2024年11月08日

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三井不動産、日本橋に国内最大・最高層の木造オフィスビル

緑豊かな東側公園公開空地(完成予想パース)

三井不動産は1月4日、中央区日本橋で推進する「(仮称)日本橋本町一丁目3番計画」に着工した。2026年に竣工を予定しており、完成すれば国内最大・最高層の木造賃貸オフィスビルとなる。地上18階建てで、高さは84m、延床面積は約2万8000㎡。コンセプトは「日本橋に森をつくる」で、設計施工は竹中工務店が行う。用途は事務所、研究所、店舗となる。

国内最大・最高層の木造賃貸オフィスビル(外観の完成予想パース)

使用する木材量は国内最大級の1100㎡超、二酸化炭素(CO₂)固定量は約800トン-CO₂を見込む。同規模の一般的な鉄骨造オフィスビルと比較して、躯体部分において建築時のCO₂排出量30%の削減効果が想定されている。また、三井不動産と日建設計で作成したマニュアルをベースに、不動産協会によって策定された「建設時GHG排出量産出マニュアル」を適用して排出量を把握する初のオフィスビル物件となる。

三井不動産グループは、グループビジョンに「&EARTH」を掲げる。北海道に保有している森林(東京ドーム約1063個分に当たる約5000ha)を生かし、「植える→育てる→使う」のサイクルを回し続け、持続可能な森林経営による「“終わらない森”創り」に取り組んでいる。今回の木造賃貸オフィスビルには、保有材約100㎡を含む1100㎡超の国産材を構造材として使用し、仕上げ材・内装としても同保有林の木材を活用する。

内装にも木材を活用したエントランスホール(完成予想パース)

エントランスホールを上質な吹き抜け空間とし、壁には三井不動産の保有林の木材を、天井には三井ホームが保有する木接合技術を駆使するなど、構造材のみならず内装・仕上げ材にも木材を使用。木造オフィスだからこそできる「行きたくなるオフィス」の実現を目指す。

日本橋における新たな緑の拠点として約480㎡の緑地も整備。オフィスワーカーや来館者、周辺住民が自然を感じられる緑豊かな歩行空間を創出する。樹種の選定に当たっては、蝶などの生き物が都心にも生息しやすい生物多様性に配慮した環境づくりを推進する。

屋上には有機質肥料を用いた最先端の水耕栽培システムと、空調設備の省エネ効果が期待される室外機芋緑化システムを導入予定。水耕栽培システムにはNewSpaceが開発した技術を導入し、無化学肥料・無農薬の栽培を行うことで環境にやさしいオーガニック農法を実現する。有機質肥料を用いた屋上水耕栽培システムの整備は、オフィスビルにおいて国内初となる。もう一方の室外機芋緑化システムは、屋上に設置された室外機の周りで芋を栽培し、繁茂した葉の蒸散作用と、日陰により周辺の温度を下げることで消費電力の低減を図る仕組み。

さらに、同木造賃貸オフィスビルには持続可能な社会の実現に向けて、これから活用が期待される新技術・新製品が導入される。加えて、建築廃材やリサイクル材も活用される。前者は東芝エネルギーシステムと連携し、フィルム型ペロブスカイト太陽電池に関する実証実験。同太陽電池は、フィルム基板上に印刷技術を用いて作製できることから、軽量・フレキシブルな次世代の太陽電池として注目されている。また、共用部にはアサヒ飲料の「CO₂を食べる自販機」を設置する予定。同自販機は、庫内にCO₂を吸収する鉱業副産物を使用した特殊材が搭載され、設置するだけで大気中のCO₂を吸収する国内初の自販機だ。1台当たりのCO₂年間吸収量は、稼働電力由来のCO₂排出量の最大20%を見込んでおり、スギ(林齢50~60年想定)に置き換えると約20本分の年間吸収量に相当する。

後者については、竹中工務店の「建築廃材のアップサイクル」への取り組みのモデルプロジェクト。既存建物の解体工事で発生する廃材や、新築工事で発生する端材を建物の一部や什器などにアップサイクルし、オフィスビルにおける新たな価値提供でSDGsの達成を目指す。

そのほか、オフィスに関しては一部フロアに日本橋において三井不動産初となる都心型の賃貸ラボ&オフィス「三井リンクラボ」を整備する予定。

(塚井明彦)