三陽商会、新中計が始動 10年後1000億円に
ブランドの世界観を体現する直営店を拡大しつつ、百貨店への出店も強化する方針だ
三陽商会は先ごろ、新たな中期経営計画(26年2月期~28年2月期)を発表した。長期目標として、10年後に売上高1000億円、営業利益率10%を設定。そこまでの道のりとして、28年2月期は売上高700億円、営業利益50億円を目指す。これまで取り組んできた粗利率の改善や商品力の強化などは継続しつつ、新規自社ブランドの開発、海外展開なども行う考え。
25年2月期は減収も、最終利益は増加
24年度(24年3月~25年2月)は、売上高が605億2600万円(前期比1.3%減)、営業利益が27億1500万円(同10.9%減)、経常利益が28億2500万円(同11.3%減)、当期純利益が40億700万円(同43.7%増)だった。前年のリベンジ消費の反動や暖冬が影響して減収だったが、販管費の削減などに成功した。また、営業利益、経常利益、当期純利益は計画値を上回っている。
四半期別の売上高推移は、第1四半期(3~5月)が前期比96%で、コロナ明けのリベンジ消費の反動や、繰越品減少に伴うセールの売上げ減少が影響した。第2四半期 (6~8月)は同103%だが、盛夏向け商品が値頃感に欠き、目標には未達だった。第3四半期(9~11月)は記録的な高気温の影響で、秋冬物の初動が大幅に遅れた。特に商戦のヤマとなる10月が不振となり、同95%に着地。第4四半期(12~2月)は、低気温で2月の春物プロパー販売の初動遅れにより苦戦し、同101%となった。
売上高は前年より8.3億円のマイナスで、計画には4.7億円未達だった。西武池袋本店など、一部売場の閉鎖も影響した。大江伸治社長は「消費者の購買パターンの変化、特に実需買いへの対応力を十分に発揮できなかった。対応力、機動力が十分ではなく、これは反省しなければいけない」と述べた。
ただし粗利率は62.5%で、前年より0.3ポイント改善した。平均売価が上昇したことによって、原価率を若干下げることに成功した。繰り越し在庫が減ったことでセールの値下げ率が下がったこと、EC・アウトレットの専用商品の増加も影響した。
雑貨や子供服など事業領域を拡大
新中計の数値は、10年後の長期目標である売上高1000億円、営業利益率10%、ROE10%から逆算して策定した。初年度にあたる26年2月期は、未達成となった前中計最終年度の当初計画である625億円、27年2月期は660億円、28年2月期は700億円を目標とする。
目標達成に向けたアプローチは主に、①オーガニックグロースの継続②ブランド価値向上をレバレッジとした事業領域の拡張③新規自社ブランドの開発④海外展開⑤M&A--の5つがある。
①は構造改革の継続によるKPI改善、販管費抑制の継続、商品力の強化、販売力の強化などを行う。②は雑貨や子供服、ユニフォーム、ペット用品など新カテゴリーへの事業領域拡張を図る。③は、第1弾として今年3月にEC専用ブランド「BIANCA」をローンチしたほか、ファッションビルやショッピングセンターを主販路としたブランド開発を検討している。
④の海外展開は、海外への卸売りや越境ECの強化、戦略パートナーと協業したアジア展開などを計画する。今年1月にイタリアのファッション見本市「ピッティ」に自社ブランドの「サンヨーコート」「青森ダウン」を出展したところ、数社から具体的な引き合いがあったという。大江社長は「お披露目のつもりで出したので、非常に好感触」と語る。⑤のM&Aに関してはまだ具体的な案件はないが、商標権の買い取りや、企業の買い取りを想定している。
チャネル戦略は、もっともシェアが高い百貨店の出店を強化しつつ、直営店、ECサイト、アウトレットも成長させる。百貨店は3年間で39億円プラスの430億円、直営店は24億円プラスの60億円、ECサイトは18億円プラスの100億円、アウトレットは27億円プラスの100億円を目指す。
(都築いづみ)