2022年05月19日

パスワード

購読会員記事

勢い続く大規模再開発-全国主要都市編(札幌、福岡天神・博多、長崎)

札幌、冬季五輪に向けて大規模市施設が続々と

地方都市では北海道の札幌、九州の博多・天神と長崎で、再開発機運が高まっている。

2030年の札幌冬季オリンピック・パラリンピックの誘致や北海道新幹線の開業などを控え、再開発に加速がついているのが札幌だ。北海道新幹線の札幌延伸で、新函館北斗~札幌間の2030年度末開業に向けて工事が進む札幌駅では、それにともない在来線支障移転工事が進められ、22年度から新幹線高架橋・新幹線駅舎工事に着手する。

北海道旅客鉄道が発表した新幹線札幌駅の概要によると、「大地の架け橋」をデザインコンセプトに、在来線各ホームから直接新幹線駅にアクセスできる通路幅が約9メートルのゆとりある乗り換え跨線橋と、動く歩道を設置して、新幹線と在来線相互の乗り換え時のスムーズな移動を可能にする。冬季五輪と北海道新幹線の開業を受けて札幌駅周辺での再開発事業にも加速がつき、「札幌駅交流拠点北5西1・西2地区市街地再開発事業」、「札幌西武跡地」、「(仮称)札幌すすきの駅前複合開発計画」、「札幌大通東1再開発」、「南2西3南西地区再開発」、「北海道ビルヂング」、「IKEUCHI GATEビル」、「ヒューリック札幌ビル」、「札幌第一生命ビル建て替え」、「HBC(北海道放送)旧社屋跡地」などの再開発計画が挙がっている。

JR札幌駅にある「JRタワー」は、商業施設・事務所・ホテル・シネマコンプレックス・バスターミナル・展望室などからなる、延床面積約30万平米(大丸札幌店を除く)の大規模複合施設である。札幌駅総合開発が運営する商業施設は「アピタ」、「エスタ」、「パセオ」、「札幌ステラプレイス」からなるが、そのうちエスタは23年夏の閉店が決まった。エスタ跡地などに札幌市・北海道旅客鉄道・札幌駅総合開発などが事業主体の市街地再開発組合が「(仮称)札幌駅交流拠点北5西1・西2地区市街地再開発事業」で大規模複合ビルを建設するからだ。その規模は地上43階・地下4階、高さ245メートル、延床面積約38万8500平米で、現JRタワー(延床面積約35万平米、高さ約173メートル)を上回る規模になる。商業・オフィス・ホテル・バスターミナルなどが入り、23年秋に本体工事に着手、29年秋に開業となる見込み。

池内グループが創業130年にあたる22年秋頃に竣工を予定しているのが「IKEUCHI GATE(イケウチゲート)ビル」建て替え計画。1949年に竣工した旧IKEUCHI GATEビルは、施設・設備の老朽化により20年6月で営業を終了し、解体工事も完了している。その跡地に建設している新IKEUCHI GATEビルは地上8階・地下1階からなる複合商業施設。札幌西武跡地に「(仮称)札幌駅南口北4西3地区第一種市街地再開発事業」で開発される再開発ビルは、高層階にホテル、低層階にヨドバシカメラが入居する商業施設。地上40階・地下6階、高さ約200メートルで、竣工は28年の予定。

23年春の竣工に向けて工事が進むのが、狸小路商店街入口に開発される「南2西3南西地区第一種市街地再開発事業」。規模は地上28階・地下2階、延床面積約4万3610平米の複合型再開発ビルで、分譲マンション・オフィス・店舗のほか、低層階に都市型水族館が入る予定。東急不動産・竹中工務店・イトーヨーカ堂などがススキノラフィラ跡地に開発しているのが「(仮称)札幌すすきの駅前複合開発計画」。“札幌の街に「あそびば」を~昼も眠らない街ススキノへ~”を施設コンセプトに掲げる同再開発事業は、北海道随一の飲食の街であり観光名所であるすすきのに新たなあそびばを創出して、夜も昼も賑わいある街に貢献できる施設を目指している。23年秋に開業する同ビルは地上18階・地下2階で、地下2階~地上4階がスーパーマーケット(イトーヨーカ堂)・コスメ&ドラッグストア・フードホール・ダイニングなどからなる複合商業ゾーン、5~7階がシネマコンプレックス(TOHOシネマズ)、7~18階がホテル(東急ホテルズ)で構成される。

