2024年05月20日

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新しい防災の取り組み 三菱地所レジデンスが「FMB」提案、三井不動産は解体ビルで訓練

三井不動産は東京消防庁と連携し解体予定ビルでの防災訓練を実施(エンジンカッターによる開かない扉の破壊訓練)

三菱地所レジデンスは、8月に竣工(9月から入居開始)した自社の賃貸マンション「ザ・パークハビオ 中野富士見町ガーデン」で、管理組合や防災計画書がないという賃貸マンションの特性を踏まえた新しい防災の取り組みを提案する。

ザ・パークハビオ 中野富士見町ガーデンは、総戸数115戸(1K:74戸、1LDK:26戸、2LDK:15戸)からなる地上14階建ての賃貸マンション。ここに、災害時に居住者同士で助け合う仕組みの防災ツール「FMB」(ファーストミッションボックス)が設置される。「1人暮らしで不安」「居住者同士のつながりが薄いため災害時に心細い」「管理組合がなく居住者による組織が組成しづらい」といった、賃貸マンション特有の課題解消に向け、大規模な災害が発生した際に居住者同士で迅速に初期活動をするための指示カードが入ったツールのFMBと、長引く被災生活を想定した「SMB」(セカンドミッションボックス)を制作、導入した。

居住者同士で迅速に防災活動ができるツール「FMB」のデモンストレーション

FMBは、災害時(震度5強以上の地震を想定)に共用部に設置されたボックスを開け、中に入った指示カード通りに動くことで、自然とその場に集まった居住者同士で災害時の初期活動を実施できる仕組み。指示カードは、「本部の設営」からマンション内の「安否確認」「救護活動」のほか、阪神淡路大震災、東日本大震災などの被災地の声と経験から学んだ、災害時に困る「トイレの設置や運用」「防犯対策」についてどのように行動すればよいか、専門知識や経験がなくても誰にでもできるような指南書となっている。災害直後に初期活動を実施できるFMBに加え、被災生活が長引いた際に困ることが想定される「水の確保」「物資の確保・情報の収集」「ゴミの保管」「健康管理」に対応できるSMBも合わせて設置した。

三菱地所レジデンスの賃貸マンション「ザ・パークハビオ 中野富士見町ガーデン」

ザ・パークハビオ 中野富士見町ガーデンの災害への備えはFMB、SMBだけではない。災害時の初期活動や被災生活をサポートするハード面の防災対策が講じられている。1つは太陽光発電パネルの活用。屋上に設置した太陽光パネルで発電した電力の余剰分を1階共用部に設置した蓄電池に貯めておき、平常時は深夜電力の一部に使用(災害を想定した余力を残し放電)し、災害時に万が一停電が起きても蓄電池からの放電により共用部分の一部に一定時間電力を供給する。

2つ目は「防災倉庫」への防災備品の設置。1階共有部の防災倉庫に、本部の設営に必要となるLEDライトセットや発電機、安否確認や救護活動で使用する救出工具セットや応急処置セット、ヘルメットやヘッドライトなど、マンション全体で利用する防災備品を整備。被災地の困りごとで多いトイレについても、マンホールトイレのほか荒天時や屋内での使用が可能な簡易トイレ、自宅での使用を想定した災害用トイレ処理セット(凝固剤)を備える。

3つ目は「MY防災倉庫」の設置。各階にも防災倉庫を設けており、各住戸用の備蓄ロッカーを居住者自身が災害用品の備蓄スペースとして利用できる。4つ目はコワーキングラウンジの設置。入居者は1階のコワーキングラウンジを仕事や休憩に使用できるが、FMBはここに設置されており、災害発生時には防災拠点として利用できる。

なお、三菱地所レジデンスではザ・パークハビオ 中野富士見町ガーデンを皮切りに「ザ・パークハビオ 人形町レジデンス」「横浜市神奈川区六角橋1丁目計画」へのFMBの導入を決めている。

三井不動産による解体予定ビルでの防災訓練(屋内消火栓放出訓練)

東日本大震災以降、防災・BCP関連に約600億円を投資して、安心安全で災害に強い街づくりを進めている三井不動産は、関東大震災から100年となる今年8月から9月にかけて、「東京ミッドタウン八重洲防災フェスタ」をはじめ「東京ミッドタウン日比谷」や日本橋「福徳の森」で防災フェスタを開いてきた。さらに10月には、解体予定ビルを活用して東京消防庁との初の連携訓練を実施した。

三井不動産は東京消防庁と「消防隊及び自衛消防隊等の実戦的訓練実施に関する協定」を締結している。これに基づき、三井不動産が所有する解体予定の建物を防災の場として提供し、東京消防庁の消防隊、三井不動産が運営管理を行うオフィスビルの自衛消防隊、地域の防災関係者が参加して、稼動中のビルではできないリアルで実践的な訓練を初めて実施した。

10月11日(メディア公開日)には、三井不動産が所有する解体予定の「第10中央ビル」(日本橋本町)に三井不動産のビル管理スタッフが集合して、訓練を開始。同ビルの地下1階~地上2階を使い、出火点に向けて屋内消火栓放水をする「屋内消火栓放出訓練」、非常放送の操作手順および放送を訓練する「非常放送訓練」、火災時の煙充満の状況および防災設備の排煙口が起動した際の煙排出状況を体験する「室内煙体験および排出体験」を行った。

隣接する「ライフサイエンスビル 10」では、東京消防庁の消防団が、6階で煙充満室内想定のもと酸素ボンベ、放水ホースをもって室内の要救助者検索を実施する「要救助者検索訓練」、5階では室内閉じ込めを想定した「エンジンカッターでの扉破壊訓練」を行った。

10月1カ月に亘り、解体予定ビルでの訓練は多数実施された。「三井不動産と東京消防庁初の連携訓練」では、東京消防庁、地域の人々、三井不動産および三井不動産ファシリティーズのビル管理スタッフが連携し、コロナ禍で実現できなかった連携訓練を初めて実施。「各消防署による訓練」では、東京消防庁の各消防署(千代田・中央・港・墨田・江東・江戸川・葛飾区)は、火災発生時の要救助者の救出訓練、エンジンカッターでの扉破壊訓練を実施。救助訓練では、空気ボンベ・マスク着用および水が充填された消火ホースを持つなど重装備の消防隊員が、煙が充満し、かつ区画も分からない室内に入り要救助者を救出した。

「中央警察署による救出訓練」では、中央警察署の警備係により、室内に要救助者が取り残されている想定で、エンジンカッターやハンマーによる扉破壊、什器に挟まれた人の救出、応急処置、担架での搬送など一連の救出訓練を実施。普段は警備・警護活動に当たることが多い警備係だが、大規模地震などの災害時には救出活動も行う。「三井不動産グループのビル管理スタッフによる訓練」では、三井不動産ファシリティーズのビル管理スタッフによる訓練および演習を実施。主な内容は、設備員による屋内消火栓放出訓練、非常放送操作、鳴動訓練などや、清掃員による汚損箇所の清掃などの技術演習を行った。

これら一連の訓練には三井不動産および三井不動産ファシリティーズのビル管理スタッフ、東京消防庁、地域の消防団・町会・事業所、中央警察署など延べ700人が参加。官民が連携して稼働中のビルではできない特別な訓練が実施された。

(塚井明彦)