メリーチョコの人気商品「ミルフィーユ」をつくるチョコレート工場のヒミツ
船橋工場の「ミルフィーユ」製造の様子
メリーチョコレートカムパニーの「ミルフィーユ」の人気が上昇している。食の専門家の審査によって選出される「ジャパン・フード・セレクション」の第88回でグランプリを受賞。チョコレートメーカーならではのこだわりや味が評価された。同商品を製造しているのは、南船橋駅に近い船橋工場だ。どのように製造されているのか、その内部を取材させていただいた。
チョコのおいしさが秘訣、昨年は約3724万個を生産
船橋工場の外観
ミルフィーユは「ジャパン・フード・セレクション」を受賞するなど注目が集まっている
船橋工場は1986年に1号館、94年に2号館と物流センターが操業を開始した。チョコレートの製造と包装、クッキー・焼き菓子の製造、ミルフィーユの製造と仕上げを行っている。従業員は社員が87人勤務する。派遣社員は時期によって変動があり、比較的閑散期の2~8月は約40人、繁忙期の9~1月は100~130人が働いている。
同社は大森工場、松戸工場なども擁するが、焼き菓子の製造は船橋工場のみが行う。また、同工場で製造されたチョコレートやクッキー・焼き菓子は別の工場で箱詰めが行われるが、ミルフィーユは製造から包装まですべて船橋工場が手掛ける。
ミルフィーユは、サクサクのパイとクリームを重ね合わせ、チョコレートを掛けて仕上げた商品。通年では「チョコレート」「ストロベリー」「アーモンド」の3種のフレーバーを展開し、季節によって「瀬戸内レモン」や「あまおう苺」など限定味も出す。チョコレートのおいしさが人気を集め、昨年の年間生産量は約3724万個に上っている。
パイはチョコレートを邪魔しない“サラサラ食感”
まずはオーブン(右)でパイ生地を焼成する。温度は約230度
クリームを充填する工程
製造は3日掛かり、1日目はパイを焼成する。2日目はパイ生地にクリームを乗せ、パイ生地でサンドして冷蔵庫で寝かせる。3日目にスライサーでカットし、チョコレートを掛け、冷蔵庫で冷やし固める。その後金属探知機で異物がないか確認し、個包装、ケースに詰めて製造工程は完成する。
パイはオリジナルで、144層の生地を3枚重ねている。同商品は開発当初「チョコレート屋さんらしい、チョコレートの味がしっかりするミルフィーユ」を目標としており、パイはチョコレートの口溶けを邪魔しないサラサラとした食感にしている。クリームはチョコレートに負けないよう、パンチの効いた味にしている。
チョコは「二度掛け」で見た目と味を向上
クリームを挟んだパイ生地をカット。1枚の生地から162個ができる
チョコレートを掛ける「エンローバー」が2つあり、二度掛けしている
コーティングに使うチョコレートは、チョコレートメーカーである同社が最も力を入れる材料だ。ミルフィーユ専用に開発したチョコレートで、しっかりとチョコレートの味を感じられる“チョコレート感”を重視。口溶けにもこだわり、パイと同じタイミングで口の中で一体となって溶けるよう、配合や厚みを調整した。
製造工程では、チョコレートを掛ける「エンローバー」を2つ設け、コーティングを2回行う。一般的なミルフィーユは一度掛けが普通で、二度掛けすることは珍しい。しかし二度掛けすることで満遍なくコーティングでき、見た目も良くなるというメリットがある。
グランプリ受賞には「自信があった」
箱詰めの様子。3種のフレーバーがそれぞれ所定の位置に自動で収まる
マーケティング本部研究開発部の大石茂之部長(左)と笹瀬斉美係長(右)
ジャパン・フード・セレクションの受賞について、マーケティング本部研究開発部の大石茂之部長は「出品したのは初めてで、それでグランプリを受賞できたのはとてもうれしい。元から味には自信はあったが、評価されることで実感ができた」と感想を述べた。笹瀬斉美係長も「味に関しては社員の皆が、『他社に負けないおいしいものをつくっている』自負がある。素材や配合、製造にはこだわっている」と語った。
ミルフィーユは以前は秋冬限定商品だったが、数年前に通期化し、拡販に注力している。今年の夏は、冷蔵庫で冷やしてワインのおつまみにしたり、黒コショウを少量掛けたりといった、少しアレンジした楽しみ方も提唱している。
記者も試食したところ、まず口当たりが滑らかなチョコレートから始まり、軽い歯応えのパイ、ふんわりとしたクリームが一体となって口の中で溶けていく感触が味わえた。パイ生地やクリームの存在がチョコレート特有の重さを軽減し、冷やすと夏のクールデザートとして味わえる。秋冬、特にバレンタインに売上げが集中するメリーの“夏の盛り上げ役”として期待ができそうな商品だ。
(都築いづみ)