2024年10月09日

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ながの東急百貨店、回復基調が鮮明化 ハイブリッド化リモデルに手応え

昨年9月、本館1階の百貨店区画をリニューアルした

2022年度に3期ぶりの営業黒字となったながの東急百貨店は、23年度(23年2月~24年1月)も営業黒字を達成し、“回復”から“安定”フェーズに突入した。ここ数年は専門店テナントを導入し、百貨店部分を集約する「ハイブリッド化リモデル」を推進しており、その効果が現れてきた。今年度は総売上高の目標を前期比5.6%増に設定し、トップラインを押し上げることでさらなる増益を目指す。

23年度の総売上高は、前年比1.3%減。しかしこれは定期賃貸借のテナントを増やした影響が大きく、営業利益は前年を大きく上回った。コロナ沈静化を受け、客数も増加している。平石直哉社長は「回復基調が鮮明になった」と語る。

本館6階にできたクリニックゾーン

同店の経営の安定化の一助となっているのが、全館規模の「ハイブリッド化リモデル」だ。ハイブリッド化リモデルとは、百貨店型の売場とテナントをミックスし、運営効率と館の来店価値を高めるリモデルのことで、21年度から行っている。昨年1月には眼科、レディースクリニックなど医療系クリニックを集めたゾーンを本館6階に形成。同3月には別館5階に「石井スポーツ」を新規テナントとして導入した。

さらに9月には本館1階の百貨店区画に「スワロフスキー」「4℃」「フルラ」「サボン」をオープン。店の顔であるグランドフロアに、上質かつ人気の高いブランドを揃えた。導入したのは婦人靴売場だった場所で、婦人靴売場は縮小し、一部を本館4階に移設した。

新ショップの売上げは好調に推移し、若者の姿も多く見られるようになった。サボンは期間限定の展開で、当初は今年3月末までの予定だったが、反響が多く期間を延長している。こうした長期間のポップアップは常設展開前のトライアルとしても有効なため、今後も実施していく方針だ。

別館5階には「石井スポーツ」をテナントとして誘致した

今年度もハイブリッド化リモデルは続き、秋には6階の子供服売場を3階に移設し、併せて、2~4階の衣料品売場を集約し、運営効率と坪効率の向上を図る。6階には集客力の高い大型テナントの導入を予定する。

ハイブリッド化リモデルの過程では、別館5階にあった催事場を石井スポーツのショップにしたが、それが催事にも好影響を与えている。催事場が2つから1つに減ったことで優良なコンテンツを残すことができ、効率が上昇。什器や人員といったコストを抑えることにも成功している。

最近は松本市の井上本店の閉店のニュースも報じられ、県内に衝撃が走った。ながの東急百貨店への注目も高まっているが、平石社長は「当店も決して楽観視はできないが、地元に根差して新しい百貨店の形を創造しながら、10年、20年先も営業を続けていく。そのために全力を尽くす」と決意を述べる。

(都築いづみ)