2025年08月20日

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三陽商会の複合ストア、都心部にも進出 売場効率化に大きく成果

都内1号店として今年3月に開いた大丸東京店のショップ

三陽商会の複合型コンセプトショップ「サンヨー・スタイルストア」が出店網を広げている。サンヨー・スタイルストアは、婦人服ブランド「アマカ」「エヴェックス バイ クリツィア」「トゥー ビー シック」「トランスワーク」を集約した複合型コンセプトショップ。衣料品売場の効率化を求める百貨店のニーズに応え、約2年で12店舗にまで増えた。多様なブランドの魅力を1つのショップで最大限に引き出すべく、積極的に改善を進めている。

サンヨー・スタイルストアは各ブランドの強みとなるアイテムを中心に、店舗スタッフの意見も取り入れた、地域特性に合わせた品揃えが特徴。マンスリーのテーマも設定し、ブランドの垣根を超えたコーディネートを提案している。

婦人服を再編したい百貨店とウィン・ウィンに

今年4月に松坂屋名古屋店に開いたショップ

1号店は2023年3月に開いた大和富山店で、同年7月に藤崎、9月に東急百貨店さっぽろ店、10月に高槻阪急スクエアと西宮阪急、11月に丸広百貨店川越店に出店。24年10月に東武百貨店船橋店、25年3月に大丸東京店と阪神梅田本店、4月に松坂屋名古屋店と天満屋福山店にオープンした。直営業態で、メンズも扱う「サンヨー・スタイルストア プラス」の岐阜柳ケ瀬店を24年9月に開いている。

出店が増えているのは、百貨店側が婦人服売場を縮小・効率化する動きをみせているためだ。長らく百貨店のファッション領域は低空飛行を続け、逆にラグジュアリーブランドは国内富裕層やインバウンド客の旺盛な消費によって成長を続けてきた。化粧品も、フレグランスを中心に堅調な推移を遂げている。

こうした消費動向を踏まえてフロア構成を見直す百貨店が増えており、三陽商会もそれを見据えてサンヨー・スタイルストアの展開を始めた。事業本部婦人服ビジネス部の山根浩樹部長は「投資を活発化する百貨店が増えており、出店は順調。百貨店のボリュームゾーンは縮小傾向にあり、当社としては複合化によって売上げを拡大したい。互いの考えが一致した店舗では、スピードを持って展開していきたい」と語る。

客単価が1~2割増、ウォレットシェア拡大に成功

事業本部婦人服ビジネス部の山根浩樹部長

店舗によって差はあるものの、出店後の状況はおおむね良好だ。4ブランドはいずれもアッパーミドルの女性をターゲットにしているが、デイリーカジュアル、スイートエレガンスなどコンセプトは各々異なる。「1人のお客様が様々なシーンに合わせてブランドミックスで服を選ぶようになり、選択肢が広がった」と山根氏は語る。客単価は以前の売場に比べて1~2割程度上がったという。

特に大丸東京店、松坂屋名古屋店が好調で、計画値に対して2ケタ増で推移(~6月末)。ショップの複合化によって、売場面積あたりの効率も上昇した。

日本は少子化が進み、多くの企業は国内事業において客単価の上昇を目標に掲げている。しかし、SNSなどの発達によっていつでも大量の情報を手に入れられる昨今は、単一ブランドで顧客のウォレットシェアを高めることが難しい。その点、サンヨー・スタイルストアはテイストの異なる複数ブランドを扱うため、成功しているというわけだ。

課題はコンセプトストアとしての統一感、専任ディレクターやVMD担当者を新たに配置

天満屋福山店のポップアップコーナー。ストアディレクターが提案するブランドミックスコーデを紹介している

とはいえ、各ブランドの個性を表現しながら、1つのショップとして表現することには難しさもある。そのため、専任のショップディレクターを昨夏に配置。各ブランドのコレクションを元に、毎月のテーマを決める。今春にはVMD(ビジュアルマーチャンダイザー)の担当者も配置し、ブランドミックスのスタイルや各店舗のVPを監修することになった。

店舗ごとの細かい運営は、店長や担当営業が行っているが、「店によってバイイングやディレクションの表現に差がある。本部からのアドバイスも交え、底上げしていきたい」(山根氏)と課題が残る。だが、「店舗の品揃えに自分達の意思が反映されていることから、さらにやりがいを感じて取り組むスタッフが多い」とメリットも大きい。

百貨店のファッション売場では、他社の複合ストアも増えている。そこでサンヨー・スタイルストアでは「コンセプトストアとしての統一感」と「地域に応じた品揃え」の2つを武器として磨き、独自の魅力を高めていきたい考えだ。

(都築いづみ)