2024年07月23日

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<ストレポ11月号掲載>百貨店催事 強み・深み・巧み

催事には多大な手間暇が掛かるが、百貨店の企画力が発揮される“百貨店の本領”だ(画像はイメージ)

今期はコロナ禍で休止・縮小していた様々な大型催事が次々と復活しており、過去最高の売上高を更新した看板催事もある。コロナ禍中に初開催した催事も少なくなく、それが早くも「定番催事」と化しているコンテンツさえある。百貨店復活に拍車がかかる今こそ、リアル店舗の魅力をさらに高めていく好機であり、そのためには対象顧客の関心が高い体験価値を提供する新しいモノ・コト・トキの提案が求められる。大型催事は、その最たるコンテンツに違いない。

今号では首都圏の百貨店を対象に、今期(23年度上期~10月初旬)に催事場で開催された企画の中で、復活した恒例催事やヒットした新規催事などの好事例を取り上げた。

※この記事は、月刊ストアーズレポート2023年11月号掲載の特集「百貨店催事 強み・深み・巧み」(全19ページ)の一部を抜粋・編集して紹介します。購読される方は、こちらからご注文ください。(その他11月号の内容はこちらからご確認いただけます)


松坂屋上野店<パンダが、すき。フェスティバル>

6階を6月パンダ月間の聖地化

松坂屋上野店の6階催事場が賑わいを取り戻している。上期(3月~8月)の売上高は前期比24%増、計画に対しても2桁以上の伸長率だ。特に出色の伸び率だったのが、コロナ禍の21年6月に初開催した同店だからこそできる「パンダが、すき。フェスティバル」(以下パンダフェス)で、前年の2倍超を記録した。新規顧客を含め幅広い客層を集客している。

今年の6月21日から26日まで開催した「パンダフェス」は今回が3回目。初開催は22年1月(26日~31日)で、上野動物園で21年6月に誕生した双子パンダの公開を想定し、パンダグッズを集積した催事を企画した。次いで2回目は同年6月に、同店が全館規模で実施しているパンダ販促「ハッピー パンダフル デイズ」のコンテンツの1つとして開催。そして3回目は、その賑わいぶりからもパンダ月間の「拠点」と化した。

今年のパンダフル デイズ(5月31日~6月29日)は、上野動物園の双子のジャイアントパンダの2歳の誕生日と、2月に中国に渡ったパンダの6歳の誕生日を祝う目的で、パンダデザインの広告幕の掲出、お母さんパンダ「シンシン」の子育て写真展、パンダモチーフ商品の販売、オリジナルノベルティの配布など、全館でパンダ企画を展開した。

6階のパンダフェスでは、約20のブランドや作家によるパンダモチーフのグッズを集積し、加えて人気雑誌「パンダ自身」のオリジナルグッズを販売する「パンダ自身フェス」を同時開催した。そのパンダ自身フェスが集客装置と化した。2回目から併催していたが、「非常に好評だったため、今回は展開面積を2倍に広げ、商品量も前回以上に確保した」(営業部サービス営業・催事マネジャー山田潮人氏)。

初日は開店前の午前8時時点で既に約300人が並び、混雑を想定して用意していた整理券を配布。この配布も午後4時30分に終了した程だ。作家によるパンダモチーフの作品も人気だったが、「パンダ自身」のオリジナルグッズ目当てに多くの顧客が押し寄せた。その理由は、オリジナルグッズの今年の新作が一堂に揃うからである。「入店直後から籠いっぱいにパンダグッズを購入されるお客様の姿が目立った」(山田氏)のも頷ける。パンダ自身は他の商業施設などでポップアップショップを手掛けているが、オリジナルグッズの新作は、上野動物園のパンダの誕生日が6月に多いため実施する松坂屋上野店のパンダ月間に合わせて披露される。

パンダフェスの売上高は前年比117%増で、計画比で1.5倍超だった。パンダ月間は「上野」の百貨店だからこそできる全館企画に他ならず、その拠点であるパンダフェスは、僅か3回目でパンダ好きが一堂に会する期間限定の「パンダの聖地」と化す定番催事に育った。

京王百貨店新宿店<秋の大北海道展>

お休み処効果、過去最高を更新

京王百貨店新宿店の7階大催場もコロナ禍前の賑わいが戻ってきた。都内百貨店の中で屈指の売上げ規模を誇る「秋の大北海道展」は2桁増を遂げ、過去最高を更新した。物産展の強みを発揮しながら、新たなコンテンツも育み、幅広い世代と次世代顧客の開拓に寄与している。

同店の北海道展は、2002年に開始し、今年の秋(8月30日~9月12日)で36回目を迎えた。単県物産展で唯一、春と秋の年2回、各2週間開催が定番となっており、人気、規模ともにトップだ。20年以上続く看板催事が、この秋、過去最高の売上高を更新した。春の大北海道展も過去最高に近い水準まで伸ばしており、この勢いが加速した格好だ。

昨年までの入場制限を撤廃してコロナ禍前に戻した運営体制が背景にあるが、過去最高の理由はこれだけではない。「食べて飲んで楽しむ!北海道の味めぐり」をテーマにした品揃えと環境の充実が功を奏した成果に他ならない。

環境では、会場内の「お休み処」を前年の2倍超に広げ、席数も2.5倍超の53席を用意した。テーマを具現化した「食べて飲んで楽しめる」飲食スペースだ。お休み処で楽しむシーンを想定して強化したのが、クラフトビールと熱々グルメの品揃えである。

クラフトビールは過去最多の22種類を揃え、このうち「滝川クラフトビール工房」(4種)、「富良野大麦」など初登場は12種類にも及んだ。瓶ビールや缶ビールだけでなく、一部ビールサーバーも導入して提供した。お休み処は想定通り、「出来立ての(北海道の熱々)グルメをおつまみにしてビールを楽しまれているお客様で賑わった」(店舗運営部岩浅安信部長)。ビールの売上高は前年比1.7倍も増え、惣菜の売上げ増(28%増)にも貢献した。

また品揃えでは、残暑が厳しい時期の開催であり、「ひんやりミルクスイーツ」のラインナップを強化した。ソフトクリーム、パフェ、サンデーなど、前年の約1.7倍の40種類(2週間計)を揃え、道外初登場や京王百貨店限定のひんやりミルクスイーツを提案した。厳しい残暑に加えお休み処拡大が奏功し、ヒットしたのは言うまでもない。しかも同店の課題である若い顧客層の集客拠点にもなった。

さらにひんやりミルクスイーツのヒットは、実数値以上に過去最高への貢献度が高い。というのも、菓子の売上高の柱だった人気の菓子ブランドが諸事情で出店できなかった。このマイナスをカバーしたのがひんやりミルクスイーツで、「菓子全体でマイナス幅を最小限に抑えることができた」(店舗運営部催事担当河野孝彦課長)。ここに惣菜と米飯の2桁増が加わり過去最高が更新されたとも言える。

コロナ禍でも営業制限の中で継続してきた看板催事が、本来のフルバージョンに戻ると共に、過去最高の売上げを更新して、その強みがさらに磨き上げられた格好であろう。

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