2020年07月10日

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髙島屋大阪店 東別館を新装開業 滞在型ホテル「シタディーンなんば大阪」誘致

2020/01/29 3:00 pm

“なんば”のランドマークに――。髙島屋は1月20日、大阪府・日本橋の東別館を新装開業した。アスコットジャパンが運営する滞在型ホテル「シタディーンなんば大阪」、髙島屋の史料館などで構成。今春には1階にフードコートも設ける計画で、近隣の髙島屋大阪店と連携しながら、国内外から訪れるレジャー客やビジネス客を呼び込む。同日にはホテル内でオープニングセレモニーが行われ、髙島屋の村田善郎社長は「インバウンドのゲートウェイを担う重要なスポットを盛り上げるランドマークとして、頑張っていきたい」と表明した。開業は多くのメディアが報じ、20日だけで数百の予約が入るなど、上々のスタートを切った。

 

 

東別館は高さ約30メートル、地下3階~地上9階、延床面積は約4万1000平米。1923年に松坂屋大阪店として誕生し、66年に同店が移転すると、68年に当時の所有者である竹中工務店から髙島屋が建物を借り、東別館と名付けて事務所や友の会などに充てた。69年には、髙島屋が竹中工務店から建物を取得。以降、髙島屋は事務所や史料館に利用してきたが、2017年に当時の粟野光章大阪店長(現在は代表取締役専務営業本部長)が「収益を生んでおらず、もったいない」と、滞在型ホテルなどの誘致を決めた。

 

 

これに伴い、約145億円を投じて建物をリノベーション。「『変わらないのに、あたらしい。』をかたちにする」をテーマに、外観は既存の素材や意匠を残す一方、内装は大理石やアールデコ調の装飾を生かしながら刷新し、“新旧が交錯する空間”に仕上げた。

 

地上1階~7階の約1万7000平米(賃貸面積)には、世界32カ国、180以上の都市で宿泊施設を手掛けるアスコット社が運営する、シタディーンなんば大阪が入居。コンセプトは「デパートメントホテル」で、設計および施工は髙島屋の子会社、エー・ティ・エーおよび髙島屋スペースクリエイツが担い、ホテル内の随所に百貨店を想起させるデザインやオブジェを配した。

 

例えば、受付のカウンターや壁面にはショーウィンドウを設け、髙島屋大阪店の商品を展示。客室の壁面にも、百貨店やファッションをイメージさせる絵を施した。百貨店の婦人服フロアや紳士服フロアのように、「偶数階は女性的な、奇数階は男性的なイメージを採用した」(アスコットジャパンの越川慎一副社長兼総支配人)という。

 

 

シタディーンなんば大阪

▲一部の客室はアーチ状の窓から街を眺められる

客室は313を数え、大きな窓が特徴的。中でも229号室の窓は大きなアーチ状で、なんばの街を絵のように眺められる。「滞在型」の通り、全部屋に電子レンジを配し、キッチンや洗濯機を備える部屋もある。2つの部屋を行き来できるコネクティングルームも、全23組を展開。1室あたり3人までの利用が可能で、計6人で一緒の時間を過ごせる。

 

シタディーンなんば大阪 6階 ラウンジシタディーンなんば大阪 5階 キッズ

▲ホテルの6階には共用のラウンジを用意、ホテルの5階にある子供が裸足で遊べるキッズルーム

訪日外国人のファミリーをメインターゲットに据えており、5階にはキッズルーム、6階には共用のラウンジを用意。「デパートの屋上遊園」をイメージしたキッズルームは遊具やボールプールなどからなり、子供が裸足で遊べる。ラウンジは冷蔵庫やオーブン、コーヒーマシーンなどを揃えるほか、広々としたキッチン、テーブル、ソファーがあり、複数の家族や友人同士で集える。ラウンジではイベントも検討中だ。

 

1階には、燻製惣菜の物販と飲食「勘田亀吉」、日本茶のカフェ「祇園北川半兵衛 なんば店」、イタリアンレストラン「numero five」、暮らしの道具やアートなどを扱う「VIVIDEEP maison」、紙雑貨やアクセサリーなどを揃える「ROCCA&FRIENDS PAPIER OSAKA」を集積。飲食やショッピングを楽しめる。宿泊客は、約6割を外国人が占めると想定。他の「シタディーン」は約9割が外国人だが、日本人の利用を積極的に促す。

 

 

 

史料館もリニューアル

高島屋資料館

東別館の3階に位置する髙島屋の史料館も一新。約5万点の所蔵品から厳選した700点余りを大画面で鑑賞できる「髙島屋コレクションボード」、コレクションボードの700点余りを詳しく解説した「髙島屋コレクションデータベース」、髙島屋の歴史と百貨店の文化を学べる「アーカイヴス展示室」、様々なテーマを基に年4回の頻度で企画展を開く「企画展示室」、シアターを兼ねる「多目的ルーム」、百貨店に関する書籍を閲覧できる「ミニライブラリー」で構成する。

 

来館者が必要な情報を得られるよう、デジタル技術を活用。髙島屋コレクションボードをロビーに設け、気になる情報を詳しく検索できる「デジタル年表」、「髙島屋コレクションデータベース」なども導入した。表示される解説の文章は印刷して持ち帰れる。

 

老若男女、あるいは外国人が直感的に楽しめるようにも工夫。昭和の街並みと住む人々をテーマにした山本高樹氏の「髙島屋東別館ジオラマ」、開店から閉店までの南海店(現大阪店)の賑わいを表現した今竹七郎氏のアニメーションなどが代表的だ。受付にある「展示ガイド」のQRコードを読み取ると、資料や作品の解説を英語、中国語、韓国語で閲覧できる。

