2024年12月15日

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三井不動産の篠塚寛之執行役員が語る、ロジスティクスパーク事業の戦略

三井不動産執行役員ロジスティクス本部長の篠塚寛之氏

三井不動産は7月11日、ロジスティクス事業の記者説明会を開いた。篠塚寛之執行役員ロジスティクス本部長は、三井不動産グループの新長期経営方針「&INNOVATION 2030」を踏まえた「三井不動産ロジスティクスパーク」(MFLP)事業の戦略について、以下のように語った。


これから、三井不動産ロジスティクスパークが展開している事業「ロジスティクス事業施策」「これまでの開発物件について」「新規物件紹介・今後の開発物件・これまでに開発した物件」の3つの戦略についてお話しします。

まずは&INNOVATION2030とロジスティクス事業における施策ですが、今年4月に当社グループの長期経営方針、&INNOVATION2030が策定され、そこで不動産デベロッパーの枠組みを越えた産業デベロッパーとして社会の付加価値創出に貢献していく目標を掲げています。そこで当社のロジスティクス事業は具体的に何を行っていくのか。ロジスティクス事業戦略の1つは「コア事業のさらなる成長」です。そのために街づくり型物流施設の開発を進めていきたいと考えています。当社はこれまでMFLP船橋、MFLP羽田をはじめとする街づくり型物流施設の中に、有力な物流会社や小売企業の方々をテナントとして誘致しているのはもちろん、自動化倉庫、ICTラボ、EC特化型物流センターなどを備えた上で、先進的な物流施設を開発・運営してまいりました。

開発に当たっては、ドライバーを含む施設利用者の方々に対して満足度調査を実施して、コンビニや喫煙場をトラック待機場そばに設けたり、快適な休憩室や食堂などの機能を充実させたり、働き手側の意見を反映させています。さらにMFLP船橋では地域に開かれた公園や託児所、アイススケートリンク、バーベキュー広場などを加え、地域と一体となった街づくりに注力することで、そこで働く人々や地域の方々に誇りを持っていただけるような開発を行っています。

防災に関する取り組みも進め、地方自治体と防災協定を締結したり、行政の防災倉庫を設置したり、MFLP綾瀬の場合はドクターヘリポートを設置して地域の緊急医療に貢献しています。プレミアムフェスタというイベントも開き、小学校の社会科見学も受け入れています。MFLP船橋のプレミアムフェスタにはテナントからもアウトレットブースを出してもらって、我々が物流センターの見学ツアーを開き、昨年は2日間で約5000人の来場があり、地元の名物イベントになりつつあります。

また今年度、新たな街づくり型物流施設として竣工するMFLP・LOGIFRONT東京板橋では、次世代モビリティとして期待されているドローンの実証実験フィールドを提供して、ドローンによる配送・点検・災害活用の実験を行っていく予定です。こういった街づくり型物流施設の開発を行うことで付加価値を創出し、エリア全体の価値を高め差別化を図っていく所存です。

コア事業のさらなる成長に向けて行っていく戦略の2つ目は、サプライチェーンの改革支援です。本年度からトラックドライバーの残業時間が制限されるなどによる労働力不足で、2024年問題への注目が高まっています。この問題は我々の生活、経済全体にも影響を及ぼすもので、運送業や荷主の方々だけでなく、我々デベロッパーも積極的に連携していく必要があると思っています。2024年問題のアプローチ手法として各企業の物流業務そのものを効率化していくことが有効となりますが、ここでは当社の「&LOGI Solution」が行っている事例を紹介します。

昨年4月に立ち上げた&LOGI Solutionは物流コンサルのプラットフォームで、荷主企業の課題を洗い出し、最先端技術を結び付けて各企業への最適な解決策を提案させていただいています。サプライチェーン変革の事例として国内ハウスビルダー様との取り組みについてですが、物流コストを見える化して将来計画を見定めた上で拠点の統廃合を行いながら、サプライチェーンの変革する業務を我々と一緒に進めた結果、物流業務の無駄がなくなるだけでなく、年間約8億円のコスト削減ができると聞いています。

今年4月から、EC事業者の方々に対して自動倉庫を従量制で利用できる「&LOGI Sharing」というサービスを提供していますが、こちらは単純に自動倉庫をお貸しするだけでなく、注文受付や配送手配、在庫管理などのサービスを行い、EC事業者のサプライチェーン構築に貢献することを目的としています。

それ以外の取り組みでは、中継拠点ニーズに応えるため中部圏、東北地方、中国地方での事業機会を拡大していきます。倉庫やトラックとシェアしながら物流業務を進めていくフィジカルインターネット構想に参画したり、出資先のHacobu社との取り組みを強化してドライバーの待機時間を削減したりする取り組みも行っています。このようにお客様のサプライチェーンの変革を支援することで、生産効率を高めて付加価値を提供していきます。

次は「事業領域の拡大」です。これには冷凍・冷蔵倉庫の開発推進があります。コロナ禍をきっかけとしたネットスーパーの拡大や冷凍食品の普及によって、ここ数年で温度帯倉庫の市場規模が伸びていることや、足元では庫腹の占有率が97%と満杯に近い状態が続いていることから、今後は冷凍・冷蔵倉庫の市場が伸びていくと考えられます。

既存施設の3割以上が築40年を超えており、改正オゾン法によってフロンから自然冷媒への転換が進んでいくため、これから建て替えや賃貸需要が増えていくと考えられます。当社は船橋湾岸エリア、埼玉内陸部で冷凍・冷蔵設備付きの開発に着手しており、今後冷凍・冷蔵倉庫の物件を積極的に増やしていきます。

