでは、同社の取り組みや現場実例、顧客とのパブリックトイレ共創の歴史を紹介する「ギャラリー」映像も展開する。タッチパネルになっているデジタル画面とタブレットコントローラーで操作し、3000件以上のデータベースから事例検索や画像の拡大表示ができる。顧客が希望するデータを事前にセットしてスライドショーで映すことも可能。インタラクティブにコミュニケーションできる機能を備え、顧客との共有の場とする。

「技術展示コーナー」では、普段は見ることのできない内部構造やシステムの原理が、わかりやすく展示されている

ブランドウォールの裏に進むと現れるのが「技術展示コーナー」。TOTOの基幹技術を体感できる場としてエリアを拡張し、技術展示を以前の20から28に増やした。UD・プレゼンテーション推進部 企画主査の土本かおり氏は「当社のマテリアリティと、テーマでもある『きれい』『快適』『環境』を体現するコーナー」と説明する。

エリア内には様々な機器が並ぶ。DX化によるモニターとの実機連動が体験できたり、機器の内部構造が見られたりする。便器の淵の内側やウォシュレット用ノズルを自動洗浄する「きれい除菌水」の生成原理や、配管に溜まりがちな尿石を洗い流す「インターバル洗浄」、吸引式の「クリーンドライ(ハンドドライヤー)」の気流がわかる装置なども設置。「技術を可視化して、より身近に感じていただけるよう」(土本氏)展示方法を工夫した。顧客の中には外国人も多いことから、適切に技術紹介ができるよう英語での音声ガイダンス機能も付けた。今後は他の言語も増やしていく予定。

空間用途に合わせた提案スペースでは、通水した機器も備え、実際に使用感を試せる

技術展示コーナーの先には、従来からある提案スペース「商業施設コーナー」「オフィスコーナー」「キッズ&スクールコーナー」が広がる。空間用途に合わせて商品をレイアウトし、それぞれ必要とされる配慮ポイントや最新のレストルームのトレンドなどが学べる。

今回のリニューアルでデジタル技術を駆使した提案スペースを充実させ、最先端の提案施設を目指すTOTOテクニカルセンター東京。顧客との共創を積み重ね、パブリックの水回りに新しい価値を生み出していく。

(中林桂子)