2020年11月30日

パスワード

購読会員記事

西武渋谷店、百貨店の強みを逆転させる〝接客しない〟ポップアップ

2020/11/04 9:45 am

百貨店の店頭販売は接客が付き物と考えられがちだが、10月20日~26日に西武渋谷店で開催した「JAMAIS VU 『POP-UP STORE』」は販売員が常駐しない、〝接客ゼロ〟のポップアップストアだ。アパレルブランド「JAMAIS VU (ジャメヴ)」の衣服を自由に試着ができ、購入は客がジャメヴの公式インターネット通販サイトを通じて行う。あまり他に見ない珍しい取り組みだが、敢えて百貨店が強みとしていた接客を取り去ることで、「客が真に求めていることは何なのか」を探る狙いがある。

タグのQRコードを読み込むと、ジャメヴ公式ECサイトの商品ページへと飛べる

このポップアップは、西武渋谷店のA館3階にあるプロモーションスペースで開催。ジャメヴは伊藤忠商事が手掛けるD2Cのアパレルブランドで、世界各国から厳選された良質な素材と職人の高度な技術によって作られた洋服を揃える。ポップアップには秋冬向けのカーディガン、ニット、パンツなど21種類を用意。すべての商品にジャメヴの公式ECサイトの商品ページへ飛ぶQRコードが記載されたタグが付き、スマートフォンで読み込んで購入できる。注文した商品は後日配送で届く。

素材の羊毛と、その説明書きを設置。販売員がいなくても商品について知ることができる

販売員がいないと商品のよさを伝える機会が減ってしまうため、店頭には素材に使用する羊毛とその説明書きを置き、ジャメヴの素材へのこだわりを伝えた。また、店頭に来た客への特典として、15パーセントオフのクーポンも用意。店頭にQRコードを印刷した紙を置き、客にそれを読み込んで購入時に使用してもらった。クーポンは今回の催事用に発行されたコードのため、催事の売上げが把握できる。

クーポンはQRコードをペラに印刷し、自由に客に取ってもらう

当初は一般的なD2Cブランドのポップアップイベントとして企画されていた。「企画が進行していたのが新型コロナによる臨時休業が明けた時期で、感染防止のための行動様式が広まり、消費に対する考え方も大きく変化していた。そのため、3密を避けるなど、今の時勢に合った方式で実施したかった」と婦人服飾部マーチャンダイザーの茂木麻佑さんはと経緯を語る。検討を重ねる中で、無人のポップアップストアというアイデアが浮上した。

また、リーシング本部商品計画部企画担当の中山茉莉花さんは、この企画の以前から「お客様が百貨店についてどう感じているのかを探りたい気持ちがあった」とという。従来は、百貨店の店頭販売では接客をするのが当然と考えられていたが、最初から最後まで販売員が付く接客を好まない人も一定数存在する。インターネットの普及によって、事前にネットで商品を調べて候補を絞り込み、店頭には色や大きさの確認のために足を運ぶという買い物スタイルも増えている。「接客をゼロにしたらお客様がどう感じ、どのような反応をするか。それを調べ、新たな発見があれば次に繋げる」(中山さん)考えで、百貨店の在り方を見直す取り組みの第一歩と位置付けて実施に踏み切った。

イベントスペースに元々設置してある試着室は、自由に使用できる

接客無しのポップアップは、店舗にとって在庫手配や管理に労力を割かなくて済むという利点があるが、取引先にとってもメリットが大きい。用意するのはサンプルのみのため、商品の送料が掛からない。商品は自社のECサイトで一括管理できるため、欠品も防げる。販売員の派遣も不要だ。この手法が上手くいけば、ポップアップができるブランドの広がりが期待できる。

店頭には、自由に試着できることや購入はECサイトから行う旨を書いたポップを置いた

開催中は、販売員がいなくても客が自分で試着室で試し、終わった後は商品を戻すなど、普通に買い物をする光景が見られた。接客が無いことに対するネガティブな反応もなかったという。

ただし、課題も見つかった。開始から数日間、周囲の売場の販売員に「試着していいのか」と聞く客が何名かいた。当初から自由に試着が出来る旨を記載したポップを置いていたが、よりわかりやすいポップを作成し設置することで改善した。また、品揃えやオペレーションに対する客の声や、来店人数や試着人数、何を試着したかといった客の動向を把握できない問題もある。今後は、それらを吸い上げる方法が必要となる。

そごう・西武本部にも取引先から問い合わせが多く寄せられ、業界からの注目度の高さも感じたという。そごう・西武は今回の結果を元に、今後は接客以外にも品揃え、サービスなど、様々な観点から「百貨店の当たり前」を見直す取り組みを行う意向だ。