東急不動産、イトーヨーカ堂などによる「(仮称)札幌すすきの駅前複合開発計画」

福岡天神・博多、民間ビルの建て替えで、賑わいを創出

福岡市の天神エリアと博多駅周辺地区で、国家戦略特区を活用した航空法の高さ制限の特例承認や容積率の緩和、地下鉄延伸などによる都市機能の向上によって民間ビルの建て替えを促進する再開発プロジェクトが進んでいる。「天神ビッグバン」と「博多コネクティッド」である。2015年2月に始動した天神ビッグバンは、天神交差点から半径約500メートルの明治通り地区を含む約80ヘクタールを対象エリアとして建て替えを進め、24年までの10年間で30棟のビルの建て替えを誘導し、新たな空間と雇用を創出するというもの。

一連の建て替えによって延床面積約1.7倍(44万4000平米→75万7000平米)、経済波及効果8500億円/年、雇用者数約2.4倍(3万9900人→9万7100人)の効果が見込まれている。ちなみにビッグバンが始まってから建て替えとなったビルの数(建築確認申請数)は52棟(15年2月~21年2月まで)、竣工棟数は43棟(21年9月末時点)となっている。

天神ビッグバンの規制緩和第1号となったのが福岡地所の「天神ビジネスセンター」。最先端の感染対策を施した地上19階・地下2階、高さ約89メートルのオフィスビルで、天神ビッグバンによる航空法高さ制限や容積率の緩和制度が活用され、魅力あるデザイン性に優れたビルにインセンティブを付与する天神ビッグバンボーナスも適用されている。今年4月末には1階の商業ゾーンと地下2階に12の飲食店舗を集積した「天神イナチカ」がオープンする。

21年に着工し24年の竣工を目指しているのが、天神ビジネスセンターのすぐ隣で工事が進む西日本鉄道の「福ビル街区建替プロジェクト」。福岡ビル、天神コアビル、天神ビブレのある天神第一名店ビルの3棟のビルを建て替え、一体化した大型複合ビルを誕生させるというもの。その規模は地上19階・地下4階、高さ約97メートルで、地下3階~地下4階が駐車場、地下2階~地上4階が商業店舗、地上5・6階がスカイロビー、7~17階がオフィスなど、18・19階がホテルで構成される。

天神ビッグバンエリア内では、22年の竣工に向けて「旧大名小学校跡地活用事業」も進んでおり、地上25階・地下1階、高さ約111メートル、延床面積約9万400平米の複合ビルが建つ。オフィス・ホテル棟とレジデンス、保育施設、公民館、老人憩いの家などが入るコミュニティ棟からなる。ホテル(全162室)にはザ・リッツカールトンの開業が決まっている。

同エリア内では、ほかに明治通り沿いのオフィスビル「ヒューリック福岡ビル」の建て替え計画があり、21年8月末で営業を終了した天神の商業施設「イムズ」(地上14階・地下4階、延床面積約4万4900平米)も解体され新ビルに建て替えられる。

一方、博多で進んでいる「博多コネクティッド」は、博多駅から半径約500メートルの約80ヘクタールを対象エリアにして、地下鉄線七隈線延伸や博多駅前通り再整備など交通基盤の拡充にあわせ、容積率などの規制緩和により、耐震性の高い先進的なビルへの建て替えや歩行者ネットワークを拡大するとともに、歴史ある博多旧市街と回遊性を高めるプロジェクト。インセンティブ制度として容積率最大50%緩和、屋根がある場合でも公開空地評価を最大2.5倍とする「博多コネクティッドボーナス」も創設されている。