データセンターについても積極展開します。クラウドサービスの利用拡大やIOT導入などにより国内のデータ通信量は増えており、今後も生成AIや5Gの普及などで増加傾向が続いていくと考えられます。当社は10年程前にデータセンターの開発に着手し、直近でもさらに大きな需要を感じております。世界各国のデータセンター事業者の方々と協議を重ねながら用地取得を進めており、今後はデータセンター設備にも投資した上でコロケーション事業にも挑戦していく考えです。

当社が開発するデータセンターはMFIP(三井不動産インダストリアルパーク)のブランドで事業展開していますが、5年前に竣工したMFIP羽田はデータセンターでなく、オフィス、研修センター、大田区の産業支援施設、東京都の職業訓練校などを誘致してインダストリアル系の様々なテナントに利用いただいております。事業領域の拡大については、こういった工場やインフラ系のアセットにも事業ウイングを広げ、インダストリアル系プラットフォーマーとしての役割りを担っていく考えです。

その取り組みの一環となるのが「mitaseru」です。mitaseruは三井不動産の新規事業となるお取り寄せグルメサービスで、このmitaseruの製造拠点をMFLP船橋の敷地内につくり、製造から保管、配送まで独自のサプライチェーンを構築することを考えています。ミシュランで星を取っているレストランや老舗の名店から直接レシピを受け取って専門の料理人が調理した上で冷凍加工しているので、非常においしく簡単に食べられて、しかもフードロスがない、環境に配慮したサービスです。

3つ目となる事業戦略施策は「ESGに関する取り組み」です。物流施設の屋上に太陽光パネルを取り付けられるので、当社施設では供給電力のグリーン化を進めています。共用部に関しては23年10月時点で全施設の供給電力をグリーン化しており、専用部においてもグリーン電力の利用促進を各テント企業に対して実施しております。それから当社の物件は既存・新築問わず全ての物件についてDBJグリーンビル認証、ZEBなどの外部認証取得を継続していきます。

加えて就業者の生産性向上や就業環境の付加価値を高める目的で、当社初の木材倉庫の開発を検討しています。当社グループは北海道の約5000haの森林に木材を保有しており、この木材を構造材、内装、仕上げ材などの一部に使用することで植える、育てる、使うというサイクルによる終わらない“森創り”にも貢献します。

次は「これまでの開発物件について」を紹介します。23年度は4月に「MFLP新木場Ⅱ」、9月に「MFLP座間」、24年2月に「MFLP・OGUD大阪酉島」、3月に「MFLP海老名南」の4物件が竣工。これにより6月末時点で竣工した物件は51物件。今年度新たに竣工する物件は24年4月に「MFLP仙台名取Ⅰ」、5月に「MFLP名古屋岩倉」、9月に「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」、25年2月に「MFLP横浜新子安」。中でも東京板橋は街づくり型物流施設として、国内外の優秀なテナント様に入居していただくだけでなく、地域防災への貢献やドローンの実証実験の場を提供するなどにチャレンジします。

新規開発物件については、新たに8物件の開発が決定しています。その新規開発物件を紹介します。「MFLP横浜新子安」は首都高速神奈川1号横羽線・生麦ICの近くにある約1万8000坪(敷地面積)の大規模立地で、しかも駅から歩ける非常に恵まれたプロジェクト。すでに入居するテナントも決まっており、25年2月に竣工予定です。「MFLP京都八幡Ⅰ・Ⅱ」は第二京阪道路・八幡京田辺IC近くにある約3万5000坪(同)の大域模立地で、ここに2棟の物流施設を建設する予定であり、新名神高速道路の開通によって名古屋、大阪、神戸への広域配送を見込める大変利便性の高いプロジェクトです。それから「(仮称)MFLP仙台名取Ⅱ」は本年度竣工するMFLP仙台名取Ⅰに次ぐ東北エリア第2の物件であり、同じ区画整理地に建設するプロジェクト。国道4号線と仙台東部道路からのアクセスが良く、市内配送・広域配送のどちらにも対応可能であり、最寄駅から歩ける距離にあるため、雇用確保にも有利な立地となります。

次は「(仮称)淀川区加島物流施設計画」です。ここはSGリアルティ様との共同事業で、立地は大阪市の中心部から非常に近く、高速道路へも主要道路へもアクセスが抜群に良く、2万8000坪(同)の土地は街づくり型物流倉庫のノウハウを生かせる大規模プロジェクトとなります。さらに埼玉県杉戸町にある工業団地の一画に竣工する「(仮称)MFLP杉戸」は、国道4号線や16号線に近接した人口集積地への配送適地となり、ここに冷凍・冷蔵倉庫を開発します。

これら以外にも船橋沿岸部や関東西エリアなどで開発を検討しており、これから冷凍・冷蔵倉庫事業を拡大していく考えで、データセンター事業についても日野と相模原でデータセンターを開発する予定。両データセンター合わせて260メガワットとなる大きな開発となります。

最後に、当社のロジスティクス事業は、竣工済みの物件数が51物件、開発中24物件、合計で75物件、延床面積約600万㎡となり、累計の投資額は約1兆2000億円となります。これまで紹介してきた事業戦略を推進して、「ともに、つなぐ。ともに、うみだす。」のステートメントの基に成長に向けて取り組んでまいります。

(塚井明彦)