2022年07月04日

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三越伊勢丹、阪急阪神百貨店らとデニムのアップサイクルに挑戦 50ブランド・150種類以上を来年3月から販売

12月1~3日には、展示会形式で報道陣に試作品を公開した

三越伊勢丹、岩田屋三越、阪急阪神百貨店、群馬県や愛知県、山形県のセレクトショップ、国内外の約50のブランドやクリエイター、衣料品のアイロンプレスや検品などを手掛けるヤマサワプレスがタッグを組み、デニムのアップサイクルに乗り出した。ヤマサワプレスが所有する約20トンもの使い古された「リーバイス」の「501」を、150種類以上の衣服やバッグ、靴、家具、玩具、アートなどに“再生”。伊勢丹新宿本店や岩田屋本店、阪急うめだ本店、st company(群馬県桐生市)、MIDWEST NAGOYA(愛知県名古屋市)、GEA(山形県寒河江市)で来年3月23日から販売する。

手作業で丁寧に洗浄されたデニムは、嫌な臭いがしない

デニムのアップサイクルは「デニム de ミライ~DENIM PROJECT~」と名付けた。その商品を選び、買い、楽しむ過程で、自分なりのサステナビリティを選択できる“未来”を目指す――という意味を込めた。

始点は2019年6月に遡る。ヤマサワプレスの山澤亮治社長は、仕事で訪れたロサンゼルスの市場で、大量の501に遭遇した。傷みや汚れが激しく、引き取り手がいないという。501を中学生の頃から穿き続けてきた山澤社長は「買い取って再利用しよう」と決意した。

約20トンの501は、東京都足立区竹ノ塚の倉庫を借りて保管。手作業で汚れや臭いを取り除く。「アパレルメーカーの下請けとして、アイロンプレスや検品などを手掛けてきたが、汚れや臭いを取るノウハウはなく、1年間は試行錯誤した。専門業者に特別な洗剤を作ってもらい、ようやく解決した」。山澤社長は苦労を明かす。

転機は昨年の9月だった。山澤社長の噂を聞き付けた三越伊勢丹の神谷将太クロージング&アクセサリーⅠグループ新宿婦人営業部セレクトショップ担当(リスタイル)バイヤー兼外商バイヤーが、竹ノ塚の倉庫を訪問。神谷氏は「(物量や作業などに)驚いた一方で、協業するなら1回限りでなく、進化できるようにしたいと考え、その場で『ファッションアイテムを“消化”できる企業と組み、皆で一緒にやりましょう』と提案した」と当時を振り返る。

神谷氏が“ラブコール”を送ったのは、阪急阪神百貨店の山外拓海第1店舗グループファッションワールドコンテンツ開発部ファッションディレクション部ディレクション(モード)担当だ。知人を介して、昨年の10月に開かれた某社の展示会で対面。カフェに場所を移すと、企画書を渡して想いを伝えた。さらに2週間後、神谷氏は大阪府に足を運び、山外氏の上長にプレゼンテーション。熱意を受け止めた阪急阪神百貨店も参画を決めた。

強力な援軍を得て、岩田屋三越やセレクトショップにも輪が拡大。販路を整えた上で、国内外の約50のブランドやクリエイター、アーティスト、専門学生らに商品の開発を依頼した。「AKIRANAKA」、「Vivienne Westwood RED LABEL Concept Store」、「CAMPER」、「KEITA MARUYAMA」、「3.1 Phillip Lim」、「mina perhonen」、「Sergio Rossi」、「カリモク家具」、「テンピュール」、「キシモトマイ」などが名を連ね、衣服から靴、食品、インテリア、絵画まで150種類以上の商品を用意した。商品の開発において、メッセージやテーマといった大枠は統一したが、ディレクションは参画する企業に一任。それぞれが品揃えで独自性を出せるようにした。

著名なブランドやクリエイター、アーティストと組んだからこその高いデザイン性が魅力だ

デニムの生地を使ったアートは国内初という

神谷氏は「コンテンツの幅を広げ、(交渉の)難易度が高いとされるブランドも揃えられた」と自信を示す。山外氏は「当社もアップサイクルに取り組んできたが、単独では広がりが足りない。今まで接点がなかった人達にも(メッセージや商品などを)届けられる」と期待を寄せる。

百貨店業界では過去に類を見ない大掛かりなアップサイクルだが、商品が売れ残れば本末転倒だ。神谷氏は「在庫にメリハリを付け、足りない分はオーダーや受注会などで対応するとともに、販売を開始する3月23日までオウンドメディアへの記事の掲載、動画の配信、雑誌とのタイアップなどのプロモーションを展開して認知度を上げ、購買意欲を喚起していく」と意欲を燃やす。

12月1~3日には、展示会形式で報道陣にサンプルを公開した。山澤社長は「反応は良い」と手応えを掴む。神谷氏も「勝算はある。次回はデニム以外も含めて検討中。コロナ禍さえなければ、三越伊勢丹と阪急阪神百貨店で一緒に交渉できる。両社で交渉すれば、今回は断られたブランドやクリエイター、アーティストを口説き落とせるかもしれない。もっともっと、多くのパートナーを巻き込みたい。ファッションという産業の継続性を証明し、百貨店のイメージアップにも繋げたい」と気を吐く。

三越伊勢丹の神谷氏(右)と阪急阪神百貨店の山外氏

“デビュー”まで3カ月余り。まずは周知を徹底し、1人でも多く共感と購買意欲を引き出す。