2024年06月21日

パスワード

購読会員記事

大丸松坂屋百貨店、“自分へのご褒美”開拓に本腰

「大丸松坂屋オンラインストア」内に「GOHOUBI」と名付けたページを構える

大丸松坂屋百貨店は、今年の歳暮商戦を機に新たな挑戦を始めた。食品の自家需要の開拓だ。30代以上をメインターゲットに、あまり「デパ地下」で扱っていない、あるいはインターネット通販にはない食品を中心に、SKUで100余りの“お取り寄せ”を用意。ネット通販サイト「大丸松坂屋オンラインストア」で販売し、新客の獲得と新たな収益源の確立を目指す。

お取り寄せは「GOHOUBI」と名付けた。“自分へのご褒美”をイメージさせる。実際、大丸松坂屋オンラインストアや紙のカタログには食べたくなるスイーツ、ご飯や酒の“とも”、惣菜、メインディッシュなどが多彩だ。百貨店のネット通販では珍しい商品が多く、大丸松坂屋百貨店のバイヤーがメーカーに熱心に話したり通ったりして揃えた。

掲載する商品は「インスタ映え」を意識して写真の撮り方を工夫する。例えば、紙のカタログのあるページでは横長のテーブルに10種類の商品を所狭しと並べた。一つ一つの写り方は小さく、一つ一つを大きな写真で示してきた従来のギフトカタログとは一線を画す。社内や取引先からは「“売り”につながりづらいのではないか」、「紙のカタログだけ見て買う、年配のお客様の購買意欲を喚起できるか疑問」などの声も上がったが、田中直毅MDコンテンツ開発第2部フーズ担当ギフト企画運営担当は「売上げの6~7割をネット通販で見込んでおり、若年層に訴求するためにも、この方法を追求していく」と押し切った。

デジタルに抵抗がある人もいるため、紙のカタログも用意した。一方で、掲載した商品には二次元バーコードを付けて「大丸松坂屋オンラインストア」へ誘導する

若年層の感度に合わせて商品を訴求するとともに、大丸松坂屋オンラインストアではそれぞれを「達人のおすすめ」、「ごほうびスイーツ」、「いちごスイーツ」、「ごちそうグルメ」などにカテゴリー化。好みや目的に応じて買いやすくした。

達人のおすすめでは、フードジャーナリストの里井真由美さんが「おうち時間のとっておき、」を紹介。ごほうびスイーツには、大丸松坂屋百貨店で名うてのバイヤーの推奨品も盛り込んだ。バイヤーの1人はテレビにも定期的に出演する北海道物産展専任の本田大助氏、もう1人は「Instagram」のフォロワーが9000人を超えるスイーツ担当の渡邉博文氏で、その目利きには定評がある。インフルエンサーが強い影響力を発揮する時代だけに、「人を通じたリコメンド」(田中氏)を交えていく。

田中氏が推奨するのは「和栗白露」のモンブラン「橡(つるばみ)」、「朱華(はねず)」と、「大分中島 京屋本店」の「クリームチーズ西京焼」(全て12月22日時点で完売)。田中氏は「モンブランは栗の香りが物凄く、冷凍でも損なわれない。クリームチーズ西京焼は味が素晴らしい上に“酒泥棒”だ」と魅力を語る。

GOHOUBIを立ち上げた背景には、贈答習慣の変化がある。「中元や歳暮の売上げは微減が続いており、儀礼ギフトは厳しい。お客様も高齢化しており、新しいアプローチが必要。30代以上をメインターゲットにしつつ、既存顧客にもPRして、中元や歳暮とは違う入口をつくり上げる」(田中氏)。

12月22日時点で、売上げは好調だ。売り切れも続出した。今後は春夏と秋冬を大きなヤマに、定期的に商品を入れ替えて成長力を育む。品揃えの精度を上げるため、必ず選定会を開いて決める。田中氏は「(SKUで100余りと)小さく生んで大きく育てていく。ギフトにおけるGOHOUBIのシェアを上げ、全体の数字を伸ばす」と意欲を燃やす。

百貨店業界にとって「呉・宝・美」(=呉服、宝飾品、美術品)は強みであり収益の柱の1つだが、大丸松坂屋百貨店は“ご褒美”に照準を合わせ、新たな贈答需要を創出する。

(野間智朗)