2024年12月07日

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大丸京都店が刷新したレストラン街、目標の10億円を上回るペース

屋上にはファミリーが楽しく過ごせる広場「ことほっとてらす」を整備した

大丸京都店が9月29日に刷新した8階のレストラン街が好調だ。改装では「炭焼 うな富士」「VEGGIE ISO TERRACE」「そば料理 よしむら 大丸京都別邸」「Nippon Ramen 凛 離れ produced by Lab Q」「三田屋本店 ―やすらぎの郷―」「丸福珈琲店 ザ・パーラー」「Rooftop terrace CIELO by il cipresso」「LA RISOTTERIA」の8店舗を誘致するとともに、約3000冊の食に関する漫画を自由に読める「まんがの壁」を設け、屋上にはファミリーが楽しく過ごせる広場「ことほっとてらす」を整備。西日本初や商業施設初など目新しい店舗が多く、まんがの壁や屋上広場も集客力を発揮し、売上げは年間目標の10億円を上回るペースだ。

約3000冊の食に関する漫画を自由に読める「まんがの壁」

大丸京都店は昨年2月28日、設備の老朽化などを理由にレストラン街を閉鎖。約49年ぶりの全面改装に踏み切った。ただ、すんなりと決まったわけではない。全面改装の話が出たのは2018年だが、周辺に飲食店が乱立する中で「本当に百貨店の上層階にレストラン街が必要か」という意見も社内外から届いた。

しかし、地域密着を追求する店舗であり、「買い物だけではない、くつろぎや憩いを感じられる場所が必要。レストラン街はファミリー食堂を含めて固定客に長く愛されており、やはりリニューアルして存続させたい」(今井良祐営業3部長)と結論。大丸松坂屋百貨店の経営陣に投資を求めた。答申を繰り返し、当時の好本達也社長から「百貨店業界における従来型ではなく、視座を遥か先に置き、京都の地で300年に亘り商売をさせていただいていることを念頭に、未来につながる、子供達の思い出にもなるようなレストランフロアならば投資を認める」とゴーサインが出された。

すぐに動き始めたが、当時はレストラン街を全面改装できる知見を有する人材がほとんどいなかった。今井氏は大丸松坂屋百貨店が「創造型マーケティング組織」と位置付ける、未来定番研究所の所長に相談。紹介されたキッチンエヌの中村新代表取締役を訪ねる。「これが全ての始まりで、我々の脳みそを奮い立たせてくれただけでなく、様々な経営者や生産者との出会い、未来への取り組みにつながった」(今井氏)という。

こだわったのは「飲食店と屋上広場、まんがの壁の一体感、そして京都の生産者を豊かにするために食品卸業を手掛けるミナトと取り組むサプライチェーンの構築」(今井氏)だ。8階と屋上は木やアルミといった素材、曲線を多用した天井や壁、柱などで“京都らしさ”を表現し、一体感も創出。屋上広場やまんがの壁には京都で育った木、プラスチックの廃材、コーヒー樽などが用いられており、SDGsにも適う。ミナトは京都中から良質な食材を集め、大丸京都店に専用のトラックで定期的に配達。飲食店のメニューの魅力化と生産者の収益性の向上を促す。

目下、レストラン街の売上げや客数は計画を上回る水準だ。中でも炭焼 うな富士、VEGGIE ISO TERRACEの支持が厚い。今井氏が「良い意味で想定外」と指摘するのが屋上広場で、ベビーカーを押す女性のグループなどが昼間から集まり盛況だ。ファミリーの憩いの場が生まれた格好だ。実際、改装前に比べて若年層が急増したという。

行列が絶えない「炭焼 うな富士」は西日本初登場

もちろん、課題がないわけではない。今井氏は「Rooftop terrace CIELO by il cipressoは22時まで、 VEGGIE ISO TERRACEは23時まで営業しており、夜遅くまでくつろげる。イベントも交えて『大丸の屋上は夜でも楽しい』と印象付けていく必要がある」と気を引き締める。

レストラン街は二巡目以降に収益力が下がりやすいが、今井氏は「屋上を生かした企画やイベントを通じて飲食店と屋上の一体感を創り出すほか、『産直マルシェ』など地産地消の取り組みの拡大、増え続ける訪日外国人への対応も不可欠。先々には、まだ出店が可能な区画を整備してリモデルそのものも進化させていく」と意気込む。大丸京都店のレストラン街は、なお発展途上だ。

(野間智朗)