2024年12月15日

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西武鉄道と住友商事による所沢駅西口開発計画が着工

24年秋の開業を目指す「所沢駅西口開発計画」(俯瞰イメージ)

西武鉄道と住友商事が共同で開発を進める「所沢駅西口開発計画」の起工式が10月28日に執り行われ、2024年秋の完成に向けて11月に着工となった。同再開発計画は、西武鉄道所沢車両工場跡地を含む周辺一体で進む「所沢駅西口土地区画整理事業」地区内に商業施設を開発。約3万4000平米の敷地に店舗面積が約4万3000平米、店舗数は約150からなる、広域集客型の拠点性の高い商業施設を完成させて「所沢市の表玄関口にふさわしい、魅力と活気のある街の形成を目指していく」(西武ホールディングスの後藤高志社長)。

西武グループが取り組む不動産事業は鉄道沿線、都心、リゾートの3つのエリア戦略で進める。所沢エリアについては、西武新宿線と西武池袋線が交差し、1日に約22万人が利用する所沢駅が西武鉄道沿線の中心的な拠点だ。同グループは2020年に同駅のリニューアルと商業施設の「グランエミオ所沢」で東口を完了させ、21年にはベルーナドームのボールパーク化と西武園ゆうえんちのリニューアルを実施。今回着工となった所沢駅西口開発計画の開発まで合わせると、投資額は1000憶円に上るとみられる。

そして所沢駅西口開発では「総決算となる開発事業として、所沢エリアをベッドタウンから“暮らす・働く・学ぶ・遊ぶ”の4要素が揃った“リビングタウン”へと成長させる街づくりを進める」(後藤社長)。

この計画(事業主は西武鉄道、住友商事、運営主体は西武リアルティソリューションズ、住友商事、住商アーバン開発)は、グランエミオ所沢に続き西武グループと住友商事グループがタッグを組んで進める。住友商事が手掛ける商業不動産事業の戦略は、テラスモール湘南で具現化したテラス思想にみられる、そのエリアならではの地域メイド型、GINZA SIXのような都心商業施設に代表される商業施設開発を取り込み、街に開かれたサードプレイスを象徴する施設づくりを推進する。

広域集客型商業施設は「所沢らしさを育み、都市と郊外の2つの魅力を享受できる『所沢スタイル』を創造・発信する拠点開発」をコンセプトに、ショッピングやレストランなどの店舗のほか、フードコート、シネマ、広場空間などを追加。体験および体感、ゆったりもできる滞在型施設として、近隣顧客を中心に利便性が高いコミュニティ型駅ビルのグランエミオ所沢との違いを明確にする。

埼玉県西部エリアの情報発信拠点となる2階に開設される中央広場(イメージ)

施設は地上7階建てで、1~4階が商業フロア。1階は隣接する公園との一体感を感じられるように施設内外の連続性が演出され、居心地よくゆったり過ごせる食ゾーン空間、人と環境に配慮した次世代型のデイリーマーケットなどで構成される。トレンドを発信するファッション・ライフスタイルフロアとなる2階には、様々なアートやカルチャーに触れて感動できる空間として、パブリックビューイングやライブの映像配信など、最新技術を活用した埼玉県西部における情報発信拠点となる施設が登場する。

子育て世代やファミリーをターゲットに、家族で時間を過ごせる空間となる3階は、ファミリー向けのテナントを集積。モノを見るだけでなく、その場で体験・体感できるようにする。

4階には富士山の見える眺望豊かな遊び、くつろぎの屋上広場をはじめ、屋上広場と室内空間が一体となったレストランゾーン、映画以外のコンテンツの上映も可能な映画館が設けられる。館内外で緑化に取り組み、建物外周部や建物壁面、屋上に緑を配置する計画だ。

富士山が見える眺望豊かな4F屋上広場(イメージ)

10月28日に開かれた起工式での神事終了後には、事業主や来賓、施行者の代表者が挨拶した。

西武ホールディングスの後藤社長は「西武グループでは所沢エリアを西武線沿線の中心衛星都市(=重要な交通結節点)と位置付けており、所沢駅西口開発計画は街を進化させていく上での重要なピース(要素)となる。魅力的な商業施設の完成を実現できるよう、共同事業者である住友商事様とともに全力で取り組み、訪れることで『体験・体感』ができる、そして他にはない『所沢らしさ』を実現できる商業施設の開発を進める所存であり、24年秋の開業にぜひ期待して頂きたい」と語った。

起工式の地鎮之儀で鍬入れをする、西武HDの後藤社長

住友商事の為田耕太郎常務執行役員生活・不動産事業部門長は「商業不動産事業では、それぞれの土地の特徴を深く理解した上で、地域の人に長く利用していただける施設づくりを目指している。一つ一つ、いわばオーダーメードという形でつくり込んでいくことがモットー。本事業は我々にとって埼玉県における初めての商業施設の開発になる。西武沿線をはじめとして豊富な実績と経験を持つ西武グループ様をはじめ、地域の皆様と力を合わせ、当事業を必ず成功させたいと強く思っている」と述べた。

所沢市の藤本正人市長は「車両工場跡地は所沢市の表玄関であり、所沢駅前に残された最後の大規模な空間であり、その土地の発展が当市の鍵となる。土地区画整理と市街地再開発の一体的施工による街づくりを進めることになり、大学と地元商業の関係者、地域住民などの参加による協議会を進め、さらに西武ホールディングス、西武鉄道、西武リアルティソリューションズ、住友商事など、商業施設を共同開発される事業会社様と本市とが協定を結び、駅周辺の賑わいの創出を目指してきた。所沢駅西口開発計画は環境に配慮した施設として、周囲に緑がふんだんに配置され、人が憩える空間が設けられることから、本市が目指している街づくりに則しており、単に賑わいをもたらすのではなく、人と人、地域と地域をつなげる新たな拠点として、本市を代表する施設になることを切に望んでいる」と熱く語った。

左から藤本市長、西武HDの後藤社長、住友商事の為田常務執行役員、清水建設の井上社長

清水建設の井上和幸社長は「この度の開発計画は、通過する街から暮らす、働く、学ぶ、遊ぶが揃う街、そして選ばれる沿線を掲げる西武グループ様の街づくり方針と、住友商事グループ様による地域メイドの開発や豊かな街づくりへの貢献とが一緒になって実現される大変重要なプロジェクト。設計・施工で加盟させて頂いたことは大変光栄だ。施工に当たっては、細心の注意を払って進め、高品質の建物を無事故、無災害によって、約束の工期以内に引き渡せるよう、全所挙げて取り組む所存」と、施工者を代表して挨拶した。

(塚井明彦)