これにより10年間で20棟建て替えた場合の経済効果として、延床面積約1.5倍(34万1000平米→49万8000㎡)、雇用者数約1.6倍(3万2000人→5万1000人)、10年間の建設投資効果約2600億円、建て替え完了後の経済波及効果(純増)約5000億円/年が見込まれている。ちなみに博多コネクティッドが始まってから建て替えになったビルの数(建築確認申請数)は15棟(19年1月~21年2月まで)、竣工棟数は7棟(21年2月末時点)。

“博多駅周辺地区において福岡市が主導する博多コネクティッドを推進し、博多駅の活力と賑わいをさらに周辺につなげるべく、博多駅線路上空に新たな都市をつくる”として、JR九州が2028年末の竣工に向けて「博多駅空中都市プロジェクト」(博多駅空中都市構想)を始動させた。博多駅線路上空に福岡のランドマークとなる新たな“都市”をつくり、「福岡を“世界から選ばれるまち”に高める」を狙いとして、線路上空(在来線竹下側・敷地面積約5200㎡)に最先端複合ビルを設け、最高の立地と機能を兼ね備えた最先端オフィス、全室35平米以上のゆとりある客室や線路上空を活かしたトレインビューを楽しめるラグジュアリーホテルをはじめ、商業や広場が開設される。

博多コネクティッドの対象プロジェクトは、JR九州の博多駅空中都市構想のほかに、「博多イーストテラス」(博多スターレーン)、「(仮称)福岡東総合庁舎敷地有効活用事業」、「(仮称)西日本シティ銀行本館ビル建て替え計画」、「(仮称)西日本シティ銀行事務本部ビル建て替え計画」などが挙がっている。

(仮称)博多駅一丁目開発で博多駅東のボウリング場跡地・博多スターレーンに開発される「博多イーストテラス」は、博多コネクティッドボーナスが認定された第1号のビルであり、博多エリアで最大級のオフィスビル(ワンフロア面積680坪超)となる。ビルの大きさは地上10階建て、延床面積約2万9200平米。JR九州を代表企業に福岡地所、麻生を構成員とする企業グループが手掛ける「福岡東総合庁舎敷地有効活用事業」で建つビルも博多コネクティッドボーナスに認定されている。地上12階・地下1階建てとなるビル(延床面積約2万1535平米)は博多駅東エリアの活性化につながるオフィスビルとなり、24年3月竣工予定。

長崎、新幹線開業を機に、駅周辺を開発

長崎で進む再開発は、「西九州新幹線(武夫温泉~長崎間)」の開業が引き金になっている。武雄温泉~長崎間(5駅・66キロメートル)が開業すれば博多~長崎間の所要時間は約1時間20分となり、従来より約30分短縮する。これを踏まえ、長崎駅西口にはMICE施設「出島メッセ長崎」が21年11月に開業している。出島メッセ長崎は地上4階・地下1階建てで、約3800平米のイベント・展示ホール、約2700平米のコンベンションホール、24の会議室などを備える。隣接地にはホテル(ヒルトン長崎)も開業した。

そしてJR長崎シティが23年春の開業に向けて「新長崎駅ビル」を立ち上げる。JR長崎駅東側に建設中の同ビルは敷地面積約1万8000平米、延床面積約10万2000平米、店舗面積約4万1000平米で地上13階建て。1~4階が商業施設、5~6階オフィス、7~13階がホテル(マリオットホテル、約200室)で構成される。JR長崎シティでは西九州新幹線開業に先駆けて、22年3月18日に長崎駅高架下商業施設「長崎街道かもめ市場」(延床面積約4400平米、店舗面積約2200平米)を長崎駅改札前にオープン。土産物27店、飲食店14店、コンビニやATMなどのデイリーサービス13店、合計54店舗を集積した。JR九州シティが現在運営している「アミュプラザ長崎」と「長崎街道かもめ市場」に、23年春開業の新長崎駅ビルを合わせると、約16万平米(延床面積)を上回る規模の商業施設が形成される。

23年秋に全面開業する「新長崎駅ビル」(上層階に長崎マリオットホテルが入ることが決定した)

 

<クリックして拡大>

 

<クリックして拡大>