2024年12月10日

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松屋銀座本店と阪急メンズ東京、相互送客を強化 銀座・有楽町エリアの活性化へ

近隣に構える両店でタッグを組み、顧客を囲い込む戦略だ

松屋銀座本店と阪急メンズ東京は、相互のカード優待サービスの対象を広げて相互送客を強化する。以前から外商顧客などを対象に行っていたが、ハウスカード顧客やポイントカード会員にも適用させる。両店間の買い物同行サービスの対象の拡大や、スマートフォン決済サービス「ウィーチャットペイ」の共通クーポンの発行なども実施し、銀座・有楽町エリアの活性化につなげる。

銀座・有楽町エリアはコロナ禍による来街者や訪日客の減少が著しく、他のエリアの百貨店に比べて回復が遅れていた。日本百貨店協会のデータによると、2021年の都内の百貨店の売上げは19年比で21.7%減なのに対し、銀座・有楽町は33.2%減となっている。阪急メンズ東京中村源店長は「今年に入って回復傾向にあるが、さらに買い回りを広げてエリアを盛り上げたい」と意気込む。

阪急メンズ東京のカード会員は、松屋1階の総合案内所または7階のカードセンターでカードを提示すると優待クーポンが貰える

両店は18年から相互送客の取り組みを始め、従来は外商顧客など一部の顧客に限定していたが、5日から対象を拡大。両店のハウスカード、松屋のポイントカード、阪急メンズ東京のアプリ会員も、カードの種類に応じて1~10%の優待を受けられる。これにより、対象会員数は約6万から約38万人に増える。

阪急メンズ東京1階に構えるパーソナルサービスの受付カウンター

加えて、互いの店まで同行する買い物アテンドサービスの対象も拡大する。これも今までは外商顧客など一部のカード会員のみだったが、5日以降は誰でも利用できる。阪急メンズ東京は同社の販売員による「スタイルメイキングクラブ」(有料)に加え、外部の専門家による各種コンサルティングサービス(同)も松屋まで同行が可能。5日に、これらを受け付けるサービスカウンターを1階に設置した。

松屋銀座本店と阪急メンズ東京は得意とするカテゴリーが異なるため、満足度や客単価を上げ、売上げ増を狙う。特にラグジュアリーブランドは、メンズが阪急メンズ東京、レディースが松屋銀座本店にあるブランドが約35あるため、買い回りの活発化が期待できる。相互送客の施策による売上高は、21年7月~22年6月で約8000万円だったが、23年度(23年3月~24年2月)で2億円、24年度で5億円を目指す。

イベントでも連携も行い、特別招待会の「松美会」(松屋銀座本店)や「ナイトイベント」(阪急メンズ東京)、クリスマス、バレンタインなどの催事で互いの店舗をPRする。9月に行われた松美会では、阪急メンズ東京のブースを設けメンズコスメなどを紹介した。

増加が予想されるインバウンド向けの施策も講じる。9月上旬にウィーチャットペイで、両店で使えるクーポンの発行を始めた。11日には入国の制限が緩み、とりわけ年末や来年の春節には多くの外国人観光客の来訪が予想される。先んじて準備を整え、いち早い回復を目指す。

8~9日には両店間を人力車で移動できるサービスを実施した

取り組みの拡大を記念し、8~9日には両店の間を人力車で送るサービスを実施した。松屋顧客戦略部長の服部延弘氏は、「両店の間は約600メートルとそれほど離れていないが、遠いと思われがちだ。ぜひ銀座・有楽町エリアの魅力、そしてリアル店舗の良さを感じてほしい」と語った。

(都築いづみ)