 

 

シタディーンなんば大阪と髙島屋史料館が完成した20日には、オープニングセレモニーを実施。髙島屋の村田善郎社長は「なんばは、インバウンドのゲートウェイとして重要なスポット。そのランドマークとして“まちづくり”を継続していく。史料館も重要な経営資源、資産として社内外に推奨していきたい」と意欲を燃やし、アスコット社のケビン・ゴーCEOも「充実した設備と世界レベルのサービスで、第2の我が家のような体験を提供し、髙島屋との戦略的なアライアンスを、さらなる高みへ導きたい」と力を込めた。

まずは、宿泊客に髙島屋大阪店での特典を提供。免税手続きの一括化や購入した商品の配送などを調整中だ。東別館の1階に開く予定のフードコートは「春を目途にオープンしたい」(村田社長)という。

 

 

 

 

 亀岡恒方常務取締役関西代表に聞く

 相互送客で相乗効果を  10年連続増収へ国内外の声 反映

亀岡恒方常務取締役関西代表

東別館のリニューアルオープンは、徒歩で10分に満たない距離に居を構える髙島屋大阪店にとって、新たな商機だ。ポーターサービスやコンシェルジュを介した買い物のサポート、美術品の販売および配送などを順次始め、宿泊客の来店を促す。大阪店でも、積極的に「シタディーンなんば大阪」を宣伝。相互送客に力を注ぐ。東別館は、2019年度(19年3月~20年2月)に10年連続の増収を目指す同店の“起爆剤”でもある。亀岡恒方常務取締役関西代表兼大阪店長に、東別館への期待と今後の戦略を尋ねた。

 

 

――シタディーンなんば大阪との連携について、どう考えていますか。

「相互送客のプランを練っていますが、まずは宿泊客の要望を聞きます。ポーターサービス、予約制でのコンシェルジュを介した買い物のサポートなどは考えられますが、最近は日本の美術品に興味を持つ外国人が多いです。購入した美術品を本国まで送るサービスも、需要があるのではないでしょうか。ホテルでは大阪店の催事の情報を掲載した媒体を配ったり、ショーウィンドウで商品を紹介したり、大阪店ではプロモーションスペースでホテルをPRしたり、様々な相互送客に取り組みます。2020年には、中国で約50もの空港が開業すると聞いています。商機は多いです。もっとも、中国の方だけで、あるいは外国からの団体を呼び込んで、売上げを伸ばすつもりはありません。世界中の“良いお客様”に“良い商品”を提供していきます」

 

 

――「シタディーン」の利用者には富裕層が多く、“良いお客様”の来店を見込めます。しかし、外国人が大幅に増えると買い物の快適性を損ない、日本人のリピーターを失うリスクもあります。

「日本人であれ、外国人であれ、リピーターづくりは大切です。全てのお客様が快適に買い物を楽しめるように、19年度は注力してきました。例えば、外国人が開店を待つ入口を変更しました。外国人の目当ては化粧品売場のショップが配るクーポンです。それを手に入れるため、開店と同時に走り出す外国の方がいました。危険ですし、トラブルを招きやすいので、正面入口ではなく化粧品売場に最も近い東入口で待って貰うようにしました。『スーツケースはエスカレーターに乗せない』など、店内でのマナーを啓蒙する案内も増やしました。中国人のマナーは批判されがちですが、知らないだけで、教えると守ってくれます。外国人で埋まっていた1階のイスは、一部をお年寄りなどの優先席にしましたが、気付かない外国人に優先席を示す文章を指すと、立ってくれます。昨年の5月頃から外国人に店内でのマナーを示してきましたが、その成果と捉えられる変化があります。昨年末から今年の1月前半にかけてのインバウンドの好調です。富裕層の外国人が増え、高額品が売れました。『気持ち良く買い物したい』という富裕層が、より来てくれるようになったのではないでしょうか」

 

 

――19年度は10年連続の増収が懸かります。

「売上げの約2割にあたるインバウンドは上期が同1.5%増、12月までの累計で同1%減と厳しいものの、国内のお客様の売上げは上期が前年比4.3%増、下期も9~11月で同7.8%増と好調。12月は同2.9%減ですが、通期でプラスを見込みます。国内では中間層、つまり全体から外商とインバウンドを引いた部分の健闘が目立ちます。上期が同3.4%増、第3四半期が同6%増で、12月は同2.4%減ですが、1月と2月に想定外の落ち込みがなければ、前年を上回りそうです」

 

 

――中間層が伸びた理由は何でしょう。

「明確には不明ですが、お客様や従業員から寄せられた約4000件にのぼる声を反映してきた結果ではないでしょうか。もはや、フェアやブランドの入れ替えで売上げが伸びる時代ではありません。お客様や従業員から吸い上げた声を、従業員が即断即決で反映できるような体制を整え、新しいモノやコトを増やした方が、お客様は『この店は面白い』と思い、次の来店や買上げに繋がります。19年度は予算や経費について何も言わず、新しいモノやコトが成功したら褒めるように徹底しました。例えば、消費増税直後の10月1日から3週間に亘り北海道物産展を展開しましたが、買い物に使える200円分のチケットを用意し、食料品以外の売場の販売員が固定客に電話しました。『お陰で北海道物産展が開催されると分かった』、『自分の売場でもないのに、いい人ね』と好評で、毎週3000枚を配り、お客様は北海道物産展で平均して3500円ほど買って帰ってくれました。『次は、あなたの売場で買うね』と販売員に伝えるお客様も多く、1月のインバウンドを除く売上げは20日時点で前年比5%増ですが、その“リターン”と見ています」