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【連載 新事業の創出】近鉄百のFC 10業種まで拡大 20年度100億円超の規模へ

2020/02/14 10:00 am

デジタル化は加速し、生活者のモノ・コトに対するニーズの多様化や高度化、個性化が進展する。これらの変化もスピーディーだ。この変化に適応していくためには、従来型の百貨店リアル店舗だけでは限界があり、業種業態を超えた新たな事業創造が欠かせない。既に商業開発(不動産)をはじめ、クレジット(金融)、建装事業など、第2、第3の収益源となる事業が育ってきている百貨店もあるものの、マーケット変化に応じた間断ない事業開発・市場創造が問われる。eコマース(EC)市場への対応も課題であろうが、これ以外でも各社各様に「あるべき姿」の実現に向け、百貨店事業を補完する、あるいは相乗効果が高い新規事業の開拓や新しい市場の創造に積極的に挑んでおり、その成果が表れつつある。

 

 

近鉄百貨店では、2015年から手掛けてきたフランチャイズ(FC)事業が成長軌道を描いている。昨年12月までに10業種・32店舗まで広がり、19年度(20年2月期)の売上高は80億円規模に達する見込み。モノ売りだけでなくコトサービスに業種を広げ、さらに今年は台湾の食雑貨セレクトショップ「神農生活」と業務提携した。20年度は100億円突破を目指せる勢いだ。

 

18年度から始動した中期経営計画で掲げた経営コンセプトが「共創型マルチディベロッパーへの変革」で、「百貨店の枠を超えて新しいビジネス分野に進出していく」経営指針。百貨店事業の収益力を強化しつつ、さらなる成長に向けて新たな収益の柱となる事業の確立を目指している。

 

 

近鉄 ブロッドン

△ベーカリー事業の「ブロッドン」は四日市店、奈良店、生駒店に開設。食品売場の活性化が図られた

この中で頭をもたげてきたのがFC事業。2015年の「ファミリーマート」との業務提携から始まり、2016年に「東急ハンズ」、ベーカリーの「ブロッドン」、グロサリー・日配品の「成城石井」、眼鏡の「オンデーズ」、2017年にカタログギフトの「リンベル」と順次提携して、主に地方・郊外型百貨店に店舗を開設してきた。

 

いずれも各々の立地環境に応じた地域共創型百貨店への構造改革に向けた改装を機に導入。特に地方・郊外型店では、フード関連の集客効果は大きい。第1段階で「食領域」を強化して集客力を高め、次いで上層階の段階的改装によってさらに集客力と回遊性を高める構造改革のサクセスストーリーが生まれてきた。

 

2018年には「タリーズコーヒー」、レンタルオフィスの「SYNTH(シンス)」、「ABCクッキングスタジオ」と業務提携。これまでの「モノ」を売る領域から、「コトサービス」領域に業種を広げてきた。次いで2019年は、フィットネス事業を手掛ける「ボディーズ」と業務提携して、昨年11月1日に女性専用のフィットネススタジオを草津店に開設した。

 

FC事業参入の狙いを改めて整理すると、「事業領域の拡大による新たな収益源の確保並びに百貨店事業の補完」をはじめ、「自主事業による利益の確保」、「期待利益の確実な達成とスピーディーな事業展開」、「小売ノウハウの獲得と人材の活用と育成」を想定していたが、概ねこれらのメリットを享受できている。

 

この理由について近鉄百貨店では、「百貨店客層との親和性が高く顧客ニーズに合ったデイリーユース業態やコトサービス業態を選定したこと」、「ブランド力、商品力、指導力の優れた企業と取り組んだこと」、「フランチャイザーの指導のもと、売場の現場運営力が向上して商品やサービスが顧客に受け入れられたこと」、「人、建物、立地など各種資産を有効活用して取り組んだこと」を挙げる。

 

今年は海外ブランドのFCビジネスに進出する。台湾で人気の食雑貨セレクトショップ「神農生活」を手掛ける「神農市場有限公司」と、日本国内におけるFC契約を結んだ。今秋に1号店をあべのハルカス近鉄本店に開設し、他の主要都市への出店を目指す。

 

20年度は業容拡大期。近鉄百貨店以外の商業施設も含め、好調な業態の出店と共に、時間消費型や体験型のコトサービス業態の拡大に取り組む。FC事業に擁する人員は120名規模まで膨らんでいる。百貨店事業からの異動で賄っており、全社の営業利益への貢献度も高まってきた。「共創型マルチディベロッパーへの変革」を牽引する事業に育ちつつある。